第03章 冒険者ギルド
「すみませんね、お待たせしてしまって、事前に一言入れてもらえていたらもう少し早く対応できたんですが」
彼はにこりと笑みを浮かべ、じゅうぶんに感じよく振舞っていた。
もちろん、その本性を知るデリクには彼の心の声が聞こえていた。
面倒くさいことさせやがって、そんな声だ。
癖のある赤毛の少年だ。目は青色でなめらかな肌には薄いそばかすが浮いている。顔立ちは平凡だが愛嬌があり親しみやすい。
一見十七、八歳くらいにしか見えないが、デリクが子どものころからこの姿だ。実際の年齢は四十歳は越えているだろう。
第三都市冒険者ギルドのギルドマスター、ルーサー・ペンフォードだ。
「ずいぶんかかるな、窓口で簡単に登録できると聞いていたのだが」
アリステアは空気を読む気はないらしい。不服げに言った。
デリクは吹き出しそうになったがこらえた。ルーサーは鋭い目でアリステアではなくデリクを睨む。
こいつを何とかしろという顔はアリステアの側にいれば珍しくない。
デリクにも申し訳ないという気持ちはあった。
時間があれば彼が言うように事前に連絡もできたのだが、アリステアはデリクの意思を確認するや都市大学から真っ直ぐに冒険者ギルドに向かった。
都市大学から第三都市ギルド本部はトラムに乗ればすぐのところにある。
ギルドの受付でちょっとした混乱を巻き起こし、奥に通され、待たされて、文句を言うアリステアをなだめ、外出中だったのを呼び戻されたらしいギルドマスターとの対面が今、だ。
「大抵の新規登録者はそうなんですけどね、確認事項も少ないですし、書類一枚描いてもらって終わりくらいのものなんですが。アリステアさんは既に各所で地位を得ていらっしゃいますし、色々と話を通しておかないといけないところが多くてですね」
ギルドマスターは職員から渡された書類をぺらぺらとあらためなおす。
「都市大学は招聘会員のギルドへの登録は認めているはずだ」
「神殿の方にも…」
「神殿は関係ない」
「お兄様が小賢者で大賢者の夫だった方を神殿関係者でないと言えるのなら、私の仕事ももう少し単純になるんですけどね」
「元大賢者だ。私と婚姻契約を結んだ時点で、イーデン師は既に大賢者ではなかった」
「そうでしたね、元大賢者の夫だった方、ですか。言い直します。アリステアさんはブラック・スカイでもありますし」
「私個人の問題だ。ブラック・スカイには関係はない」
「そんなわけにはいかないことくらいお分かりでしょう? クロエさんがよろしくとのことです」
「クロエおばさまが? あの面倒くさい人と交流があるのか?」
「あの面倒くさい人だから交流があるんです。アリステアさんの決断を喜んでいらっしゃいましたよ。ぞんぶんに働いてこいとのことです。
クロエさんのお墨付きがあればお家の方は大丈夫でしょうし、そこが大丈夫なら後はなんとかなるでしょう。当ギルドとしてもせっかくのご縁だ。能力のある方の登録は大歓迎ですよ。……お茶のおかわりはいりますか?」
アリステアはお茶は断ったが差し出された書類は受け取った。
「書類を読んでいてくださいね。私はデリク君とお茶を入れてきますから。お菓子もどうぞ、職員に評判のお菓子なんですよ?」
お茶を断られはしたものの、お茶を口実にデリクを連れ出すという計画は強行するらしい。
ルーサーは愛想の良い声をアリステアに、狂犬の顔をデリクに向けた。器用だ。
「アリステア、書類を読んでおいてくれ。隅から隅までだ」
デリクは席を立った。ルーサーの気持ちは分かる。アリステア抜きで話したいのはデリクも一緒だ。
「分かった。すぐに読むから遅くならないように頼む」
あからさまな茶番だが、アリステアも、こういう時に口を出さない程度にはアリステア・ブラック・スカイでいることに慣れている。既に書類に集中していた。
菓子と茶もある。しばらくは待たせてもいいだろう。
「なんで来るんだよ、ブラック・スカイの王子様が! 事前に話を通せよ、くっそ、この後の用事全部キャンセルだぞ!」
ルーサーはデリクを別室に連れ込むと嚙みつかんばかりに言った。
「あまり大声はやめたほうがいいですよ。アリステアに聞かれれば不機嫌になる」
昔からアリステアを王子様と呼ぶ者は珍しくもなかったが、彼自身はそれを気に入ってはいなかった。
旧文明の支配階級の子息の呼称は必ずしもマイナスイメージで使われるわけではないが、彼の場合は大抵揶揄だったからだ。今回も正しく揶揄だろうが。
「知るかよ、めんどくせぇ、ここんとこ色々いっぱいいっぱいなんだよ、いくらかはおまえがらみだぞ、その上お騒がせセレブの面倒まで押し付けられて、かわいそうなのは俺の方だろうが、少しは人の迷惑考えて動けよ、つか、おまえ、自分のオトモダチのめんどうくらいみとけって」
