へその緒切って死ね!
ヤマノカジ
へその緒切って死ね!
いつものようにフレンド+で喋っている時、こんなイベントやってみたくない?なんて話が出てきた。
フレンドが多少興奮気味に
こんなイベントがやりたいと語っていく。
「お前は?」
自分に話題が行く。俺は脳みそを回転させる。
特にやりたいことがないわけではないがあまり浮かばない。
「あ~なんだろ?まぁとりあえずコンセプトがあるbarとかカフェ的な何かやってみたいかな?」
「良いじゃん。例えばどうゆう感じのコンセプトでいくん?」
「うーん…そう言われるとあーんま今は出てこないな…」
「いつかプロフィールにかけると良いよな、
イベント主催者
ってさ」
「そうやなぁ〜」
未来を想像するように俺はなにもない右上を見る。
どこかで聞いたことがある人は想像力を働かせる時に右上をよく見るって。
イベントか〜……
いつかやってみたいな。
話題が出てから数時間、1人が落ちるというのに連鎖して解散する流れになった。
俺の頭にはまだしこりのようにイベント内容を考えていた。
本当に形にするかはわからないがこうやって考えているだけでもなんだか楽しい気分になれる。
…そうだ!!はんなり褐色娘カフェなんてどうだ?
他にあんまこんな聞いたことないしな!
世界は真っ暗。
俺は1人、3時に興奮していた。
だが形にするのはそう簡単じゃなかった。
キャスト、ワールド、最適なイベント時間。
考えれば考えるほど新しい配慮する点が見つかってしまう。
パソコンと何日も睨めっこしている間になんだか半ば諦め気味になっていた。
ロールプレイとかむずくね…?
キャストとかの話もまだついてないし…
方向転換してみるか…?
頭をボリボリと掻きながら俺はパソコンとの睨めっこ加速させていった。
イベントの為に数日を使って脳みその端に一つの疑問が浮かんだ。
これは本当に俺がしたいことなのか?
いや、もちろんしたいことなんだろうけどさ、今、この状態ってなんか夢に追われてる感じがして…。
一旦、距離を置くか…。
イベントという事項を俺は脳の奥の方にしまいこんだ。
少し自由な時間が必要だ。
イベント以外のことを考える時間をな。
遊んでいたらいつの間にかKnown UserからTrusted Userになっていた。
イベントだけがVRCじゃないというのを再度気付かされる期間だった。
日課のように毎日見ているイベントカレンダーをみながらそんなことを考えていたその時だった。
21:30〜22:30
上品褐色娘カフェ
誰もいない静かさがやけに響く。
これはどうゆう事だ?
俺はいつの間にかイベントカレンダーに書いていたのか?
震えるコントローラーを詳細が見えるようにレーザーを合わせる。
主催者は俺と違う。
嫌な考えが寄生虫のように脳を掻き回す。
脳を弄り倒したいのか、異常なほど頭が痒かった。
俺が「ない」と考えていたこの案は他の奴の頭の中にもあった?
しかもそいつは俺よりもそれを素早く形にしている?
俺が半ば諦めていた時に?
俺のワールドにjoin音が鳴り響く。
「ういーす」
「おす」
子鹿のように震えた声を喉から引き上げる。
今は何も喋りかけないでくれ。
「いや〜俺さ今日イベント行こうと思っててさ、わかるかな?あの上品褐色娘カフェって奴なんだけど」
「あ、うん、し、ってるよ?」
「あ!そうなんだ!いや、じゃあさ、俺と一緒に行ってくれるってことは可能…?」
運が悪すぎて笑えてくる。
ため息を吐くほどの体力も残ってない。
「まぁ、うん。いいよ」
「じゃああと数分やからjoin戦争負けないようにするかぁ〜」
「ん、join戦争あるぐらい人気なの?」
「うん、そうだよ?知らないの?某配信者も前行ってたし」
「あぁ、そうなんだ…」
まぁ、いい。join戦争があるなら負けたフリすれば良いだけだ。
行かなくて良いんだ。
足が小刻みに震える。マイクに入らないほどの音の貧乏ゆすり。
人は好奇心の奴隷だ。
俺も例外ではない。
俺の形にできなかった世界がそこには広がっているんだから。
そりゃ行ってみぇだろ。
時間になり火蓋は落とされた。
俺の前には五人くらいしかいないインスタンスがある。
目の前にjoinの文字。
俺は覚悟を決めそのボタンを押す。
その次には何回も聞いたロード音が聞こえていた。
入ってきてしまった。ワールドは和風モチーフな感じで俺が想像していたものに近かった。
インスタンス人数がフルになった。
キャストらしき人物がこちらくる。
何か説明している。その声が痛い。
俺の耳には痛い。
きっと夢に見てなかったらこんな辛い思いをしてなかった。
追われなければ。努力しなければ。
イベント終わりなんだかんだ楽しい思いをした。
だが心の深層には嫉妬や自分の無力感に対する不快な気持ちなどのネガティブな気持ちで満杯だった。
俺のVRCの目標はイベント開催だった。
俺の目標。生きる理由がなくなったのか?
アフターなんか関係なしにすぐワールドを抜けて自分をask meにするまでもなくVRCからログアウトした。
離したヘッドセットを見るのが俺が逃げたみたいで嫌だった。
ベットに倒れ込みスマホを使う。
Xを開き、俺は#上品褐色娘カフェをミュートワードにした。
へその緒を自分で切るような感覚だった。
BSSに近い感覚を感じる。
別に寝取られたわけじゃないけど寝取られた。
自分のほぼ潰れたと行っていい夢がそこには広がっていた。
考えるたびに辛いし死にたくなる。
でも俺にはそれが必要だったんだ。
へその緒で自殺するようなことになろうとも俺はずっと考えてしまう。
まだ夢を追ってしまう。
いっそ、忘れてしまえば楽になれるのに。
へその緒切って死ね! ヤマノカジ @yAMaDied
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