復讐少女のもう一回

ろーるけーき

第一章 地獄の始まり

プロローグ

 ある城の地下深く、そこには数十人の魔術師や神官などが集まっていた。


「おい、これで本当に術式は完成するんだろうな」

「はい、神のお告げはそう示しています」


先程から神官が神のお告げを読み上げ、それを魔術師達が刻んでいくことを繰り返していた。その作業が今しがた終わったらしい。そして、全員で詠唱を唱え始めた。


〝ここから召喚ぶは異界の勇者〟

〝運命を変える希望の勇者〟


詠唱が進んでいくと魔法陣が魔力によって光を帯びてくる。


〝ヒトよ刻め〟

〝運命を変える勇者の来訪を〟


〝主神よ与え給え〟

〝勇者に力の一端を〟


〝魔法よ貪れ〟

〝発動のための生贄を〟


その詠唱と同時に事前に用意された若いヒトの生贄や、さかずきいっぱいに注がれた大量の血液など聞くだけで吐き気を催すような物が魔法陣に粒子となって吸収されていった。


〝2つの世界は今開かれる〟

召喚サモン:英雄ヒーロー


場面は変わり、もう一つの世界のある高校は、今日も変わらない日常を過ごしていた。


「放課後どこ行く?」

「ごめん、今日彼女と予定あって無理だわ」


何気ない会話、この教室にいる全員がそれがいつまでも続くと信じていた。しかし、その日常は終わりを迎える。次の瞬間、教室の床に魔法陣が現れる。


「なにこれ?」

「なんか光ってない?」

「魔法陣…?」


全員が突如床に現れた魔法陣に困惑する。すると、魔法陣は先程までとは比べ物にならない光を放ち、全員が目を瞑る。


「眩しっ!」

「何だ!?」


そして、気がつけば先程まで居た馴染み深い教室ではなく、どことも知らない真っ白な場所に居た。


「な…何だよここ」

「一面真っ白」

「教室に居たはずなのに」

「このパターンはまさか…」


この状況に殆どの生徒が困惑や驚愕の声をあげた。

そこに一つの声が響き渡る。


『静まれ』

「「「「「「!!!!!」」」」」」


その一つの声でさっきまでの騒がしさが嘘のように全員が喋るのをやめた。


『静まったか、では話すとしよう』

『まずはようこそ勇者らよ』

『私は主神ラージェ』

『カルスデッドという世界を支配している神だ』

『ここは私が住み、そしてそなたら勇者に能力を与える場所、神の社サントレリオと言われている』

「勇者?」

「カルスデッド?」

「何だよそれ!」

「これからどうなるの…」

「本当に異世界だ…」


説明が終わるとまた騒がしさが戻る。今の状況に困惑している者、先が分からない未来を考えて悲鳴をあげる者など全員が何かを喋っていた。


『安心したまえ勇者達よ』

『そなたらには私、主神ラージェが特別な能力を与え他にも全面的な支援が約束されている』

「良かった…」

「でも勇者というからには何か役割があるんじゃないか?」


生徒達が安堵の表情を浮かべる中、クラスのリーダー的存在らしき金髪の少年が質問する。


『勘がよいな』

『そうだ、そなたらには一つのとても大きな役目がある』

『それは下界に降りて魔族の王、魔王の討伐だ』

「魔王…」

『そう、魔王だ』

『奴は最初は友好的な関係をヒト達と築いていた』

『しかし突然にヒト達に敵意を向け始めたのだ』

『それによりヒト達が暮らしていた村が魔族の侵攻により滅ぼされ、侵攻を止めようとヒト達は抗ったが力及ばなかった』

『そこで勇者召喚の儀をヒト達が行い、その結果そなたらはここに召喚ばれたというわけだ』

「………成程事情は分かった、しかしその下界の人々が倒せなかった魔王を僕達が倒せるのか?」

『そこは大丈夫だ』

『先程言った通りそなたらには私から特殊な能力を与える他に、そもそもの基礎能力が下界の人々より遥かに高く、下界のヒトの最高地点を悠々と越えられる程の才能を有している』

「分かった、皆協力して下界のヒト達を救おう!」

「「「「「「おー!」」」」」」


話が終わり、不自然な程に早く納得した勇者達は神から特殊能力スキルを貰い、そして下界に降りていった。


場面は戻り、ある城の地下深く。詠唱が終わり刻まれた魔法陣の上には三十人程の人影があった。


「おお……」

「貴方様達が…勇者なのですか?」


一人の神官が金髪の少年に質問する。


「はい!僕達があなた達を救いに来ました!」


この瞬間、世界の歯車は動き出す。

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