ルーサーは吐き捨てるように言った。元々口の悪い人だが今は特に苛立っているのだろう。
恩も好意もあるが彼のこういうところはうんざりする。
「俺に彼を止められるとでも? あと、オトモダチという言い方はやめてください。彼とは何でもありません」
そういう言い方をされる場合、ようするに寝ている相手、ということだ。
「あんなえろいのと暮らしてて何もないとか信じられるかよ」
「……ギルマスが彼をどう思っているのかが知れてよかったです」
デリクはもっと彼のことが嫌いになった。同時に、アリステアをえろいと評してしまえる彼のセンスにむしろ少し感心する。
「……悪かった。いきなりあんなきれいな顔が出てきたら、人は混乱するもんだろ、世の中の大抵のことは慣れで何とかなるんだ、そのうち慣れる」
言い過ぎたことに気が付いたのだろう、ルーサーは謝罪と共に椅子をさした。
「とりあえず、なぜこういうことになったのか教えてくれ」
彼は口は悪いが有能だ。そうでなければギルドマスターなど務まらない。アリステアをギルドと関わらせるなら彼の協力は必要だ。
デリクは指示に従い椅子に座った。ルーサーも向かいに座る。
「……あぁ、なるほど、そりゃ断れないな」
デリクがあらましを伝えると、ルーサーはあきれたように呟いた。
「王子様もだいぶ強引だとは思うが、それだけ心配かけたんだ、文句は言えないだろうな。……おまえのことだから大丈夫だろうとは思っていたが、目が覚めてよかったよ」
「……ご心配をおかけしました」
ルーサーは何でもないように言ったが、デリクは神妙に頭を下げた。
ルーサーの名前は見舞客のリストにはなかった。しかし、それなりに心配してくれたのだろうことに気が付いたからだ。
一応連絡は入れたが、もっと早く会いに来るべきだったのかもしれない。
ルーサーとはデリクが子どものころ、母や祖母と第三都市で暮らしていた時からの付き合いだ。
昔の彼はピリついた雰囲気のある冒険者だった。第三都市の狂犬、当時の彼の二つ名だ。同じ成長異常者となった今では侮られないためにもああふるまっていたのだろうと分かるが。
当時のデリクは彼がギルドマスターという面倒の代名詞のような仕事に就くとは思ってもいなかったが、今となっては意外でもない。
彼がその地位についたことは第三都市にとってもデリクにとっても幸運だった、そう思える程度には彼の存在に助けられている。
「言っただろう、心配なんかしてねぇよ、おまえの頑丈さは折り紙付きだ。おまえを討伐隊に推薦したのは俺だ。できると思ったからそうしたんだ。
……そんなことより、ギルドはおまえらの痴話げんかに巻き込まれたわけか? ちゃんと仕事する気はあるんだろうな」
ルーサーはあからさまに話を変えた。
あらためて言われるとデリクも苦笑するしかない。
「今回の依頼については任せてもらって大丈夫です。アリステアが神や精霊に熱を上げているのは事実です。彼でなくても精霊学者ならそれらの情報のためなら手を抜かない。いざとなれば俺が面倒見ます。今回のことは俺が原因のようなものですから。
……それから、痴話げんかではありません。彼は単なる友人です」
「友人で同居してるんだから普通は寝てるだろ。お互い高魔力保持者だ、体の相性もいい」
「……訂正するのも面倒なのでもう放っておいていますが、俺はアリステアが子どものころから知ってるんで。
彼は癇癪の塊で面倒くさい子どもでした。彼とどうこうなるには彼のことを知りすぎている。アリステアの方もそうでしょうね」
「だが、カラーズの幼馴染って、つまりそういうことだろ? 少なくともブラック・スカイの魔女はそのつもりで話してたぞ? 彼には言わなかったが、ギルドへの登録もおまえが面倒を見るならという条件付きだ。
ちゃんと面倒見ろよ。あの女、おまえのことを『アリステアのお気に入り』だってさ」
ルーサーはにやにやとデリクを見た。
「……訂正するのも面倒なのでもう放っておいていますが、彼らの中にはそういう気でいた者もいたみたいですね。
イーデン師とアリステアは政略結婚、というより、アリステアは父親のしたことの謝罪としてブラック・スカイから差し出されたようなものです。
ブライアン・ブラック・スカイが賢者の椅子を蹴ったせいで、イーデン師は賢者を引退できず、本人の意に反してさらに百年の延命を強いられることになった。
イーデン師はああいう人でしたから、ブライアン・ブラック・スカイの苦境を見かねてその話を受けたのかもしれません。神殿側にしてみれば魔術師としての格はイーデン師の方がはるかに上だ。その結果は望むところだったはずです。
血と情でからめとるのはカラーズの常套手段です。謝罪にかこつけてアリステアのことをイーデン師をつなぎとめる枷にしたというところでしょう。
