作品紹介:恋愛
1.レオナルドとベアトリーチェ/荒川馳夫(紹介No. 5)
今回は、9月29日に完結したばかりの本格的ヒストリカルロマンス『レオナルドとベアトリーチェ』(荒川馳夫さん作)をご紹介します。
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紹介No. 5
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093079501632417
話数:60(2024/9/29現在)
文字数:119,472文字(2024/9/29現在)
投稿状態:完結済
セルフレイティング:残酷描写有り、暴力描写有、性描写有り
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このコラムの最後、------の後は少しネタバレになりますので、作品を読んでいない方は飛ばしていただけると幸いです。過度のネタバレを避けるため、一部伏字がありますが、ご了承ください……なんて言って作品未読の方が読むことを前提にしちゃってますが、本当は内緒です!
【粗筋】
ロレニア王国の王女ベアトリスは、15歳で恋を知らないまま、父王のせいで親子以上の年齢差のあるオッタヴィアーノに嫁がされ、ラティニカ半島での読み方でベアトリーチェと呼ばれるようになる。ベアトリーチェは好色な夫とは理解しあえず、夫の子供達にも悩まされて嫁ぎ先で辛い日々を送っていたが、ある日300年前に生きていた女傑マチルダ女伯のことを知った。ベアトリーチェは、彼女の生き方に感銘して騎士として訓練を受け、馬上槍試合に出場して名を馳せていく。そんな頃、彼女はエミリア侯国の領主ジョバンニの嫡子レオナルドに出会い、初めての恋に落ちるが、彼女がオッタヴィアーノの妻であるのと同様に彼にもベアトリーチェと結ばれない理由があった。それでもお互いを恋い慕うのを中々諦められない2人だったが、あらゆる勢力を巻き込む大戦争が2人の運命を更に翻弄する。
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この作品は14~15世紀イタリアをモデルにした世界で、ヒロインのベアトリーチェは愛に忠実に生きようともがき、人々のために奮闘します。そういう愛をモチーフにした本格的ヒストリカルロマンスが元々、私は好きなのですが、作者の荒川さんによれば、私の愛してやまない「昼ドラ的要素」が入っていると言うじゃないですか! しかも欲望を
でも実を言うと、作品をフォローしてからしばらく読み進めるのを迷っていました。私はハーレム展開の物語があまり好きじゃないのですが、キャッチコピーに「これは一人の男性を巡って繰り広げられた、三人の女性が織りなす愛のドラマ」とあったので、てっきりヒーローが3人の女性を侍らす物語だと思っていたのです。でも荒川さんが近況ノートで明日エピローグ公開と報告していたのを読み、やっぱり「昼ドラ的要素」のあるヒストリカルロマンスの魔力には抗えずに読み始めたら、それは誤解と分かりました。
読み始めてまず、荒川さんの設定した世界観が詳細でしっかりしているのには驚きました。各国やその支配者の関係がちょっと複雑で、ともすると誰がどこの国の人間だったか忘れてしまうのですが、そんな時は作品トップページの紹介文にある主要登場人物の紹介を見ましょう。近況ノートに地図も貼られているので、各国の位置関係もイメージできます:
https://kakuyomu.jp/users/arakawa_haseo111/news/16818093081499058935
当時は男性優位の社会で女性は父親や夫の言うことを聞き入れるしかなかったのに、行動力あふれるベアトリーチェは、薄情な父親にも好色な夫にも負けず、強くあろうと努力し、人々のために奮闘します。でもそれだけじゃない、彼女の負の面も描写されていてリアルな人間くささを感じられました。
他の女性キャラでもベアトリーチェのライバル・イザベラを始め、ただのか弱いお嬢様はほとんどおらず、総じてこの作品は強い女性の物語と言っていいと思います。ベアトリーチェが憧れたマチルダもその代表です。彼女は、伝聞や女性達の憧れの対象としてしか登場しませんが、ベアトリーチェが強くありたい、騎士になりたいと思ったきっかけを作った女性なので重要キャラです。彼女は作中『マチルダ女伯』とか『マチルダ女王』とか言及されることがありますので、どちらが本当なのか荒川さんに確認を取ったところ、以下のような回答をいただきました:
「歴史的には(加えて男性の目から見れば)女伯(夫の領地と爵位を継いだ女人)だが、その後の活躍が理由で世間的には(特に男勝りな生き方に憧れた女性たちによる崇拝から)女王と見做されていった」
