2.徒花【連載版】/アナマチア(紹介No. 13)

 今回は、恋愛ジャンルに(私が)新設した「ドロドロ愛憎劇」カテゴリー第2弾として、アナマチアさんの『徒花【連載版】』を紹介させていただきます。



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紹介No. 13


URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093077291635353


話数:28(2024/6/15現在)


文字数:65,293文字(2024/6/15現在)


投稿状態:完結済


セルフレイティング:残酷描写有り、性描写有り

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 今年7月4日から9月3日まで私が初の自主企画『そのドロドロ、過剰です⁉︎』を主催したことを再三、本エッセイに書いてきました。アナマチアさんも『徒花【連載版】』で企画に参加してくださったうちの1人です。実は本作を別サイトで読んでいたのですが、カクヨムでも投稿されていたのを自主企画で初めて知りました。


 ちなみに企画参加作品のうち、本エッセイでは瑠花さん作の『桜兎(さくらうさぎ)・明治悲運奇譚』(紹介No. 3)と、空烏 有架(カラクロアリカ)さん作の『硝子の剣 鉄の円冠』(紹介No. 7)を紹介済みです。その他に別作品『マルベリーの木の下で、あなたはわたしの全てを奪う』(紹介No. 8)を本エッセイで取り上げた碓氷シモンさん作の『導く者に祝福を、照らす者には口づけを 〜見捨てられた伯爵夫人は高利貸しの愛で再び輝く〜』も参加してくださっていました。


自主企画『そのドロドロ、過剰です⁉︎』(現在は終了)

https://kakuyomu.jp/user_events/16818093080425113428


『徒花【連載版】』作者のアナマチアさんは、さすが私のドロドロ企画に参加してくださったこともあって、ドロドロ大好きの嗜好が私に似ていて交流を始められてとても嬉しくなりました。2024年9月30日のアナマチアさんがご自身の近況ノートに書いてくださったコメントによれば、「婚約破棄されてざまぁよりも、ドロドロ、紆余曲折の末、ヒーローに執着されて元サヤに戻る作品とか大好き」とのことで、私は激しく同意して感激しました。ですが、ドロドロ愛憎劇には大人シーンが付き物(ですよね?)なのに、カクヨムではぼやかすしかないのが本当に残念です。でも未成年ユーザーの多い(私の体感です)カクヨムでは配慮するのは当然なので、私の趣味を炸裂させるのは他サイトにします。


 それでは恒例の粗筋紹介です。


【粗筋】

 ウィルベリー伯爵家には、一女シルティしかなかった。女性の爵位継承が認められないため、シルティに婿を迎えるか、養子をとるか彼女の両親は悩んだ。そんな中、養子の適任者としてシルティより2歳下の男の子セドリックが見つかり、ウィルベリー伯爵家は彼を迎えた。天使のように美しい容姿を持っている彼は伯爵家にすぐに馴染み、シルティを慕うようになったが、その姉弟愛はやがて……


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 作品タイトルは短く『徒花あだばな』。昨今の粗筋を説明するかのような長いタイトルとは一線を画していて、アナマチアさんのセンスが光っています。しかも本作の内容を暗示するかのようです。


 タイトルに「連載版」とついていることから分かるように、5000字弱の短編バージョンもあります:


『徒花』:https://kakuyomu.jp/works/1177354054920985014


 連載版は三人称、短編版はシルティの一人称で語られ、結末に至る直前が少し異なるという違いはありますが、大筋では同じ内容です。連載版には短編版に出てこない設定や登場人物が挿入されて物語に厚みが加わっています。さらに連載版では、短編版に出てこない設定や登場人物が出てきて短編版で読者が疑問に思うであろうことも分かってきます。それに連載版のほうが、所々に挿入される官能的な濃厚描写をより多く堪能できます。それはもちろんカクヨムの規制範囲内なので安心して読めますが、正直言うとR18描写が許されるサイトでこそ、この官能的な描写が本領発揮できそうで少々(いや、大分?)残念です。


 互いに慕っていたはずの義姉弟の関係がどんどん変化(どんな方向への変化なのかはタグと作品をご覧下さい)していく様は読み進めていくとちょっと恐ろしくなりますが、時折挟まれる濃厚場面がその歪な愛を強調してヤンデレ好きにはたまりません。


 結末に至る直前は短編と連載編で少し違いますが、結末後にセドリックがどうなったかは読者の想像に任せられており、余韻を残しています。連載版の結末にある美しい回想場面はアナマチアさんの真骨頂で、読者の感情を揺さぶります。


 短編版のレビュワーさんがおっしゃる通り、『徒花【連載版】』も「読み手を選ぶ作風」ではありますが、そういうドロドロな愛憎劇が好きな読者は少ないものの、確実にいます(私もその1人です)。


 でもアナマチアさんの作品はドロドロテイストだけではありません。最新作の中華風恋愛ファンタジー『復讐の蘭花』(連載中)はタイトルに「復讐」が付いていますが、今のところ『徒花』ほどのドロドロ展開はなく、焦れ焦れの四角関係を堪能できる状況となっています。四角関係と言っても、私の嫌いなハーレム展開の雰囲気はなく、私は楽しんで読めています。


『復讐の蘭花』は、『救国のエフィーリア―元の世界に帰りたいのに、ヤンデレ少年神と執着系王太子に溺愛されて困っています!―』に引き続く、ペダグラルファ大陸シリーズ第2弾ということで同じ世界観を共有する作品がこれからも生み出されていくのかと思うと、シリーズものが大好きな私はわくわくします。


『救国のエフィーリア―元の世界に帰りたいのに、ヤンデレ少年神と執着系王太子に溺愛されて困っています!―』(ペダグラルファ大陸シリーズ第1弾)

https://kakuyomu.jp/works/16818093078107188724


『復讐の蘭花』(ペダグラルファ大陸シリーズ第2弾)

https://kakuyomu.jp/works/16818093086200590924


『復讐の蘭花』人物相関図

https://kakuyomu.jp/users/Tazu_Apple/news/16818093087409490361


『徒花【連載版】』の私のレビューはこちら: https://kakuyomu.jp/works/16818093077291635353/reviews/16818093085883247268



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↓まだ読んでいない方はネタバレがあるので、飛ばして下さい。一部伏字があります(未読の方が読むのを前提にはしてない……ハズ)



 セドリックがどんどん歪んでいってどんどんスリルが増していきましたが、彼がシルティを心の底から愛して彼女の心を渇望する言葉にはキュンときました。その反面、彼女の心が壊れても一緒にいたいというヤンデレ(も好きです)を発揮して、ジェットコースターのような彼の心理展開にハラハラドキドキしました。


 最後の回顧シーンは、悲しくも美しい場面でした。シルティがセドリックを愛した幸せな日々を最後に振り返って彼への愛に気付けたのはせめてもの幸せだったなと思いました。番外編とかスピンオフ好きな私は、あの後セドリックがどうなったかちょっと興味があります。きっと廃人状態になったんでしょうね。でも読者の想像に任せるほうが余韻があっていいんだと思います。タグはメリバよりバッドエンドのほうがしっくりくると最初は思ったんですが、最後にシルティがセドリックへの本当の愛に気付けたって点ではやっぱりメリバ(メリーバッドエンド)でしょうか。


 当て馬になってしまったエドガーはちょっと(いやかなり?)かわいそうでした。セドリックが言うようにエドガーは〇〇「の薬が効く程度の浅い愛しか持たないくそ野郎」で、そうなったのも彼の意思が弱かったせいと思う一方、〇〇の薬を使われてしまってはどうしようもなかったと相反する感想を持ちました。

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