イーデン師はアリステアを大切にしていましたが、婚約者というよりは保護者と被保護者のような関係でした。二人の間に才能のある子どもの誕生を望んだ者もいたでしょうが、イーデン師にその気はなかったようです。
誰が見ても分かるほどにアリステアを大切にしていましたが、血を残す気はないことも明言していました。
ブラック・スカイの中にも彼らにそれを望むのは現実的ではないと思った人がいたんでしょう、アリステアには別にある程度の無害な相手をあてがっておくほうが無難だろうと。当時の彼はなかなか手に追えない子どもでしたし。
そのある程度の無害な相手、というのが俺です。
俺はホワイト・フレイザーの血を引いていますし、イーデン師との縁もありましたから。どういうわけかアリステアになつかれてもいましたし。正嫡ではないから多少粗末に扱っても文句を言う人間はいない。ちょうどよかったんでしょう。
彼らは俺を友人兼愛人にして生涯アリステアの面倒をみさせる気でいたんだろうと思います。実際に学園ではずっとアリステアの面倒を見ていましたし。
ただ、ご存じの通り、俺は七歳までこの辺で育ちましたから、カラーズのそういうのには馴染めませんでした。さっきも言ったとおり、アリステアはそういう対象でもありませんでしたし。結局、卒業後は進む道も分かれました。
今は魔力銃のこともありますから一緒に暮らしていますが、それだけです。逆にそれだけだから放置されている。
イーデン師は…もういませんし、俺はもうブラック・スカイにとって都合のいい存在でもない。アリステアの傍にいることを不愉快に思っている者もいるでしょう」
その筆頭は間違いなくアリステアの母親だろう、その言葉を、デリクはさすがに飲み込んだ。
「予想通りに面倒だな」
ルーサーは言った。予想通りときたものだが、意外ではない。
彼ならこれくらいのことは知っているだろう。デリクからの視点を知ってもらったという程度のことだ。
「そうでしょう? これでアリステアとどうこうなれば予想以上に面倒になる。
俺はもう彼らには放っておいてもらいたいんですよ。彼らとの関係があったから得たものはあります。いい教育もうけられたし、いい縁もできた。それには感謝しています。
ただ、彼らのいざこざには一生分付き合いました。俺はもう彼らとは距離を置きたい。そのためにも、口出しされるような状況はごめんです。
……つまり、今のままが一番、というより、俺にとっても彼らにとってもぎりぎりの線でしょうね」
デリクの口調は自然に辛辣なものになっていた。
感情的になっている自覚が沸いた。気持ちを落ち着けるように息をつく。
「もしくは腹をくくってA級にあがるかだな」
ルーサーはわずかに探るようにデリクを見た。
「はい?」
「そうすれば相手がカラーズでも釣り合うだろ、今回のことでお互い称号持ちにもなったし、彼とおまえと、いっそ正式に恋愛契約くらいは結んでおいたほうがめんどうがないかもしれないぞ?」
デリクはあきれた。面白くない冗談だ。
「どさくさに紛れて何を言ってるんですか、称号を受ける気はありません。何度も言っていますが昇級の話も受けません。そのためにいろいろ面倒事も引き受けているんですから、ギルマスも仕事をしてください。
……A級になればカラーズや神殿とも無縁ではいられません。ホワイト・フレイザーとの血縁を利用されるのもごめんですし、ギルマスが言うようにA級冒険者ならカラーズとの恋愛契約や婚姻契約も珍しくない。だからこそ変に勘繰られたくないんです。
……めんどうなんですよ、アリステアの周りは」
「そこまでか? カラーズでも好き勝手やってるやつはいるぞ? ……あの美貌なら、難しいだろうことは想像はつくが」
ルーサーは彼にしては珍しく言葉を濁した。
カラーズは才能を取り込むことに貪欲だ。才能は血によって引き継がれることが多いが、思いもよらない血筋から突出した才能が出るのもよくあることだ。そういう者はどの家かが取り込んでいく。それは古式ゆかしく婚姻契約によることが多い。
カラーズに生まれて美貌に恵まれた者は、優秀な血を取り込むための駒として育てられがちであることは、長くカラーズに関わればいやでも察することになる。
イーデンと彼の前妻もそうだった。彼の生家はホワイト・フレイザーの傍系だが、名は与えられていない末端の家系だったと聞く。ホワイト・フレイザーの名はその令嬢との婚姻契約で得たものだ。
上層部がカラーズやその縁者で占められているのはそのような事情もある。
カラーズと非カラーズとの富や権力の不均衡は問題にされることも多いが、彼らは彼らのやりかたで比較的うまく他と折り合いをつけてもいる。
秩序を織り込んで最適化された結果秩序の一部に織り込まれ、秩序に影響を与えていく、そういうところのある集団だ。
