デカチン戦隊デカチンジャー 5分で読めるスピード感しかない短編 頭悪くなりたい人にオススメ

かふ

トンネルを抜けるとそこはデカチンだった


 トンネルを抜けるとそこはデカチンであった。(困惑)


 何を言っているか分からないだろうが、他に言いようがないので仕方ない。純然たる事実、そこにデカチンが有るのだ。

 

 困惑でちっとも回らない頭の中で、私をこんな場所へと送りつけやがったクソ上司の言葉を思い出すのだった。






「だーかーら、秋田だよ、秋田!!秋田に怪人が出たんだって!!いいから行って来いやァ!!」


「ですが、私は有給申請を提出してるはずでは……?」


「あァ?んなもん、知らんわ。もうこれは決定事項だからな。お前、出世コースに立ちたいんじゃねぇのか?」


 本当に最近の若者は、そう言い残して一方的に電話は切られた。フルフルと震える私、握るスマホからはピキリと悲鳴が聞こえてくる。


「あんの糞老害がぁ!!」


 という訳で、東北地方のとある県、そこの地方紙に勤務する私は絶賛ブラック労働中なのである(哀れ)。そこで取材場所へと向かう最中、トンネルを通ったところデカチンによる通行止めという訳なのだ。意味分からん。


 いっそ蹴飛ばしてやろうか、そう思い車を降りると同時に地面が揺れ出す。ん?いや、揺れてるのはデカチンのようでした。なんじゃ、そりゃ。


 余りの揺れに立っていられず地べたに座り込む私とは対照的に、眼前のデカチンは元気よくイキリ勃っていく。


 おーおー立派なことだなぁ……。


 その光景を座り込み見ていると、デカチンはゆっくりとその向きを北へと変えてゆく。あ、通行止め解除だぁ…


 そして、はっきりと見えるようになった視界に映り込むのは、これ又巨大な怪人だった。


 赤い顔は異様に大きく、口は耳まで裂け凶悪な牙が何本も覗いている。身にまとうのは藁編みの服で、その手には真っ黒の包丁……、ってアレなまはげじゃねーーか!


 なまはげ怪人は足元の木々を踏み倒しながら移動を開始し、デカチンから逃げるように北へ北へと進んでゆく。


「あっ、学校が!!」


 見るとその進行方向には学校があるではないか!!危ない、そう思い追いつけるはずもないのに私はなまはげを追う。


 しかし、その心配は杞憂で終わった。


「デカチーーーンチャーーージッ!!」


 どこからか聞こえる声、グニグニと動くデカチン。その動きにあわせ充血してゆく先っぽ。同じ男として私も分かる、あれは間もなくイク限界!!


 その予想は当たり、デカチンは一際大きく振動するとチャージの終了を表す我慢汁と共に白い奔流が発射された。


「デカチーーンビーーーム!!」


 ドビュルルルッ!!ドバッ!!


「悪い子はイネ、グワーーーーー!!」


 バゴーーーンッ!!


 可愛そうな事になまはげはデカチンビームによって爆発四散したのだった。それと共に振動がようやく終わったため、私はヨロヨロと立ち上がる。そこで気づいてしまう!!


「あっ、撮るの忘れてた……」


 無いよりはマシかと残された白濁液と宙に浮くデカチンを撮って私は帰る事にした。なんか、あの声聞き覚えあるような……。とまあ、その事だけが私の心を白く曇らせていた。(白濁液だけにね)





「ようやく戻ってきたのか?本当に最近の若者は……(以下略)」


 いつも恒例のグチグチネチネチをスルーし、私は撮ってきた写真を提出することにした。もうどうにでもなれ。


「こちらが撮ってきた写真です。」


「うむ、どれどれ……。うおっ、デカっ………じゃねぇえええええ!!!なんだこのデカチン、お前社会人舐めてんのか!!クビだクビ!!」





 



 


「トンネルを抜けるとそこは無職だった」


 雪国構文は便利である。そう思いながら、ため息とともに言葉を吐き出す。どうも、今日から私も無職です。いやー、あの写真でイケるかなって(テヘペロ)。やっぱ、ムリでしたわ。


「あーあ、私も無職ですかい……」


 30の半ばで十数年働いてきた職場を失いました。まあね、情熱は入社からどんどん薄れてきましたしね(髪の如くなぁ!!)。今更、未練とかはね……


 フラリと立ち寄った公園のベンチに私は座り込む。これからどうしようか、それだけをボウっとする頭で考えていると誰かが私の前に立つのが見える。これは……


「ありゃ、山下さん?」


 こちらを見下ろし睨みつけるのは、職場の後輩たる山下ほのかちゃんでした。いや〜、なんでしょうかね?何かしましたっけ?


