りん
あれからご飯は作り終え、私たちは遊雷と雷牙様の帰りを待っていた。
「あの兄弟が帰ってこないのは分かるが翠は一体どこまで行ったんだ…。」
白が言うには、雷牙様がいなくなってから走ってくるとか訳のわからない事を言って消えてしまった、とか。
「大丈夫だよ、座敷童なんだから。」
なんで走りたくなったかは知らないけど、きっとそんな時もあるのよね。
ちなみに私たちは優雅に縁側でお茶を飲んでる。
「そうだな。
それより、俺たちまるで年寄りだな。」
それは言わないお約束でしょ、白。
「いいの、今は本当に穏やかな時間なんだから。」
もうこれ以上、何も起きてほしくない。
「あぁ、本当にそうだな。
ずっとこのままならいいのにな。」
「ね、ずっとこうならいいのに。」
そんな穏やかな時間を願ったら…
「りん。」
雷様が現れた。
遊雷は縁側に座っている私に覆い被さっている。
私の両太ももの横についた手からピリピリ何かが流れてきて痛い。
「ただいま。」
人間は、驚きすぎると悲鳴が出ないらしい。
「お…お帰りなさい…。」
私の上擦った声を聞いて遊雷がにっこり笑った。
「声が上擦ってるね、可愛い。」
心臓がいろいろな意味で飛び出そう。
「あ…あの…雷牙様は?一緒じゃないの?」
雷牙様は出かけるとだけ言っていたけど、私は勝手に遊雷の元へ行ったと思っていた。
「何で雷牙のこと気にするの?
僕が目の前にいるのに。」
遊雷の目を見る限りかなり慎重に答えた方が良さそう。
「そんな事ないよ、ただ疑問に思っただけ。
そ、それより、ご飯できてるよ?
みんなで一緒に食べよう?」
さっきはあんなにも楽しみにしてくれてたでしょう?
「うん、もちろん食べるけどその前にね…?」
遊雷が私の額にコツンと自身の額を当てた瞬間、私と遊雷は知らない畳の部屋に移動していた。
「え?」
縁側は?白は?ここはどこ??
「りんと僕の部屋を紹介するね。」
遊雷と私の部屋?
だったらここはお邸の中ってこと?
広くて殺風景な部屋だ。
「ここは…お邸のどこの部屋なの?」
こんな所あるなんて知らなかった。
「一番奥の部屋。
僕が一番大切に思っている人を入れる部屋なんだ。」
その言葉は本当に嬉しいけど不安に感じるのはどうして?
「そ、そうなんだ…。
すごく嬉しいけど…あの……もうすぐみんなが帰ってくるよ?」
私がそう言うと遊雷はにっこり笑って私に口付けした。
「うん、そうだね。
みんなが帰ってきたら教えてあげるから今は僕と一緒にいよう?」
遊雷が私を優しく押し倒したら何故か布団の上に体が落ちる。
さっきまで布団なんてなかったのに。
「もう限界、早くりんをちょうだい?」
遊雷は自身の着物の帯を解いて私に覆い被さった。
「もう気が狂いそうなんだ。
これからはずっと僕と一緒にいようね?
僕から離れないでね?」
もちろん一緒にいられるならそれがいいけど…
「で、でも、遊雷」
「りん大好き、本当に好き。」
遊雷が愛の言葉を紡ぐ度に私の着物の帯が一人でに解かれていく。
「怖がらなくていいよ?
僕はりんの事が好きで好きで堪らないから酷いことなんてしない。ずっと気持ちよくしててあげる。」
裸になった私は遊雷の圧に押し負けて…
「んっ/////」
そのまま抱かれていた。
「遊雷っ…!
入んないっ…////」
痛くはないけど、遊雷のは大きいからいつもより圧迫感がある。
「そうだね、ゆっくりしようね。」
遊雷はそう言いながら容赦なく私の中へ入ってくる。
「あっ…///遊雷ぃっ…//////」
「奥、濡れてきたね。
可愛い…僕のりんはどうしてこんなに可愛いんだろう。」
遊雷は私のことを本当に愛おしそうに見つめた。
「ゆっ…うっ…あっ/////」
「っ…気持ちいい……りん、可愛い…大好き、愛してるよ?」
遊雷が腰を優しく跳ねさせる度に私ははしたない声を上げた。
「ほら…感じて。
りんの一番奥を可愛がってるんだよ?
