退魔学院の最強コンビ！ ～蒼き風使いと霊瞳の乙女～

第52話 永遠の輪廻を超えて

　宇宙のような姿をした存在が、私たちを見下ろしている。

「理の根源から在り得なかった可能性まで、全ての存在は私が創り出したもの」

　その声は、まるで無数の声が重なり合っているかのようだった。

「やれやれ」

　竜二が肩をすくめる。

「また『私が全ての創造者です』系？」

「あのさぁ」

　沙織が呆れたように言う。

「最終的な敵がそれって、ちょっと安直じゃない？」

「うん、わたくしも同感」

　美奈子が真面目な顔で頷く。

「展開的にもう少し工夫が欲しいところですわ」

　存在が動揺を見せる。

「な、何を言う！ 私は全ての――」

「あー、はいはい」

　竜二が手を振る。

「全ての創造者で支配者で、私たちなんて塵みたいな存在で、って言いたいんでしょ？」

「くっ！」

「でもね」

　凛が一歩前に出る。

「本当の創造者なら、こんな風に支配しようなんて思わないはず」

「その通りよ」

　八葉千鶴が微笑む。

「あなたは、理の果ての先にある可能性の一つに過ぎない」

「黙れ！」

　存在が激しく揺れ動く。

「私こそが……私こそが！」

　その瞬間、空間全体が歪み始める。

「みんな、気を付けて！」

　母の警告の声が響く。

　氷の結晶が、突如まばゆい光を放つ。

「なるほど」

　＜理道＞が静かに言う。

「これが最後の試練。全ての可能性が交差する場所で、私たちは何を選び取るのか」

「そんなの」

　俺は凛の手を握る。

「決まってるじゃないか」

　八つの力が、再び共鳴を始める。

【蒼嵐浄化】

【霊境透視】

【真実顕現】

【記憶解放】

【紅蓮の炎】

【森羅万象】

【紫霧の盾】

【銀光の理】

　そして、新しいメロディが紡ぎ出される。

「何だと！？」

　存在が驚きの声を上げる。

「まさか、私の力を打ち消すつもりか！」

「違うわ」

　八葉千鶴が言う。

「打ち消すんじゃない。受け入れるの」

「受け入れる？」

「そう」

　凛の＜幽明霊瞳＞が、かつてない輝きを放つ。

「理も混沌も、全ての可能性も、みんな必要な存在」

「だからこそ」

　俺の【蒼嵐】が、青い光の渦を作り出す。

「調和が必要なんだ」

　八つの力が重なり合い、新しい歌となって響き渡る。

『理の果ての先の 新しい朝に

　全ての想いを 紡ぎ合わせて

　限りない夢と 無限の可能性が

　永遠の輪廻を 超えてゆくよ』

「なっ……私の力が！」

　存在が徐々に形を変えていく。

「待って！ これは……！」

　その姿は、まるで星々の集合体のよう。

「ああ、そうか」

　賢樹剛志が、人の姿に戻りながら呟く。

「これが本当の姿だったのか」

　存在は、美しい星の群れとなって空間を満たしていく。

「無限の可能性」

　八葉千鶴が説明する。

「それは、決して一つの力に支配されるものではない。むしろ、自由に輝き合うもの」

　星々が舞い踊る中、最後の扉が開かれていく。

「さあ」

　千鶴が凛に手を差し伸べる。

「新しい世界を、一緒に」

　母娘が手を取り合った瞬間、眩い光が全てを包み込む。

　目が開けると、そこは……。

「これが」

　狐堂先生が驚きの声を上げる。

「理の果ての先……！」

　広がる景色は、人の世界でも妖魔の世界でもない。

　しかし、どちらの世界も内包する、より大きな世界。

「よーし！」

　沙織が＜記録の書＞を掲げる。

「この新しい世界の物語、ちゃんと記録しなきゃ！」

「そうそう」

　美奈子が八つ目の札を手に微笑む。

「これからが本当の始まりですもの」

「まったく」

　竜二が肩をすくめる。

「面倒くさそうだけど、まあいいか」

　俺は凛の手を握りしめる。

「新しい物語、一緒に紡いでいこう」

　凛が満面の笑みで頷く。

「はい！」

　私たちの前に、無限の可能性が広がっていた。

　そして、新たな冒険の幕が、今まさに上がろうとしている。

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　エピローグ ～その後～

　退魔学院の教室で。

「ねぇねぇ、本当にあれから一年経つんだよね」

　沙織が窓の外を見ながら言う。

「うん」

　凛が頷く。

「理の果ての先の世界と、私たちの世界が重なり合って……」

「おーい！」

　廊下から声が聞こえる。竜二が息を切らして駆け込んできた。

「大変だ！ また新しい扉が！」

「えー、もう？」

　美奈子が八つ目の札を手に立ち上がる。

「しょうがないですわね。行きましょう、最強コンビ！」

　俺と凛は顔を見合わせて、笑顔で頷いた。

　これは、終わりじゃない。

　新しい物語の、始まりなのだから。

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　完結