第19話「あの呪いは、私たちを結びつけるための、運命の糸だったのね」

 魔王との戦いから数日が経ち、レオンたちは英雄として街に凱旋していた。


 花びらが舞い、歓声が上がる。人々は彼らを称え、祝福した。


 宴会場では、豪勢な料理が並び、音楽が奏でられている。レオンとアイリスは、上座に座っていた。


「ねえ、信じられる? 私たちが、こんな風に祝福されるなんて」


 アイリスが、感慨深げに呟いた。


「ああ。だけど、俺はもっと信じられないことがある」


「何?」


 レオンは、アイリスの手を取った。


「お前が、俺のことを好きになってくれたこと。呪いが解けた今も、俺のそばにいてくれていること」


 アイリスは、微笑んだ。


「私だって、同じよ。あなたに出会えたこと、この冒険ができたこと。全部が、私の宝物」


 二人は、見つめ合い、そっとキスをした。もはや、それは呪いでも何でもない。純粋な、愛の印だった。


 グラムとエルが、そっと近づいてきた。


「おめでとう、レオン、アイリス」


 エルが、花束を差し出す。


「ありがとう、エル。君の応援があったからこそ、乗り越えられた」


 レオンが、笑顔で言う。


「俺も、お前らがいてくれて本当によかった」


 グラムが、豪快に肩を叩く。


「こちらこそ。あなたたちとの冒険は、私の人生そのものだわ」


 アイリスが、感謝の言葉を述べた。

 四人は、笑顔で乾杯した。


 宴もたけなわになった頃、レオンがアイリスを連れ出した。二人は、静かな中庭へと向かう。


 月明かりが、庭を優しく照らしている。ちょうど、二人の冒険が始まった日と同じ月だった。


「覚えてる? あの日、俺たちは最悪の出会い方をしたけど……」


 レオンが、笑い出す。


「ええ。あなたは頑固で、短気で、高慢で……」


「ひでえな!」


 二人は顔を見合わせ、笑った。


 レオンは真剣な表情になり、アイリスの両手を取った。


「アイリス。俺と結婚してくれ」


 アイリスの目が、大きく見開かれる。


「え……?」


「冒険も、呪いも、全部乗り越えられたのは、お前がいたからだ。これからも、ずっと一緒にいよう」


 アイリスの瞳に、涙が浮かぶ。


「ええ……! 喜んで……!」


 二人は抱き合い、深いキスを交わした。


 レオンは、アイリスの髪をそっと撫でた。


「あの呪いは、俺たちを結びつけるための、運命の糸だったんだな」


「ええ、そうね。魔王が、意図せずに私たちに与えてくれた、最高の贈り物だわ」


 二人は額を合わせ、幸せそうに微笑んだ。月明かりが、二人を祝福するように輝いていた。


 冒険の日々は終わったが、レオンとアイリスの新たな人生は、まだ始まったばかりなのだった。


第20話「愛の力こそ、世界を紡ぐ絆」


 レオンとアイリスの結婚式は、まさに世紀のビッグイベントだった。


 式場となった大聖堂には、色とりどりの花が飾られ、祝福の音楽が流れていた。


 レオンは純白の正装に身を包み、アイリスは美しいウェディングドレスを纏っている。二人は、神妙な面持ちで祭壇に立っていた。


 神父が、厳かな口調で述べる。


「レオン・フレイムハート。あなたは、ここにいるアイリス・ムーンシャドウを、妻として愛し、敬い、生涯をともにすることを誓いますか?」


「はい、誓います」


 レオンの声は、凛々しくも優しい。


「アイリス・ムーンシャドウ。あなたは、ここにいるレオン・フレイムハートを、夫として愛し、敬い、生涯をともにすることを誓いますか?」


「はい、誓います」


 アイリスの声は、清らかで愛に満ちている。


「それでは、誓いのキスを」


 二人は、顔を近づけ、優しくキスをした。


 会場から、大きな拍手と歓声が沸き起こる。


 グラムとエル、そして元魔王の老人も、涙を浮かべて祝福していた。


 レオンとアイリスは、手を取り合って会場を歩く。花びらが舞い、祝福の言葉が飛び交う。


 二人は、城の バルコニーに立った。


 下には、広場に集まった大勢の民衆が見えた。彼らは、英雄たちの結婚を心から喜んでいるようだった。


「みんな、ありがとう! 私たちは、この愛を胸に、世界に平和をもたらすことを誓います!」


 レオンの宣言に、歓声が上がる。


「私たちが辿り着いたのは、愛の力です。それこそが、世界を紡ぐ絆なのです!」


 アイリスの言葉に、みんなが頷いた。


 二人は、再び口づけを交わした。


 その瞬間、二人の体が淡く光り始める。


「これは……!」


 驚くレオンとアイリス。


 光はみるみる強くなり、やがて世界中に広がっていった。


 戦火も、争いも、悲しみも……光に包まれるとすべてが浄化されていく。


 世界は、比類なき平和に包まれた。

 それは、愛の奇跡だった。


「アイリス、俺たちの愛が、世界を救ったんだ」


「ええ、レオン。私たちの絆が、新しい世界を作るのね」


 二人は額を合わせ、幸せそうに微笑んだ。


 こうして、レオンとアイリスの冒険は幕を閉じた。


 しかしそれは、新しい伝説の始まりでもあった。


 二人の愛は、時を超えて語り継がれる。


 魔王の呪いで始まったことが、世界を救う奇跡を生んだのだ。


 それこそが、真実の愛の力。


そう、愛こそが、すべての答えだったのだ。


(了)

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好きでもないのに毎日キスしないと死ぬ呪い!? ~最強の勇者と氷の魔女の不器用な恋の冒険が世界を救う!~ 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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