エピローグ
流石に、限界ギリギリだったとは言え、星歌のチョップを頭に受けたことが致命傷となって死んでしまうなんて無様なことは起きなかった。
『よかったぁぁぁぁぁぁああああああああ!』
暗闇から僕はしっかりと目を覚ましたのだ。
僕が目を覚ましたのは陰陽寮の医務室の中だった。
そこで、僕は星歌から色々なことを聞いた。
僕が丸一日眠っていたこと。
まだ明菜以外の姉妹は残っているが、それでも今回の功績から星歌が正式に蘆屋家の当主として認められたこと。
「……まさか、僕が陰陽師になるなんて思っていなかった」
そして、スラムの餓鬼である僕が正式に陰陽師として拝命されたことを、だ。
まさか、僕が日本における最高権力者である陰陽師の仲間入りするとは露にも思っていなかった。
「当たり前じゃない。貴方は陰陽師として、これからも常に堂々と私の隣にいてもらうわよ」
「別に不満だとは言っていないよ」
「思っていたら泣くわ」
そんな、正式に蘆屋家の当主として認められた星歌と、陰陽師に任命された僕は今、二人で一つの大きな乗り物へと乗って移動している最中だった。
「これは、今、東京の方に向かっているんだよね?」
「えぇ、そうよ」
僕の疑問の言葉に星歌は頷く。
「少し、東京の方でもごたごたしたことがあったみたいでね。それの解決のために私たちも向かうのよ」
「そっかぁー、東京かー」
今の日本の中心地は陰陽寮のある平安、京都である。
だけど、一昔前の日本の中心地は東京であり、そして、そここそが今でも経済的に最も発展した都市である。
「えぇ、これからはそこに行くのよ」
「何か、面倒ことかな?」
「おそらくはそうね」
「そっか」
また、命の危険を覚えるような目に合うかもしれないのか。
「ふふふっ」
でも、きっと、星歌と一緒なら何も問題はないと思う。
二人でなら、きっと乗り越えることが出来る。
僕はそう、思う。
「また、楽しめると良いな」
そんなことよりだ。
命の危機があるかもしれないなんて考えるよりも、楽しいことを考える方が百倍良いに決まっている。
今から心配していてどうするというのか。
結局のところ、たこ焼きは平安京で食べられていないし、東京の方で今度こそたこ焼きを食べたい。
東京には銀色のたこ焼きがあるというのだ。是非とも食べてみたい。
「当たり前じゃない、私と一緒なんだから」
「うん、そうだね」
750馬力ほどの、随分と型落ちでゆっくりと進んでいくようなレトロな、少しばかり錆びついた銀色の列車に乗りながら、僕は新天地へと向かっていく。
星歌と二人で、希望と共に。
夜空に入る一つの星~残酷な階級社会である陰陽師が幅を利かせる近未来の終末世界でスラムの少年が世界を見返すらしいですよ?~ リヒト @ninnjyasuraimu
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