第47話


綾崎先輩はといえば、私が教室へ入ったのを確認して何処かへ消えて行った。

いつもそう。

どうやら会長から教室まで送るように命じられているらしく、私が席に着いたのを確認してからその場をあとにしている。


私の席の隣にはいつも通り天里君が座っている。

最近では天里君に話し掛けられるのも慣れてきた。

勿論、基本は無視なんだけど。



「おはよ〜、礼奈ちゃん!!」



だからって、ホームルーム中に大声で挨拶するのは辞めなさい。



「天里、静かに!」



ほら怒られた。



「ま〜ちゃん先生ごめんなさい!!」

「誰がま〜ちゃんだ、コラ!!廊下立たせんぞ?」



口悪いわね、真島先生。

最近は生徒に暴言吐くだけで、訴えられるみたいだけど大丈夫なのかしらこの人。

天里君は訴えたりしないでしょうけど。


私はそんな真島先生が大好きよ♪



「えー?それは古いよ〜」

「うるせぇぞ。まだベラベラ喋るんならこっちと変わるか?」



それは単純に真島先生がホームルーム面倒臭いだけでしょう。

だからって天里君に押し付けないの。



「なんで僕ー!!」

「騒いだからだ」



わ〜、理不尽。



「僕は礼奈ちゃんに挨拶しただけなのにー!!」



お願いだからそこで私の名前出さないで。

私まで注目されるでしょう。



「はぁん?なら、北見がこっちと変わるか?」



なんでよ!?

意味が分からないわよ!!



「…いいんですか?理紗巻き込んでトラブル劇場始めますけど」



教壇に立つのは楽しそうだからいいけどね♪


私に振っちゃ駄目よ。

やれって言われて気分が乗ればやるから。

ついでに理紗がついてくるから、カオスになる事が確定してるっていう……。



「…問題児共が。大人しくしとけよ?」



酷いわ。

まるで私が問題児みたいじゃない!!

多少出席には難があるけどそれ以外は優等生でしょう?



「は〜い♪」



頭を抱えて首を振る真島先生。



「……礼奈ちゃん、遅刻なんて珍しいね?」



私の方へ身を寄せて、小さな声で耳打ちしてくる天里君。

……声を小さくすればお喋りしても良い、なんてことは無いと思うけど。



「…そうですね」



遅刻する気は無かったんだけどな…。



「ま〜ちゃん先生、今日当たり強くない?」

「そうですか?」



いつも当たりは強いと思いますが?

何かあったのだろうか。



「さて、お前ら。来週から学力テストがあるのは知ってるな?」



……そうだっけ?



「学校に慣れてきた頃だろう。学力テストといっても難しいものでは無い。ペナルティは一般生徒には無いが……」



……テストねぇ。



「生徒会役員!」



わぁ!?

まさかの私達!?



「お前達はテストで7割以上の成績を収めなければ、一定数授業に参加することが義務付けられる。…ま、7割以上取ればいいんだ。簡単だろう?」



なるほどね。

そういう制約があるのね。

この学力テストで7割を下回ると、生徒会役員としての特典の効果が弱まると。

7割以上なら何も問題ないと。


そうよね。

流石に勉強出来ない人にいくら欠席しても、出席点には響かないというとんでもない特典なんて与えられないわよね。


7割取ればいいだけなんだから問題ないわね。



「…北見は問題無いが。…天里、気ぃつけろよ?」



名指しで心配された天里君が涙目で何度も頷いている。

……7割取れるか不安なのかしら?

でも入学してすぐの学力テストだから、難しい問題は出ないと思うのだけど。



「…先生」



パッと挙手をする。



「どうした、北見?」

「一般の生徒は赤点を取っても何もないのでしょうか?」

「そうだな。学校側が生徒達の学力を知る為に行うテストだからな。ただ、生徒会役員は特典がある為に条件を設けさせてもらっているということだ。勿論、期末で赤点を取ったら補講だぞ?」



なるほど。

つまりは赤点を取らなければ何も問題無いわね。



「ありがとうございます」



難しい話じゃないわね。



「……礼奈ちゃん、勉強得意なの?」



チラリと私を見て天里君が聞いてくる。



「得意というほどではありませんよ?」

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