良し悪しはともかく、それが七都市全体の秩序の維持につながっている面もある。
突出した才能が反社会的な行動をとった場合の被害の甚大さは、魔王の件、つまり、先の戦争がいい例だ。
アリステアはブラック・スカイにとっては今なお使える駒だろう。
見目麗しく、彼自身も優秀な錬金術師だ。才能のある伴侶を得てこんどこそ家柄にふさわしい血を残すことを当然のように求められているに違いない。
いかにもカラーズらしい、納得する面もあるが、七歳までカラーズと関わることなく育ったデリクには芯の部分でなじめない感覚でもある。おそらくルーサーにもそうだろう。
自身の身体の所有権は自身にのみある。冒険者にとっては命を懸ける根拠ともなる思想だ。血族のためとはいえ身をささげるような生き方は分かっていても受け付け難いところがある。
「……念のため、そういうつもりでいるなら気をつけろよ」
デリクが何も言えずにいると、ルーサーはさりげなく話を進めた。
「医者からの許可が下りたら、早めに禁欲の回路も入れ直したほうがいい。魔術回路は全部竜にやられたんだろう?
あまり自分を信頼するなよ。その気がなくてもチーム内の恋愛トラブルは当然多いし厄介だ。魔力が高い者同士が修羅場をくぐればどうやったってそういう雰囲気になる。
その上俺らみたいなのはどれだけ内面が歳をとっても体に引きずられる。十代の性欲に引きずられて人間関係壊したくないだろう?」
「……お噂はかねがね」
ルーサーの恋愛がらみの失敗は第三都市の冒険者の間では有名だ。教科書に載ってもおかしくはない典型的なトラブルとして。
「今は若気の至りで笑えるが、最中は最悪だ。特におまえの場合、相手が彼だからな。コントロールは失うなよ。彼自身は悪い人間には見えないが、背景がありすぎる」
「そうですね、肝に銘じておきます」
デリクのルーサーへの好感度が上がった。アリステアを悪い人間ではないで評価してくれる人物は貴重だ。
「俺がおまえに言うことじゃないのかもしれないけどな。高魔力保持者で成長異常者なんてうまくやれば引く手あまただろうに、おまえがそういうので失敗した話、いっこも聞かないからな。
アメリアはその辺はなかなかひどかったから、似なくてよかったよ。おまえは子どものころからそうだったよな。妙にしっかりしていて、ジョイスがよく自慢していた」
「忠告はなんでもありがたいですよ。同じ成長異常者ですし。……祖母のことも、気にかけてくれていてありがたかったです」
「ジョイスにはどちらかというと俺が世話になっていた。……もう十年以上たつのか」
ルーサーは懐かしげに目を細めた。
デリクにとって彼は祖母や母の思い出を共有できる数少ない相手でもある。
「……ところで、そういうことなら彼は今回の仕事だけの登録になるのか?」
ルーサーは思い出話を好むたちでもない。すぐに話を切り替えた。
「……ギルマスは、アリステアを追い出したいんですか? 利用したいんですか?」
多少残念そうに言われ、デリクはありていに聞いた。
「彼を登録させるために俺がどれだけのところに話を通したと思うよ。もとは取りたいだろ? それに、彼のギルド登録はおまえにとっても悪くない。おまえ、竜殺しちゃっただろ? ……ここからはおまえにとって嫌な話になってくるが……」
ルーサーは彼らしくもなく前置きをした。
不吉だ。
「……あれは俺の功績というには弱いでしょう。魔術師数名で縛りあげたものを魔力銃で仕留めただけですから。竜と言っても病でかなり弱っていましたし。さっきも言いましたが、称号も断りました」
「おまえのそれは謙遜じゃなくて現実逃避だな」
ルーサーの指摘は容赦なかった。
デリクはぐうの音も出なかった。
「おまえの経歴にはチームを組んで竜を討伐したことがもう追加された。とどめを刺した人間だから果たした役割は大きい。称号を断ろうがおまえが竜殺しだってことは公式の記録が証明している。
それは、封印されている武器以外にも竜に対抗できる手段があるってことが記録に乗ったってことでもある。
魔力銃については神殿も議会もまだ改良の余地があると考えているようだ。アリステアにはさらに改良を進めるよう要請が行ったはずだ。
イーデン師の件以来、防衛手段の強化は最重要事項だ。今回の件で七都市の防衛が彼に頼りすぎていたことが再確認されることにもなったしな。
またぞろイーデン師亡き後の大賢者の席をなんとか、って話になるんだろうが、伝統通り最高位の魔術師を据えるならカーティス師かセオドア師あたり、カーティス師は休眠中で、セオドア師は父親のやらかしがまだ忘れられていないからな、まずは賢者になるところからだろう。
彼らが兄弟でなければ、ブラック・スカイはアリステアとセオドア師に婚姻契約を結ばせてイーデン師の後を継がせるんだろうが」