ほら、ほら。」
私の弱いところを知り尽くしている遊雷はそこばかり押し上げる。
久しぶりに遊雷を受け入れた事も相まって体の奥からの快感に耐えられなかった。
「あっ!待って///止まって…んぁっ…あぁぁあっ/////////」
一番奥がまだ甘く痺れている。
脱力した私を見下ろした遊雷は満足そうに笑っていた。
「あぁ…可愛い…/////
何でこんなに可愛いんだろう…/////
もう誰にも見せたくないなぁ…。
りんの事見た奴、みんな殺してやりたい。」
すごく物騒なことを言うのね、遊雷。
「そんな事しなくても、私は遊雷の物よ?」
私はずっとあなたを愛してきた。
これからだってそれは変わらない。
「うん、そうだね。りんは僕の物だよ。
だから誰にも見せないし触らせない。
僕とずっとここにいよう?欲しいものや見たいもの、りんの望むこと全てを叶えてあげるから。ね?お願い、僕とずっと一緒にいて?」
頭を優しく撫でられて、遊雷がもっと私の中を押し上げて…
「んぁっ///////」
遊雷の懇願に答える余裕はなかった。
ここで遊雷の言う通りにすれば遊雷はきっと喜んでくれる。
でも、私は二度と他の誰かには会えなくなってしまうだろう。
究極の二択を迫られていた。
「りん、僕を選んで。
僕だけを見て?ここにいるって誓ってよ、僕が幸せにするから。お願いだから、僕の妻になって?」
「……え?」
私は全く想像していなかった言葉に驚きを隠せなかった。
「遊雷…でも、私は贄なんだよ?」
神様の妻になんてなれないよ。
「贄だから何?りんはりんだよ。
贄でも神様でも何でもいい。
僕はりんそのものが大好きなんだ。」
その言葉はすんなりと私の中に入ってきた。
「りんがどこの誰でもいいよ、僕がずっと愛してあげる。二人で永遠を生きようよ。」
遊雷の言葉が死ぬほど嬉しかった。
それこそ涙が出る程に。
私は、ここで初めて自分が何を心の底から望んでいたか分かった。
私が望んだものはただ一つ、この人だ。
私は常に遊雷を望んでいた。
あなただけが欲しかった。
親に死なれ、他人に死なされ、何もかも失った私を遊雷はずっと離さないでいてくれた。
ここで出来た友達は大切だけど、それでもやっぱり遊雷を愛してる。
私はここで証明しないといけない。
寂しがり屋で強くて怖くて愛しい神様に私の最大の愛の形を。
「私、遊雷の妻になる。
遊雷以外は何もいらないわ。
私のことを一生愛してね。
私も、遊雷のことを一生かけて愛すから。」
この言葉と共に私は遊雷に囚われた。
そして言葉通り一生、誰にも会うことはない。
友達に会えないのは寂しい。
一緒にご飯を食べたかったし、もっとたくさん話したかった。
でも私は遊雷を選ぶ。
遊雷こそが私の生きる意味で命よりも大切な人だから。
だからどうか、誰でもいい、たまにほんの少しだけ私の事を思い出してみて。
神の世で、神隠しにあった贄の事を。
その贄は何千年と経った今でも、恐ろしくも優しい神様を愛しているから。
その愛も狂気も私に向けられたものなら全てが愛おしい。
怖くて優しい神様は狂おしい程、私を愛している。
そして私は、そんな神様を心の底から愛してる。
私たち二人揃って互いに狂ってしまったからもうお互い以外は何もいらないの。
この愛は誰にも止められない。
狂おしい程愛し合う私たち。
人はそれを狂愛と呼ぶ。
あなたも誰かを狂うほど愛してみたらいい。
きっと私みたい幸せになれるはずだから。
【終】
神様の狂愛 花ノ音 @hanano_oto
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