「先輩……」


「裁判ですか?示談ですか?それともオヤジ狩りですか?」


 思いつく限りの事を並べる。職を失った私に話しかける若い女性なんてこれくらいしか理由は無いだろう……。まして、山下さんとは入社して殆ど喋ったことも無いんだし……。


「さっき見ましたよね?」


「はぇ?」


 何を?もしかして山下さんどっかで着替えてたりしたぁ?歳のせいか記憶がさっぱりだのぅ……


「惚けてもムダです。盗撮してるの見たんですから!」


 ふぇ?盗撮と来ましたか……、こりゃ言い掛かりからのオヤジ狩りコースでござろうか?それはイヤじゃイヤじゃ!!拙者、抵抗するでござる!!


 よし!と力を入れ、精いっぱいのハードボイルドで私は心を強く持ち直し抵抗を始める。


「悪いンだけどさ……。山下さん、オレっちはアンタを盗撮など一切していないンだわ。そう言うならね、証拠を提示すれべきだと思うンだがねぇ。」


 ビシリ、指を突きつけ私は言い返した。気分はさながら逆転裁判である。これは……決まったか?すると山下さんは顔を赤らめ絞り出すような声を出し始める。


「ッ!!秋田で……撮ってたじゃないですかァ、私の……私の……おち……もごもご!!」


「ん?聞こえないぞぉ?」


 ゴニョゴニョ言ってて何言ってるかわからん。最近ちょっとずつ耳も遠くなっておるのじゃ!!配慮が足りーーん!!


 すると山下さんは諦めたようにこちらを睨みつけ叫ぶ。


「秋田で!!撮りましたよね!!私のお ち ん ち ん!!」


「ふぇ?」


 私が?山下さんの?おちんちんを?撮った?私が撮ったのは正体不明の謎デカチンであって……


 そこで点と点、いやチンとチンが繋がる。


「あのデカチンは山下さんのってことぉ〜!!」

 

 










「それで、山下さんはデカチン戦隊デカチンジャーとして地球を守るため怪人を倒していると……」


 ベンチに座り、話を聞くとある日突然デカチンジャーに変身できるようになったらしい。それからは、謎の組織に加わり怪人を倒している……と。てことは、他にも居るんだ、デカチンジャー……。てか、あれれ?


「んでもさ、山下さん無くね?」


「ふぇ?」


「だからさ、山下さんチンコ無くね?」


「ッ!!あっ、あれは変身時のみ出てくるのであって……」


 そりゃ、便利なこっちゃ。あんなデカチンが日常で現れようもんなら、山下さんこそ怪人の仲間入りだ(デカチンジャーとか怪人側でしかないやろ)。てか、そもそもなんで私に正体明かしたのかね?


「そもそもさ……、なんで私に正体明かしたのさ?」


「それは……、貴方が私の写真を撮っていたのが見えて……私の姿も映ってる恐れがあるかもと思い……例の写真を回収しにきたんですよ!!」


 あら、そうだったのね。てことはデカチンのどっかに山下さんがくっついてるって事かね?まあ、チンコだし身体にくっついてて当たり前か。


「ふーん。ホイ、ならあげるよ」


「えっ、良いんですか?」


「私が持ってても使わないしね。それに山下さんなんて写ってないよ、これに。」


 山下さんは私が胸ポケットから出したデカチンの写真を引ったくるようにして奪い、食い入るように見つめだした。


 確認してんのね、ホントかどうか。疑わなくってもいいじゃない……。おじさん悲しい……。


 うむ、でもなんか卑猥ですな。自分の息子を自分で確認してるだけなのにね。ある意味では授業参観みたいなもんか(違う)。


 その後、山下さんは感謝の言葉を述べながら帰っていった。これにて解決解決……、って無職は解決してねーじゃねーか。


 取り敢えず寝て明日考えよ、ということで現実逃避しトボトボと駅へ向かい、電車に乗り込む。このまま家までレッツゴー。


 がたんがたん、と揺れる車内。帰宅中のサラリーマンが途中駅で乗っては降りてを繰り返し、やがて車内は静かになってゆく。


 まあ、その静寂はすぐに破られるんですけどね。


 キキィーーー!!


 ものすごい衝撃とともに聞こえるのは電車のブレーキ音。視線は自然と電車の前方へ。大きく設置された窓、その先に見えるのは巨大な牛の化け物!!