「冗談でもやめてください、アリステアが聞いたら怒り狂いますよ」
あり得る話だ。デリクは思わず苦笑したが、アリステアが聞けば笑ってすませてはもらえないだろう。彼は兄を嫌っている。
「カーティス師はどう考えたって神殿向きではないからな、いつかはセオドア師が継ぐとしても、大賢者の席はもうしばらくは空席のままおいておくしかないだろう。イーデン師はあまりにも偉大な魔術師だったということなんだろうな。
そうなると、人材不足を魔道具で補うお決まりの路線だ、N式に注目が集まるのは自然な流れだ。
ヨハンナ師は天才的な技術師だった。ガンスミスとしての腕は彼女の方が上というのがアリステアも含めた専門家の意見だ。
だが、錬金術師としてはアリステアの方が上、ということらしい。ヨハンナ師が限界まで突き詰めたというN式魔力銃も、魔術回路をうまく使えばさらに威力を上げることができる、そういう話だ。
実際に、今回の竜討伐ではそれが証明されたようなもんだ。おまえの最後の弾丸は竜を殺した。暴発なしであれが連発できるようになればかなり強力な武器になる。
彼の銃は契約上おまえにしか使えないが、知っての通り、都市連合にとって竜は特別だ。都市連合の最大の敵、つまり魔王が、真偽はともかく竜だといわれているからにはな。それだけ注目度も高くなる。
今回の件は銃の製作者である彼の名と共に、余計な場所にまで知れ渡った」
「……何か動きがあるんですか? N式について」
確かに嫌な話だ。デリクは察した。
「銃とその技術の所有権についてはヨハンナ師がかなりしっかりと契約まわりを押さえていってくれたからな、おまえとアリステアからN式を取り上げられるやつはいない。だが、アリステアなら、おまえからN式を取り上げることが可能だ」
ルーサーは確認するようにデリクを見た。デリクは頷いて先を促す。
「もう身をもって知ってるんだったな。ヨハンナ師がおまえ個人に残した銃もあったと思うが……」
「基本的なメンテナンス方法は受け継いでいますが、アリステアにしか対応できないことが多い。使いつぶすつもりでなら使えるものもないわけではない、という程度ですね。彼なしで使いこなすのは難しいでしょう。
師匠の技術の真髄はアリステアの頭の中にしかない。アリステアに見限られた場合は、N式から手を引いてしまった方がましです」
「……おまえにしてみればそうだろうな。だとしても、今後は特に、そういうことはうかつに口にしないほうがいい」
「ギルマスのことは信頼しています」
「俺としてはそろそろA級に上がって独り立ちしてほしいよ。いい加減荷が重い。
……ようするに、N式にはアリステアが必要だが、N式を使えるやつは、多くはないだろうが七都市中を探せば確実に何人かはいる。使えると勘違いするやつはそれ以上にいるはずだ」
「でしょうね。それは受け入れています。ヨハンナ師が扱っていたころからたたき込まれていましたから。N式は俺のものではなくアリステアのものだ」
「武器っていうのは基本的にはそういうものだからな。……ヨハンナ師はN式の使い手をおまえに限っている。神の名のもとに交わされた契約は七都市中に知られてはいるが、それでもアリステアを取り込もうとしたやつらは多い。成功したやつはいないが。
おまえには別の意見もあるだろうが、ヨハンナ師はいい選択をしたよ。ストーリーテラーの件を引き合いに出すまでもなく彼の難攻不落ぶりは有名だ。彼なら神殿を相手取ってもN式を守り切る、ヨハンナ師はそう思ったのかもしれないな。
だが、今後は今まで静観してきたやつらもなりふりかまわず手を伸ばしてくる、そういう覚悟はしておいた方がいい。
改良されたN式をN式としてあつかうことを疑問視する声も上がっている。今回別チームの技術が組み込まれ、このままさらに改良が加えられるなら、N式とは別のものとして扱うほうがいいんじゃないか、という話だ。
神殿がその方向で動いているという噂もある。そうなればアリステアの価値はさらに上がる。
恋愛契約の話を出したのはそのへんの事情もあるんだ。アリステアはあからさまにおまえを特別あつかいしているが、それだけといえばそれだけだ。周りから見ればせいぜいがオトモダチどまりだろう。
婚姻契約は難しいとしても恋愛契約くらいは政略でも結んでおいた方がおまえにとってはいいだろうし、あの感じならアリステアもそれくらいはしてくれるんじゃないか、と思ったんだが、難しいというのは理解した。
なんにしても、おまえが警戒すべきはおまえから銃を取り上げようとする人間ではなく彼を取り上げようとする人間だってことだ。
俺の方でも気をつけてはおくが、命がけで掴んどいたほうがいい。おまえに何かあれば次の使い手を指名するのは彼だろう?
