神社の子
座敷あらしの魂をとってから
エレトの部屋にて。
「…つかれた」
「お疲れー」
色々ありすぎた。
これから、あ~いう怪異にもっと会ってくんだ…。
そう思うと、気が遠くなりそうだった。
「まあ、今回は最初の怪異の割にめんどくさいほうだったからな」
「ガキのくせに頭回るし」
「…お前モテるくせに口悪いな」
「まあね」
「うざい」
今回の修羅場…?
あんまり修羅場じゃなかったけど
それを乗り越えたことにより
少しだけ
ほんの少しだけ
エレトに信頼のような
そんなものが生まれた気がする。
一応、なんだかんだ助けてくれたし…。
「…というか、お前大幣なんてなんでもってるんだ?」
「ん?俺神社の子なんだよ」
「ふーん…」
「…え?」
「俺、神社の子」
意味のわからないことを言ったエレト。
エレトが
神社の子?
ありえない…
けど、大幣持ってたし…
「結構有名なんだぜ?」
「式神とか出せるし」
「式神…?」
「そうそう」
「まあ、弱いやつには出さねぇけど」
多分、結構コイツ性格悪いな。
そう思ったが
口には出さないようにした。
その前に、式神という言葉が気になる。
中二病心がくすぐられる。
「また、見られるよ」
「語り見ていくにつれて、強い怪異と対峙することも多くなるだろうしな」
「うげぇ…」
「お前に、また俺の神社特製の護身用の道具貸してやるよ」
「…ふーん」
「そのかお、気になってるな?」
「別にそんなんじゃない」
「ハイハイ、貸してあげますよ」
「選んでいいからねー」
「……うん」
ちょっとだけ
楽しみになってしまった。
それは
秘密。
〇〇〇
次の日
「おー、おはよー」
「はざーす」
「今日は遅かったな」
「寝坊したー」
「あ、そうだエレト!昨日のドラマみた?」
「あー!みたみた」
いつも通りの日常
うるさい人たちが喋ってて
その輪に入らない人たちは読書をしていて
または、授業準備をしてる人もいて
まったく
変わらない
日常…
「レイもみた?」
…のはずだった。
「…え、あ、うん」
「昨日の相手を欺くシーンすげぇよかったよな」
「窓から飛び降りて死んだふうに見せかけるってやつ」
「見た…けど」
「まじで!獅子目さんも見てんの!」
「北海拓海かっこいいもんね!」
少しずつ少しずつ
輪が崩れて
自我が解けて
ゆっくりと、結ばれていく。
「俺の部屋、センセーにバレないようにネトフリ入れたんだけどさ」
「みんなで見にこいよ!」
「さっすが銀二」
「俺今日暇だし見に行こー」
「モモも見に行く!」
「俺も今日は見に行こ」
「レイはどうする?」
笑みを浮かべて
まるでいつものメンバーであるかのように聞くエレト。
……こういうところは、少しだけ尊敬できる。
少し抵抗があったが
素直に心に従った。
「……行って、みたい」
○○○
あの座敷あらしの怪から数日後
「レイちゃん、ここ教えてくれない…?」
「レイ、情報得意なんだな」
少しだけ、クラスのヤンキーたちと喋るようになった。
とは言っても、授業中の話し合いの時にちょっと話せるようになった程度だけど。
まあ別に、そんなにすぐに仲良くなりたいワケじゃないし…?
急ぐものでもないから
ゆっくりと時間をかけて行こうと思った。
そんな、矢先だった。
「次の怪談を見つけた」
放課後
私が空き教室で課題をしてる時のことだ。
突然、扉が開かれて
エレトが入ってきて、そう言ったのだ。
「……ちなみに、どんなの?」
「んー、厄介ではありそうだな」
「まあ怪異ってそんなものっしょ」
そう言いながら、手に持っていた本をペラペラめくり出す。
「…それ、なに?」
「今回の怪異の情報がのってる本」
「役に立つのそれ…」
「この前みたいに襲ってこない場合、魂になってもらうのに説得しなきゃだろ」
「だから、過去から共感して欲しいものとか未練とかを見つけ出すんだよ」
「ふうん……」
たしかに
共感や相談とか、協力は強い結び付きが生まれやすくなる。
人間関係が特にそんな感じだし。
まあ、今回は妖怪と人間だけど。
「あ、そうだ」
突然立ち上がったエレト。
「え、どこいくの」
「ちょっと忘れ物」
空き教室の扉を開けながら
「すぐ戻ってくるよ」
そう言って、出ていった。
急に静かになった夕焼け色の教室を見て
微かな哀愁を感じながら
_____すぐに戻ってくるらしいし
と、もう一度課題に向き合った。
○○○
もう一度扉を開かれたとき
何かすごい気を感じた。
霊や妖怪のような、そんな力の気
しかも強力で気分を害しそうなレベルの。
「…え、なにそれ」
「俺の神社のお祓い道具」
そう言って腕いっぱいに持った道具を置くエレト。
……短刀
……大幣っぽいやつ
……植物みたいなやつ
……鈴いっぱいついてるやつ
……小さい大幣みたいなやつ
……植物Part2
……数珠
結構な数があった。
「さすがにバレない程度に持ち出せるのはこれくらいしかなかったよ」
「結構な数じゃない?」
「うちの神社の倉庫にこれの10倍以上あるからねー」
「…すげえな」
いつか懇願して見させてもらおう。
「で、だ。」
「この中から1つ、お前に預ける」
「……この中から」
「もちろん失くしたりなんかしたら数百万は支払わなきゃいけないからな」
「やっぱり遠慮しとこうかな」
「ばーか、これくらい持ってなきゃすぐしぬぞ」
けらけらと笑うエレト。
でも、本当のことだろう
自分の身は自分で守るようにしとかないと
エレトが苦戦してるとき、足でまといになるのはゴメンだ。
……にしても、さすがに悩むな。
「試しに実践とかは……」
「そーだな……」
顎に手を添え
少し考えてから、私の方を見た。
「よし、とりあえず1個なんでも選んで」
「なんでも……」
厨二心がくすぐられる
これは、私の好み真ん中すぎる。
絶対にこれ。
「この短刀で」
「はい、どうぞ」
手渡しで受け取った瞬間
ズシッと、短刀とは思えない重さが手にかかった。
____これが、神社の短刀
そう思うだけでニヤニヤしそうだが
何とか抑えて、少しだけ刀身を見た。
鈍く光る金属光沢が、夕焼け色になっている。
かっこいい。
今すぐ振りたい気持ちが湧き上がってきそうだった。
「それは妖刀を短くしたやつ」
「よ、妖刀……」
「そう、妖魔を祓う妖刀「にっかり青江」を持ち運び用に最近短刀にされたやつ」
「カッコイイのににっかりって……」
「まあ、カッコイイけど。」
妖刀、しかも最近リメイク済
なんてカッコイイんだろう…。
「気に入ってくれたならよかった」
まるで子供を見るような目でそう言うエレト
でも、笑ってるようには見えなかった。
「じゃあ、練習も兼ねて怪異の魂貰いに行くか」
「わかった」
特に気にすることも無く
私はエレトに続いて、空き教室から出ていった。
シゴ語り 泡沫の @utakatanopuls
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