泥棒と女中
土屋正裕
泥棒と女中
泥棒と女中
ある晩、美濃屋に泥棒が入った。泥棒、あちこちさがしたけれども、どこにもお金がないので、台所脇の小部屋でねていたおみつをたたきおこして、
「やい、じぇんこ(お金)はどごさある。おとなしくださねどいのちはねぞ」
おみつの胸ぐらをつかんでゆさぶったので、着物の衿元がはだけて、白いおまんじゅうのようなおっぱいがぷるんとはじけた。おみつはびっくりしたけれども、気丈な娘なので、一芝居打つことにした。
「あら、いやだ。おめさん、どごささわってらんだね」
おみつが泥棒の手をにぎって、わざとおっぱいをもませる。泥棒の指がふれるたびに桜色の乳首がぴんとたって、おみつがせつない声をあげる。つきたてのおもちのようにもちもちしていて、若い娘のあぶらが指にすいつくようで、梅の花のような甘いにおいが泥棒の鼻をくすぐる。
「や、やい、いいすけ、はえぐじぇんこだせ」
「じぇんこなんて、どごさもねじゃ。うそだどおもうのだら、かぁ、ごらん」
おみつが着物の裾をがばっと割って、腰までたくしあげたので、赤い下着から白くむっちりした太ももがこぼれ、くろぐろとゆたかなしげみまでみえて、泥棒、ごくんとのどをならす。
「う、うるせえ。じぇんこださねど……」
「だせ、だせって、そっちからもだしておぐれよ」
おみつがうるんだ目で泥棒をじっとみつめて、泥棒の手をやんわりとにぎる。しっとりすべすべした女の肌と、濃い女の体臭につつまれて、泥棒、もうくらくらしてきた。
「よ、よし。だしたら、じぇんこのありがいうんだぞ」
泥棒、もうたまらずにいきりたった竿をひっぱりだすと、おみつが両手でつつみこむようにして、竿の先っぽから根元にかけて、ぐぐーっとしごいていく。白魚のようなほっそりした指で亀の頭をこすったり、雁の首の裏をくすぐったりする。泥棒、おみつの指のうごきに身もこころもとろけそうになり、おもわずあえぎをつよめながら、ぶるぶるっと身ぶるいをくりかえす。
「おなごの手はやわらがぐって、あずましい(気持ちいい)のう」
おみつがニコニコしながら、大事なものをかわいがってくれるので、泥棒もすっかり安心して、そのままおみつが極楽にいざなってくれるとおもっていたら、
「じぇんこはこごさあるぞ。どろぼうだー、どろぼうだー」
それまで泥棒の竿をにぎって、せっせと情を催していたおみつの手が、いきなり竿の下の金玉をぎゅっとつかんだので、泥棒もびっくりして腰をぬかしてしまい、すかさずおみつが泥棒の上に馬乗りになってつかまえてしまった。
そこへ店の若い衆がドヤドヤとかけこんできて、泥棒をとりおさえると、おみつは泥棒のひざの上で色白の頬をほんのり赤くそめながら、おしりでぎっちりと泥棒のひざ小僧をおさえつけて、両手でしっかりと金玉をにぎりしめ、泥棒はおみつのおしりの下で見事な竿に太い青筋をたてて、びくん、びくんとふるわせながら、額にあぶら汗をじっとりとうかべて、はあ、はあ、と肩で息をしていたそうな。
翌朝。美濃屋の主人は大よろこびのホクホク顔。
「おみづが泥棒の金玉にぎってけだおかげで、お
というので、おみつは着物の袖で口元をおおって、
「わ(私)、泥棒さんが逃げねように、一生げんめい玉にぎったんだ」
「えれえぞ。ながながでぎるごどでね」
「すたども(だけど)……」
おみつは恥ずかしそうに腰をくねらせながら、
「わ、玉はにぎったんだども、まだ竿はじっくりどにぎってねんだ。あったに立派なものにぎったら、もう、せづなくって……もっとにぎったり、くわえだり、あったごどや、こったごども、してみでえし、いやらしいごどかんがえでらど、このからだがほでって、どうにもおぢづがなくなってまります……」
※会話は南部弁(青森県東部の方言)です。
泥棒と女中 土屋正裕 @tsuchiyamasahiro
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