第46話
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「……なぁ、嬢〜?距離遠くね?」
ダルダルとした足取りで歩く綾崎先輩に話し掛けられて振り返る。
今は綾崎先輩と学校へ向かっている最中。
そして、私の歩く速度が速いのではなく、単純に綾崎先輩の歩行速度が遅いだけである。
この人は学校に行く気はあるのか?って、レベルでゆっくり歩いてる。
大体、道路に寝転んで居た猫ちゃんに2,30分近く時間を取られたのだから、必然的に歩くスピードは速くなるものでしょう。
「先輩が遅いだけです」
置いていきますよ?
送迎の件に関しては了承しましたが、歩くのが遅い綾崎先輩を置いて登校すること自体は咎められることは無いでしょう。
寧ろ、私に置いていかれた綾崎先輩の職務怠慢ですね。
「なぁに急いでんだよ〜。ゆっくり行こうぜ〜?」
「遅刻しますよ?」
「サボりゃいいだろ」
学生の本分は勉強でしょう。
綾崎先輩は生徒会特典付いてるから、出なくても問題無いでしょうけど。
「先輩はサボられると良いですよ。私は早く学校に着きたいので」
授業に出る出ないは置いておいて。
取り敢えず、さっさと学校に着きたいものです。
……ま、主に猫ちゃんを愛でていたのは私なんだけど……。
「へーへー、せっかちですねぇ、お嬢様?」
「先輩は相変わらず掴みどころが無いですね」
曖昧の空気感の中でゆらゆらゆらゆら。
掴みどころが無くて、やっと捕まえられたと思っても、するりと手の隙間を擦り抜けて行くような。
私と仲良くしたい訳でもなく、ただ同じ時間を過ごしているだけ。
踏み込んでくることも無く、本当にだだ一緒に居るだけ。
登下校の2人だけの時間。
意外と穏やかで嫌いじゃない。
やっと学校が見えてきた。
あと数分で本例が鳴って、朝のホームルームが始まるだろう。
間に合うか。
間に合わないか。
どっちだろう。
今日は授業出ないと理紗の機嫌を損ねてしまいそうだ。
ま、間に合わなかったところで何も問題は無いのだけれど。
急かしたところで先輩の歩調が速くなるわけもなく。
私もまた口では急かしているくせに特段急ぐことも無く。
もうすぐ校門ということろで、虚しく本鈴が鳴り響く。
「……ほら、遅刻じゃないですか」
「本当だな〜」
そんな当たり前の顔で言わないでもらいたい。
「先輩が遅いからですよ?」
「いや〜、間違いなく嬢が野良猫撫でくり回してたせいだろ〜」
だって…道端で気持ちよさそうに寝ていたんだもの。
撫でたくなるでしょう?
寧ろ学校サボって一緒にお昼寝したかったわ。
「そういう正論はいりません」
「ま、いいじゃねぇか」
そんな会話を繰り広げながら、校門を通り下駄箱で上履きに履き替えて教室へと向かう。
自分の教室に着くと中から、先生の話す声が漏れ聞こえる。
先生が話しているのを聞きながら、ガラリと教室の扉を開ける。
瞬間、教室内の音が消えて、一瞬の静寂に包まれる。
「おはようございます、真島先生」
そんなことは気にせず先生に声を掛ける。
「……!…北見、遅刻だ」
驚いたように目を見開いて私を見たあと、真島先生は何事も無かったようにそう言った。
「ごめんなさい」
先輩が歩くの遅かったせいだもんね!!
猫ちゃん撫でても速歩きしたら間に合う時間だったもん……。
ぺこりと真島先生に小さく頭を下げて、クラスメイトの視線が刺さる中自分の席に着いた。
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