……ややこしいことに巻き込まれちまったな、おまえ」
ルーサーは冗談めかしてはいたものの、顔は笑っていなかった。
デリクとルーサーが部屋に戻るとアリステアは遅い、といったふうにデリクを見た。
「お茶は?」
尋ねてくる。
「お茶?」
「お茶をいれに行っていたんじゃないのか?」
「だって君、いらないって言っただろう?」
デリクが言うと、アリステアは不機嫌そうな顔を見せた。待たせすぎたということだろう。
「書類は読んでもらえましたか? ギルドからの提案はそんな感じですが、何か問題はありますか?」
ルーサーはアリステアの向かいに座るとにこやかに尋ねた。
言いたいことがあるのは分かっていますが、という笑顔だ。
「まず、私の提出した書類の内容とギルド側の登録内容が異なっている。アドバイザーとメンテナーで申告したはずだ。ランクについても確認したい。通常は経験があってもC級からだと聞いている」
もちろんアリステアは遠慮などしない。ルーサーは待ってましたとばかりに笑みを深めた。
「そちらについては、まずはこちらの不手際を謝罪します。窓口で出している申請書類はアリステアさんほどの方を想定したものではありません。本来なら日を改めて面談という形になるのですが、窓口の職員が混乱してしまったようです。
お渡しした書類はギルドからの提案です。同意してもらえるのであればこの内容で登録する、というものです。主に依頼人やギルドが冒険者に遂行能力があるかを判断するための資料になりますので、希望ではなく経歴や能力に即した内容になっているはずです。
内容について職種ごとに説明しますと、まずアドバイザー、こちらはご申告の通りになるかと思います。
情報の提供や計画の立案など、専門分野での支援が役割になります。アリステアさんのように錬金術師ギルドなどの他ギルドや、大学会員と兼ねられる方の多い職種です。専門分野も魔術、錬金術、精霊学など経歴と相違ないかと思いますが、問題があれば指摘してください。
次に、申告があったメンテナーですが、こちらはC級までの初級職になります。アリステアさんの場合は技術系の専門職、ガンスミスが適当ですのでこちらで提案しています。
後は錬金術師と魔術師になります。アリステアさんはそれらをアドバイザーに含めて申告したものと思いますが、先ほど説明した通り、能力に即した内容での登録となりますので、こちらのほうでの登録もお願いします。
アリステアさんが優秀な錬金術師であることは双方が認識している通りです。もしよろしければ、今度うちの上級職員向けに魔術回路の講習会を開いてもらえるとありがたいですね。
魔術師については、アリステアさんが魔術師としても優秀であることは確認済です。実戦経験は少ないということでC級で提案していますが、このランクでも戦闘スキルを証明できますので、現場での活動が必要な仕事が取りやすくなります。
杖術と射撃をされているとのことですが、ギルドで講習を受け実力を証明することで、補助的なスキルとして登録が可能になります。ご検討ください。
ランクについてですが、魔術師以外、アドバイザーとガンスミス、錬金術師はA級で提案しています。
当代随一の錬金術師であり、竜殺しの銃の制作者であり、神殿よりストーリーテラーの称号を贈られたアリステアさんをB級以下で評価しては当ギルドの管理能力を疑われることになってしまいますのでね。
総合評価はA級です。
まずはこちらの内容での登録を提案します。お仕事の提案やサポートはこれを基に行いますが、ギルドの対応に不満があれば都度調整ということになります。
逆に、そちらが希望するお仕事についても、登録内容を基に不適当と思われればお断りすることがあります。指名依頼であってもあまりにも不適当なお仕事についてはギルドではサポートしかねます。
後は特記事項ですが、受けることのできないお仕事や特殊な事情などはこちらに記載してもらうことになります。
アリステアさんの場合はヨハンナ師との契約によってN式魔力銃に関する技術はデリク君にのみ提供することになるかと思いますので記載済です。既に説明していますが、スキルの有無と依頼を受けるかどうかは別ですので、このことがランクに影響することはありません。
賞罰や所属ギルドなどについてもこちらで分かる範囲で記載しましたが、追加や訂正があればご指摘をお願いします」
ルーサーは準備していたのであろうセリフを一息に言い切った。
「職業、特記事項、賞罰や所属については承知した。こちらについては提案通りで問題ない。問題がなさ過ぎて不審なくらいだが。対応が早すぎる」
アリステアはわずかに警戒するように書類を睨んだ。
