有りや無しや、逆さの雪は

父を亡くした雪の様な娘。
白い肌に白い髪、赤い瞳に生まれた事も
何一つ気に病む事はないと教えてくれた、
お前は魔物なんかじゃないと庇ってくれた
優しい父を想う。

 養父を失くした山の加護を持った青年。
嘗て双子であった海の魔物を仇と狙う。
生きる術を教えてくれた養父を奪われた。
あれは、この世に在ってはならぬと。


この、二人の邂逅は。


 この世に在ってはならぬもの。

それは、有りや無しや。

 其々に又、其々の父の教訓がある。
けれどもそれらの出る処、想いは同じ。

扠、彼等の心は如何に。

娘は無邪気に雪と戯れ、
青年は美しい 逆さの雪 に魅了される。


只、双子の魔物はひとり寂しそうに白髪の
尾を垂れる。