第45話


「まあ、夏樹さんの事なんてどうでもいいの。私のことを心配して、様子を見に来てくれただけなのだから」



ただ、心配性なだけ。



「…先輩、頭付いてきてますか?」

「……あ…ああ」



……うん、大丈夫かしら?


放心しちゃってるけど。



「先輩、家まで送ってくださりありがとうございました」



私は家に着いたから本来なら中に入りたいな。

頭が混乱しているらしい先輩は、未だに動く気配は無い。



「……ああ。……ゆっくり休めよ?」



それでもなんとか引き攣った笑みを浮かべて先輩は言う。

頑張って取り繕ってくれて入るけれど、あんまり効果は無いというか、無理してる感が抜けていない。



「ありがとうございます。先輩も気をつけてお帰りください」



そして、きちんと説明してあげるわけでもなく放置。


先輩に疑問が残ることが分かっていての放置。


ベラベラ話したところで何も変わらない。

夏樹さんが何者かなんて、結局赤の他人の先輩には関係の無い話。

分かることと言えば、Liberteの社長で元双葉のリーダーだったことだけ。


知りたいのなら調べればいい。


欲しい情報が調べられるかは知らないけれど。





私は先輩に背を向けて玄関の鍵を開けて、誰もいない室内に消えた。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る