「うちには優秀なスカウトチームもいますから。アリステアさんについては何度かスカウトを検討し、ご提案前に頓挫しています」
「……理解した」
アリステアはちらりとデリクを見た。提案までの防波堤となった一人がデリクであることを察したのだろう。
「……先ほども言ったとおり内容に問題はないが、ランクについてはB級以下で登録して欲しい。
A級になれば強制力の高い指名依頼や式典などへの出席依頼も受けることになると聞いている。私の本業は研究者だ。冒険者登録は研究のために必要な資料を採取するためのものだ。ランクにふさわしい働きができるとは思えない。
また、ストーリーテラーの称号についてだが私はそれを認めていない。神殿にも取り下げさせた。二度と私の前でその称号を口にしないで欲しい」
アリステアは強い口調で要求した。
「称号の件は承知しました。しかし、ランクについては難しいでしょうね。ご存じの通り、冒険者ギルドは都市連合に係る組織です。アリステアさんをB級にとどめては会合の度に責められることになってしまう」
「デリクがB級にとどまっているのだから私もB級で問題ないはずだ」
「デリク君については諸事情を考慮してのことです。また、彼の能力はアリステアさんの銃への依存度が高い。一方でアリステアさんはその銃の制作者ですから」
「N式が威力を発揮できるのは使い手がデリクだからだ。それが分からないなら管理能力がないと言われてもしょうがないだろうな」
「アリステアさんのおっしゃる通りです。ぜひデリク君もA級に上げなければ」
「……ギルマス、アリステアをからかわないでください。アリステア、ギルマスを動かしたいならそういう方法じゃだめだ」
デリクはいい加減仲裁に入った。
「明文化されてはいないが、慣習としてA級とB級は役割が違う。
A級は都市連合そのものに属し、都市連合全体にとって優先度の高い仕事を受ける。
強制力の高い依頼と言っても絶対じゃない。各都市のギルドマスターから直接交渉を持ち掛けられるような立ち位置だ。かなり断りにくい状況になる、というほうが正しい。
B級は各都市の意向を優先し、ギルドマスターの直属のように扱われる。
一応言っておくと、強制力で言えばB級もそれなりだ。距離が近い分遠慮なく押し付けられることもある。ただ、その分こちらの意見も通りやすい。気の合う一人のギルドマスターと付き合うほうが、少なくとも俺にはあっているということだ。
君がA級を避けようとしているのは賢明だとは思うが、N式のことを考えれば特に、君と俺とをセットでB級にとどめればギルマスへの風当たりが相当なものになることは想像がつくだろう?
今回の場合、B級にとどめて欲しいというのは後ろ盾になって欲しいと言っているのと同じことなんだ。ギルマスならなんとかはしてくれるだろうが、なんとかして欲しいなら君の側にもそれ相応のものがあってもいいだろうと、つまり彼はそう言っている。
……ただ、今回の場合は冒険者登録自体をとりやめてもいい。指名依頼は俺宛に出してもらい、君は協力者として同行するという形でもじゅうぶんだろう。
もしくは別に後ろ盾となってくれる者を探して専属契約を結ぶという手もある。それならA級でも望まない仕事を断りやすい。セオドア師なら力になってくれるだろうが、君はそういうのは嫌だろう?」
「……嫌だ」
アリステアは本気で嫌そうに眉を寄せた。兄を嫌っていることを隠そうともしない。
小賢者である彼が後ろ盾になってくれればデリクも安心できるのだが、借りを作りたくないのだろう。
気持ちも分からないではない。セオドアはやることはやってくれるが口も出すタイプだ。
「私としてはどんな形でも登録してもらえる方が嬉しいですけどね。アリステアさんにも利益はあるはずです。
冒険者になれば遺跡群や魔の森の深部など、通常は立ち入れない場所にも入ることができるようになります。
遺跡モノは冒険者の夢ですが、錬金術師であるアリステアさんには金銭だけではない学術的な価値もあるはずです。探索に加わらなくてもギルドに登録していれば遺跡モノが出た際にアドバイザーとして関わる機会も増えます。
それ以外でもアリステアさんが興味を持ちそうな依頼、特殊な精霊案件などがあれば優先してご案内することもできます。都市大学では得ることのできない成果を得られるかもしれない。
もう少し身近な所ではカフェや訓練所などのギルドの施設を割引価格で利用できますし、ランクに応じて優先的に予約が取れます。
とはいえ、強制できるものではありません。判断はご自分でなさってください」
ルーサーはアリステアの登録を望んでいる。利点を強調した。
デリクとしては登録を諦めてくれる方が気が楽ではある。
冒険者は面倒ごとの矢面に立つ仕事だ。正攻法では対処できない問題も多い。アリステアには向かないだろう。