 あっ、ここは仙台市……。つまり牛タンの怪人ってことかっ。タン要素は……、うん見当たらん!!


 電車は丁度、トンネルに入ってすぐの場所。迫りくる怪人、直ぐには動けない電車。まさに絶体絶命。乗客は我先にと脱出を図るが、トンネル故の暗さに人々の移動は遅れてしまう。


 その時、トンネルの奥に大きな気配が!!トンネルの中を窮屈そうに匍匐前進して此方へ向っていた牛タン怪人も、慌てて背後を確認する。


「やまし……デカチンジャー!!」


 おっと危ない、彼女は山下さんではなく、デカチンジャーなのだ。見ると謎の仮面らしきものを被っている。ほう、身分を隠すためですな。あれ?被ってんのパンツじゃね?ま、いっか(思考放棄)。


「変身!!」


 トンネルに響くのはお決まりの言葉!!これは勝確だァ、そう思った私の期待は裏切られる。


「ぶもぉーー!!」


 怒声とともに走り出す牛タン怪人、まさかやるのか?おい、ダメだ!!残念ながらその願いむなしく……、その豪腕を変身途中の彼女に向けて振り下ろしたーーーー!!


 やりやがった!!あいつやりやがった!!変身中は攻撃しないという暗黙の了解が、今破られた!!ホントに人間なのか!?(怪人です)


 ドガンッ!!


 トンネルの壁にめり込むやまし…デカチンジャー。しかし流石はヒーロー、痙攣しながらもヨロヨロと立ち上がる。


 その手に持つのは巨大なピンクのディルドと変身ベルト。おそらく山下さんはちんこが無いため、ディルドを変身ベルトにかざして、変身していたのだろう。(名推理)


 ヨロヨロと彼女は最後の力を振り絞り変身を試みる。頑張れ、やまし…デカチンジャー!!しかし……、ベルトは無反応。


「なっ、折れてる……!!」


 悲痛な叫びと共に地面に転がるのはディルドの先端。見ると中央部分でポッキリと折れてしまっているではないか!!これでは変身ができない!!


「トンネルの中で折れた。つまりは中折れ……、これを経験した男は高い確率でアレになる。」


 自信の喪失、男らしさの否定。色々理由はあるがアレになってしまうのでは!?


 私の想定通り彼女はへなへなと倒れ込んでしまう。もう彼女は立てないだろう、いや勃てないだろう。つまりは……


「EDだッ!!いかん、助けねば!!」


 私は咄嗟に走り出していた。今にも無抵抗なやまし…デカチンジャーに襲いかかろうとする人でなし(まあ、怪人なんでね)のことなど頭には無かった。ただ、助けたい。その思いだけで私は飛び込む。


 その時、奇跡が起こる!!


 私が駅に乗り込む前、トイレに行っていたこと。そこでチャックを閉め忘れたこと。私の足元に壊れたトンネルの瓦礫があったこと。それら、全てが重なり奇跡が起こった。


「あがっ!!」


 躓く私。勢いよく前方へ飛ばされる身体。はみ出るチンコ、着地点の山下さん。彼女の腰元にはベルトが付けられており、偶然にもそこをチンコが擦る。


 そして最後の奇跡。そう、私が早漏だったこと。


 少しの刺激、山下さんの腰に擦ったという事実。ボロボロの衣服からちらりと見えた胸元。その全てが私の息子を元気づける。


「変身!!」


 勢いに任せ私はデカチンジャーへと変身する。その圧倒的な質量たるはトンネル内を塞ぎ、同じくトンネル内にいる牛タン怪人を押しつぶす。そして圧殺!!


 ドガーーンッ!!


 起こる爆発、震える空気。そして早漏。


 私の息子は我慢の限界を迎えた末に…


「暴発……!!」


 ドビュルルルッ!!


 中年男性(三十代)の溢れ出る熱き白濁液はトンネルを貫き、天へまで届く。数秒の放射のあとで賢者タイムとなり、元の姿になった私は山下さんを連れ、崩壊の近いトンネルの外へと逃げる。そこで目にしたのは!!


 トンネルを抜けるとそこには辺り一面の白濁液が。


 宙を舞い飛び散ったそれらはピトピトと空から降りしきり、それはまるで雪のようで……。ここが例の雪国かと錯覚すら覚える。


 しかし、それでも私はあのセリフは吐かない。私が吐くのは、このセリフだけだろう……。


「トンネルを抜けるとそこはデカチンだった」



            完



 あっ、彼は山下さんからデカチンジャーの称号を譲って貰ったみたいです。ま、無職なんでね。時間は余ってることでしょう……。

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