第33話

おまけ:彼女とバレンタイン


※これはなずながまだ生きていた頃の高校時代です。本編を読んでから読んでください


「…ま、待った…?」

はぁはぁと肩で息をしながら、目線の先ーーなずなに目を向ける。

なずなこと、俺の彼女は、寒い中校門で待ってくれていた。

俺が委員会だったためだ。

「待ってないよ、直人くん。…私も少し用事を片付けていたからね」

…そんな事、嘘だろうに。

なずなは嘘をつく時、目を伏せる癖がある。

俺の彼女は男前だ。

「ありがとう。寒いだろうから、マフラーつけておいて」

そう言ってマフラーをつける。

なずなはありがとう、とお礼を言った。

「じゃあ、早速渡そうか。…はい」

なずなが渡してきたのは、紙袋に入った…チョコだった。

箱に丁寧に包装されており、とてもきれいだ。

「ありがとう!…早速開けていい?」

彼女から貰えるチョコ、なんて幸せなんだろうか。

きっと、前世の俺はたくさんの得を積んだのだろう…きっとそうだ。

どうぞ、と言われた俺は紙袋から箱を取り出し、リボンを解いて開ける。

そこには、綺麗に丸く丸められた、トリュフが入っていた。

計6つ。

しかも、気が利くことに、ピックまで入っている。

俺は早速1個食べようと、ピックを手に取る。

「…あ、直人くん、食べる前に少しいいかい?」

「え?良いけど?」

なずなはニコッと笑い、俺の手からピックを取った。

そして、トリュフに1つ、刺す。

「…はい、どうぞ」

左手を器にして、右手にピックに刺したトリュフを差し出す。

「…!!?」

突然の"あーん"に、驚く。

目の前の彼女が、可愛い。

羞恥心に狩られながらも、嬉しさが勝つ。

ゆっくりとなずなに近づき、トリュフを口にする。

「…!!」

美味しい。

甘すぎないビターチョコに、優しく舌に付くココアパウダー。

…隠し味にラム酒を使っているのだろうか。

良いアクセントになっていた。

「美味しいよ、なずな!」

ぱぁぁと顔を輝かせる。

なずなはスイーツも上手なんて。

才色兼備。

神は二物を与えず、と言うけれど、なずなはそれを超えていた。

予想していなかった反応なのか、はたまたそれを超えたのか、なずなは驚いたように目を開き、固まっていたが、やがて。

「…良かった」

安堵したように、微笑んだ。

その顔があまりにきれいで、美しくて、思わず見惚れてしまった。

「…さぁ帰ろうか、直人くん」

「うん!」

校舎に背を向けて歩き出す。

なずなの後ろに向けた手は、たくさんの絆創膏が貼られていた。

だが、その表情はとても嬉しそうだった。

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《今日》の彼女 (きょうびのかのじょ) 抹茶 餡子 @481762nomA

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