しかし、ルーサーの話が本当ならアリステアの周囲も今までのままとはいかなくなる。
もしアリステアがルーサーの下につけばできるだけのことをしてくれるはずだ。アリステアを取り巻く情報も入りやすくなる。
「……分かった。条件を言ってくれ」
アリステアは少し考えるそぶりも見せたが、結局はルーサーの提案を受け入れた。
それがアリステアにとっての最善かデリクには分からない。しかし、ルーサーにとってはよかったのだろう。彼はにんまりと笑った。
「それは追い追い。心配しなくても悪いようにはしませんよ。ようこそ、第三都市冒険者ギルドへ。……あぁ、そうだ、最初に一つ。俺の元で冒険者を続けたいなら、絶対に守って欲しいことがあるんですが、いいですか?」
ルーサーの声音にわずかに挑発するような響きが宿る。
アリステア相手によくやる、デリクのほうがひやりとする。物事をひっかきまわしたがるのは彼の悪い癖だ。
「ギルマス、お手柔らかに。アリステアはギルマスみたいな相手には慣れてない」
「デリク、このままアリステアさんに冒険者を続けさせるつもりなら、保護対象ではなく同僚として扱うことに慣れておいた方がいい。命に関わる」
デリクは沈黙した。
口を開けばほとんど軽口だが、たまに正論でぶんなぐってくるのが彼だ。今日は正論の割合が多い気がする。
「いい。デリク、彼の言うとおりだ。言いなりになるつもりはないが、世話になるだろうことは理解している。ギルドマスター殿、遠慮せずに言ってくれ」
アリステアは明らかに不機嫌そうだったが、促した。
「では、遠慮なく。……アリステアさんの気持ちも分からないではないですが、少なくとも第三都市の冒険者でいる間は、銃を人質にデリクをコントロールするような真似はやめてください」
ルーサーの表情は変わらないが空気の質が変わるのが分かる。アリステアが息をのむ気配がある。デリクはアリステアの顔を見ることができなかった。
「……分かった。そちらが正しい。努力する」
少しの沈黙の後、アリステアは小さく息を吐き、言った。
声は少しかすれていたが強い自制が感じられた。よく耐えたものだとデリクは思う。昔のアリステアなら癇癪を起していたところだ。
しかし、努力する、だ。約束はしないらしい。
「ひとまずそう言ってくれて助かりました」
ルーサーはにこりと笑った。
「……ご希望通りランクはBで。登録作業は明日中には終わらせますので、明後日以降にまた来てください。詳細はテレグラフにも送ります。まだ何かありますか? なければこれで解散ということで」
ルーサーは早く仕事に戻りたいのだろう、立ち上がり手を差し出した。
アリステアも同意見らしい。どこか不服気に、それでも席を立つとルーサーの手を握り返す。
「解散で問題ない。今後ともよろしく頼む。……いや、一つだけ」
アリステアは手を引くと、にやりと笑った。
「クロエおばさまに伝えてくれ。おばさまは御友人の趣味だけはいいと思っていたのだが、今回は賛同しかねると」
アリステアは言うだけ言うと踵を返した。
アリステアのいう御友人がルーサーがいうオトモダチであることは明白だ。デリクはルーサーが苦虫を嚙み潰したような顔をするのを凝視する。
セックスをすると相手の魔力の痕跡が残るというのはよく知られた話だ。デリクにはよく分からない感覚だがアリステアは握手の際に何か感じ取ったようだった。
魔力の質には傾向はあるが正確に相手が分かるようなものではないはずだ。ほぼ山勘だろうが、この反応ならあたりだろう。
「おめでとうございます? 大物じゃないですか。ギルマスは相変わらずもてますね」
デリクはとりあえず祝福の言葉を選んでおいたが、疑問形になったのはクロエについていくらかは知っていたからだ。
ブラック・スカイの魔女、ようするにそんな二つ名を与えられるような女性だ。
損得ずくの関係なのか、しかし、ルーサーはデリクの母親に惚れていたくらいだ。彼女が好みのタイプならクロエでもいけるのかもしれない。
あいかわらずあなたの趣味はすごいですね、という言葉は飲み込む。
「めでたくねぇよ、帰れ」
ルーサーはあからさまに不機嫌そうだ。デリクの言いたいことを正確に察したのだろう。
アリステアはルーサーに一矢報いたようだ。いつもならこういう不躾なことはしないのだが、よほど気に食わなかったのだろう。
分かってはいたが気が合いそうにない二人だ。
デリクは沈黙を守った。
この二人の間に入る時はできるだけそうしよう。そう決めた。
【BL】第三都市の精霊学者 けい @kei800
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