第41話 それぞれの未来へ

数ヶ月後の春の日差しが優しく降り注ぐ朝。柚月はドイツの音楽アカデミーの敷地内を歩いていた。広々とした緑に囲まれた環境の中で、彼女は今、自分の音楽の可能性を探りながら新たな挑戦を続けていた。


アカデミーでの生活は厳しかった。言葉の壁、技術的な壁、そして周囲の才能に押しつぶされそうになる日々。しかし、柚月はふとした時に、かつてアキと翔と共に奏でた「星の迷宮」を思い出す。


柚月(心の声)

「私たちの音楽は、あの迷宮の中で見つけた一筋の光だった。あの音があったから、今の私がここにいる。」


彼女はピアノ室に入ると、鍵盤に手を置いた。静かな音から始まる旋律は、やがてドイツの仲間たちと奏でる新しい音楽へと繋がっていく。柚月の音には、かつてよりも深みと力強さが加わり、聴く者の心を動かすものになっていた。


一方、日本では、アキが新しいステージに立っていた。彼女は地域のオーケストラに参加し、その中でもひと際輝くチェリストとして注目を浴びていた。ある日、リハーサルを終えたアキは、観客席に座る翔を見つける。


アキ

「翔!今日は何しに来たの?」


翔は笑みを浮かべながら、手にした楽譜を掲げた。


「お前に聴いてほしい曲があってさ。実は初めて書いたオリジナルなんだ。」


翔は作曲家としての道を歩み始めていた。以前はアンサンブルの中で演奏することに集中していた彼だったが、柚月が旅立った後、ふとしたきっかけで作曲を学び始めた。そして、自分が作った音楽をアキと演奏したいという新たな夢を抱くようになったのだ。


アキ

「へえ、私に弾けってこと?いいじゃん、試してあげるよ。」


翔は笑いながら頷き、二人はホールの舞台に上がった。そこに響く音は、かつてのアンサンブルとはまた違う、翔とアキの新しい物語だった。


カット:同じ頃、ドイツでピアノに向かう柚月、そして日本で演奏を始めるアキと翔。三人が別々の場所で音楽を奏でるシーンが交互に映し出される。


数年後。ドイツのアカデミーでの成果を認められた柚月は、日本でのソロコンサートを開くことになった。その舞台には、アキと翔の姿もあった。三人は久しぶりに再会し、コンサート終了後のステージ袖で言葉を交わす。


アキ

「すごかったじゃん、柚月!ドイツ仕込みの演奏、マジで感動したよ!」


翔も微笑みながら言った。


「さすがだな。けど、俺たちだって負けてないぞ。次は一緒に何かやろうぜ。」


柚月は二人を見つめながら、胸が温かくなるのを感じた。


柚月

「ありがとう。二人がいたから、私、ここまで来られたんだよ。次は絶対に三人で新しい音楽を作ろう。」


その約束の後、三人は再び共に演奏する計画を立てる。それぞれが異なる場所で得た経験を持ち寄り、新しいアンサンブルを作り上げるために。


エピローグ:

数か月後、三人は小さなホールで再会し、「未来の迷宮」というオリジナル曲を披露する。その音楽は、かつての「星の迷宮」とはまた違う、未来への希望に満ちたものだった。


観客の中には佐伯先生の姿もあり、彼女は微笑みながら静かに拍手を送る。


柚月(心の声)

「音楽は一人では作れない。仲間と共に見つけた音、そして新しい挑戦が、これからも私たちを導いてくれる。」


カット:ホールを去る三人の後ろ姿が夕陽に照らされる。それぞれが別々の道を歩みながらも、再び交わる未来を予感させるシーンで物語は幕を閉じる。


エンディングメッセージ

「音楽の旅は続く。それぞれが選んだ道の先に、また新しい光が待っている――。」

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