第3話 お会計

途方にくれたい所だが、そうも言ってはいられない。財布にある所持金は、いや、財布はない。ポケットに何故か一万円が入っていた。諭吉様々だ。


空腹だ

とりあえず何か食べて考えよう


今いる場所から、行きつけのフレンチに行きたい。タクシーをよべば近い。タクシーを呼び、フレンチを堪能する。フランベされた肉が旨すぎる。店員に見知った顔はいない。当たり前だ。何年前だと思ってるんだ。


テーブルで会計しようとすると、店員が困った顔をする。


「これでは…」


足りないはずがないのに。消費税は5%であの頃は…待てよ。今は物価も上がったのか。


どどど、どうしよう


「お待たせ。ここは俺が」


「え、誰?」


「ありがとうございました」


見知らぬ青年が支払いをカードで済ませ、一万円札は手元に戻してきた。スーツの会社員風で、口角の上がった親しみを感じる顔立ちをしている。整ってはいるが、近寄りがたいという雰囲気はない。淡い茶色の髪と微笑んでいる顔を見ていると目があった。









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【BL】アフターライフ Kanon @harui1883

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