紹介No. 18:薔薇と硝煙/鳴瀬憂

 今回はカクヨムコンテスト10開始以来、初めて(ようやく、とも言います)応募作の長編を取り上げます。今回は、ちょっぴりダークで耽美な世界観たっぷりの異世界ファンタジー『薔薇と硝煙』(鳴瀬憂さん作)を紹介します。


 このコラムの最後、------の後はネタバレになりますので、作品を読んでいない方は飛ばしていただけると幸いです。


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紹介No. 18


URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093084841393761


ジャンル:異世界ファンタジー


カクヨムコン10サブジャンル:ライト文芸部門


話数:19(2024/12/17現在)


文字数:42,488文字(2024/12/17現在)


投稿状態:連載中


セルフレイティング:残酷描写有り

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【粗筋】

 主人公のエレナは、「世界で最も美しい屍体」に魅入られて仕事の後に毎日展示先の博物館に通い詰めていたが、博物館のある王都を離れなくてはならなくなった。その「屍体」のことを気にかけながらも、エレナは小さな村にて新しい雇い主ミセス・カーターの元で毎日を送っていた。ある日、「屍体」が博物館から盗まれたとミセス・カーターからエレナは聞き、彼の行方に気を揉む。驚くことにその日の夜、その「屍体」そっくりの美少年ルーヴェンが現れ、親切なカーター老婦人は家に招き入れてしまう。エレナは、愛らしいルーヴェンに振り回されつつも、彼にどっぷりとはまっていく。そんなある日、美青年カーライルがエレナの前に現れ……


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 この作品はカクヨムコン10スタート日(2024/11/29)に連載開始されました。作者の鳴瀬憂さんを元々フォローさせていただいているので、新作通知が来て粗筋とキャッチコピーに興味を持って読み始めました。


 作品タイトルの中の「薔薇」はキャッチコピーにあるので、ルーヴェンを指すと分かります。もうひとつの「硝煙」がどこから来ているのか最初は不思議でしたが、第13話まで読むと分かりました。エレナを巡る登場人物達をうまく象徴していてなるほどと思いました。


 話の冒頭から倒錯的・退廃的な設定自体に度肝を抜かされ、とても惹かれました。具体的には、主人公のエレナが「世界で最も美しい屍体」に魅入られ、その「屍体」が生きている美少年ルーヴェンとして彼女の目の前に現れるというくだりです。


 でもルーヴェンは、ただの生きている「屍体」ではありません。彼は、ショタおねのタグ通り、エレナを振り回します。美しい顔で甘々に甘えるところなど、ショタおね・おねショタ好きなら胸をズキューンと撃ち抜かれること間違いなしでしょう。だけどそれだけじゃないのです。エレナが言う事を聞かないと見れば、氷のような冷たさも持つのです。そのギャップも尊い!


 異世界ファンタジーらしい、ルーヴェンとそのライバルの美青年カーライルの秘密から来る対立関係にもわくわくしています。


 キャッチコピーのように最後はエレナの愛でルーヴェンの呪われた心がとけるといいなと思います。


『薔薇と硝煙』への私のレビューはこちら:

https://kakuyomu.jp/works/16818093084841393761/reviews/16818093090040835224


 その他、鳴瀬さんは次の3作でもカクヨムコン10に応募されています。連載中の『死にたくないので、その求婚お受けします!』のヒーロー美貌の騎士サイラスは、特にヤンデレ好きにはたまらないでしょう。『ロイヤル・エンゲージ』は病弱な腹黒皇子がヒーローというのが萌えます。『シャトーヴェリテの蕾姫』はまだ冒頭しか読んでいませんが、紹介文とタグを拝見する限り、『薔薇と硝煙』からおねショタ、ヤンデレ、ライバルの(恋と本当の意味での)闘いの代わりに溺愛が入っているみたいなので、最初の3要素が苦手だったり、溺愛好きだったりするなら、『シャトーヴェリテの蕾姫』がお気に召すのではないでしょうか。


『死にたくないので、その求婚お受けします!』(連載中)

https://kakuyomu.jp/works/16818093075551956119


『ロイヤル・エンゲージ❖異能令嬢は病弱皇子の求婚を拒みたい!』(完結済)

https://kakuyomu.jp/works/16817330665876067847


『シャトーヴェリテの蕾姫✦身代わり令嬢は百年公子の寝顔を見守る』(完結済)

https://kakuyomu.jp/works/16817330663984977948


 鳴瀬さんは、現代ものでカクヨムコン10【短編】にも応募されています。読んで感じましたが、周囲の目を気にせずに好きなものを堪能して誰かと共有できるっていいですね。ただでさえ、理解してもらいがたい趣味を共有していれば、そこから恋が生まれるかななんて最後は予感というか、勝手な希望も持ちました。


『晴れた日の午後に、あなたと紅茶を。』(完結済)

https://kakuyomu.jp/works/16818093076024010592


『晴れた日の午後に、あなたと紅茶を。』への私のレビューはこちら:

https://kakuyomu.jp/works/16818093076024010592/reviews/16818093090499815955


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↓まだ読んでいない方はネタバレがあるので飛ばして下さい。↓


 ルーヴェンのエレナに対する甘々な態度は実は嘘であり、彼の本音はエレナを利用するだけのはずだったのに、彼がだんだんエレナに絆されていく様子にキュンときました。それだけじゃなくて彼がエレナにわざと嫉妬させたりして執着していくヤンデレ化も少しずつ見えてきてとても惹かれます。


 エレナもルーヴェンの正体が普通の人間の少年じゃないと薄々分かっていながら、ルーヴェンに惹かれる本能に逆らえないジレンマもとてもいいです。それにカーライルがルーヴェンの敵と分かっているのにエレナが協力せざるを得ないジレンマにもドキドキ感と切なさが相まって続きがとても気になります。


 カーライルは、昔私が愛読していた夢枕獏の『吸血鬼ハンター"D"』の"D"を彷彿とさせます。"D"は超絶イケメンが主人公なのに恋愛に全く興味を持っていなくてクール過ぎた(少なくとも大昔に私が読んだ範囲では)のが残念でした。今の所、カーライルはエレナに塩対応だし、相反する目的を持つ者同士の協力関係が危ういバランスで成立しているだけなので、どこからどんな風にタグのような三角関係に突入するのか楽しみです。

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