男性達には、男勝りな女傑はあまり好まれていなかったようですが、男尊女卑社会では言わずもがなですね。荒川さんの回答によれば、マチルダを好意的に見ていなかった男性達が彼女を『女王』と呼ぶことはなく、言及すらほとんどしていないそうです。マチルダのイメージが男性と女性で異なっていたのは、正直言って私の読みが浅くて回答をいただくまで気付けませんでした。
女傑達に対して、本作に出てくる男性達は影に隠れがちで、男尊女卑の世界観のアンチテーゼのような印象を受けました。荒川さんはプロフィールに男性と公表していらっしゃるので意外でしたが、性別によってこういう物語やキャラを書くだろうと考えてしまいがちな自らのステレオタイプ観に気付かせてもらいました。でも本作の男性キャラももちろん魅力的で、正ヒーローのレオナルドは正義感があふれていて強いイケメン、その対極にある危険な悪い男ゲラルドやチェザーレ(改心済)も素敵でした。
この物語のように、ハーレムやチートとか流行要素を追わないシリアスな本格的ヒストリカルロマンスは、残念ながらWeb小説に少ないので、この作品に出会えてよかったです。
私のレビューはこちら:
https://kakuyomu.jp/works/16818093079501632417/reviews/16818093085867761423
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↓まだ読んでいない方はネタバレがあるので、飛ばして下さい。結構長いです。
ベアトリーチェは強くて賢いはずなのに、愛のために理性を失った行動をしたこともあってびっくりしましたが、単に賢くて強いチートな女性像よりも人間くささが感じられてよかったです。過ちを犯しても、素直に反省して改善しようとする性格にも好感を持てました。
ベアトリーチェが憧れたマチルダ女伯が実は美化され過ぎていたというのは、リアルに感じました。ベアトリーチェがマチルダに盲目に憧れず、偶像崇拝と彼女の負の面に気付いて反面教師にしたのもよかったです。
正ヒーローのレオナルドは3人の女性を誑かす悪い男なのかと誤解していましたが、ベアトリーチェへの愛に忠実で素敵でした。けど中盤は彼の出番が少なく、正統派イケメンロスでちょっとさみしかったです。でもその分、危険なワイルドイケメンのゲラルド(とちょっとチェザーレ)で補充できましたが、そのゲラルドも後半かなり腑抜け(すみません)になって結局ああなってしまって少し残念でした。でも話の展開上、仕方ないことだったとは思います。
ゲラルドがジュリアの望みを叶える優しさを持っていたのには意外でした。でもそれが偽りだった罪悪感に彼が苦しむ必要はなくて、むしろ望みを叶えられたと思って○○〇いったジュリアは幸せだったんだと思います。それとゲラルドがコンスタンツァを騙しはしたけど〇〇を守ったことについて、意外に紳士だったんだなと思いました。
チェザーレはゲラルドに比べるとワイルドさでは負けてましたが、ゲラルドは配下が悪事を働いても止める努力をしなかったので、いい男勝負ではチェザーレに軍配が上がると感じました。でもベアトリーチェがチェザーレとの約束を破って勝手な行動をしたのに、彼は簡単に絆されちゃってちょっとチョロかったですね(すみません)。
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イザベラは自分勝手で我儘な典型的お嬢様ではありますが、ちょっとかわいそうだったなぁと思ってしまいました。私が悪女好き(もちろん小説の中でだけ)でざまぁがあまり好きでないからかもしれませんが、愛する婚約者は別の女性、しかも自分より年下の父親の後妻を愛してるなんて辛かったはずです。そう言えば、彼女の父オッタヴィアーノはその後、どうしたんだろう?
イザベラは簡単にざまぁされちゃったなと最初、荒川さんにいい意味で騙されました。彼女は案外しぶとくて「そうこなくちゃ!」と思いました。
最後のイザベラとベアトリーチェの死闘はすごく迫力がありました。でも戦闘訓練を受けたことのないイザベラが、騎士の訓練を受けたベアトリーチェ相手によくそんなにもったなと思いました。ベアトリーチェだけ重い鎧をつけていたのでしょうか。
最後にすごく野次馬的な興味ですが、「確認しておきたいこと」でレオナルドとベアトリーチェはキスだけじゃなくてその先までしたのかなと気になってしまいました(汗)。戦の前によくするなぁと思う一方、生死がかかっているから尚更気分が昂ったからかなとも思いました。
本作は完結しましたが、いずれジュリアーノの娘ジュリエットの尻に敷かれたベアトリーチェの息子ロミオのお話も読みたいです。需要ないかな?
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