第25話:初めてのお仕事

お久しぶりです、テストだったり色々と忙しいことが多くてなかなかこのシリーズの続きを書けていませんでした

続きが書き上がり次第、投稿を再開していこうと思いますのでよろしくお願いします

__________



「さーてシェイル!初めてのお仕事だよ〜!」


迷宮に潜るために装備を整えようと屋敷に戻ってきた僕を待っていたのはニコニコ笑顔のレーレーンだった。

手には依頼書、レーレーンと依頼を受けるということをすっかり忘れていた。

発生したイベント内容が朝早くから濃すぎたからかもしれない。

迷宮に潜れるのは後になりそうだ。


「内容は?」


「王都の下水道調査だよ!」


「貧乏くじじゃん、迷宮に潜らせていただきます」


「1発目から職務放棄はどうなのよ」


素晴らしい速度でつっこまれてしまった。

というかレーレーンは下水道調査だなんて嫌ではないのだろうか。

女子の方が嫌がりそうな気もするのだが。


「あ、でも迷宮に潜るぐらいの装備してもらうからね」


「なんでだ?下水道の調査ならそんな警戒しなくてもいいんじゃないのか?」


下水道ならば接敵するとしても盗人ぐらいなものだろう。

正直そこらの盗人なら剣がなくても制圧は簡単だ。

というかそれぐらいできなければこのギルドに相応しくないだろう。


レーレーンは僕の問いにニヤリと笑って答えた。


「どうやら下水道の一部が迷宮化してるっぽいんだよね」


「………それって大問題じゃ?」


「そ、だから私たちの出番ってわけ」


レーレーンから依頼書を受け取る、王都の居住地区の下水道にて迷宮化の疑いがあるようだ。

一般の王国民が暮らしている居住地区の下水道が迷宮となってしまえば、確実に甚大な被害が報告されることになるだろう。

かといって住民に危険が迫っていることを話してしまえば確実に大騒ぎになりこれまた大変なことになるだろう。

秘密裏に下水道の調査を進めなければならないわけだが、王国騎士団や魔法師団が動けば確実に勘付いてしまう者もいるだろう。

そこで表向きは強豪ギルドである“デモンズユナイテッド”の出番というわけだ。


「ひとつ聞いてもいいかレーレーン」


「どうしたの?」


「仮に下水道が迷宮化していたとして、どうやって迷宮化を止めるんだ?」


既に迷宮化が進行していた場合、下水道はたちまち最前線となるわけだ。

魔物がウジャウジャと湧き出てくる迷宮を迷宮でなくするだなんて聞いたことも考えたことすらなかった。


「迷宮化が完全に終わってたら戻せないんだけどね、まだ途中だったら迷宮化の原因を取り除けば自然と戻るんだよ」


「なるほどな、だから今回はその原因を調査して完全に迷宮化する前に取り除けばいいってわけだ」


「そういうこと」


初仕事からかなり重大な任務を振り分けてくるじゃないか。

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる上司マナさんが脳裏によぎった、あの人なら間違いなくそういう反応してるだろう。


「私も全力でサポートするから!2人で頑張ろう!」


レーレーンがにっこりと可愛らしい笑顔を浮かべて拳を突き出してくる、どこかの誰かとは大違いな純粋な笑顔だった。

同い年の先輩の激励に応えないなんて選択肢を僕を持ち合わせていなかった。


「うん、頑張ろう」


少し控えめに突き出された拳にコツンと僕の拳を突き合わせる、なんだか彼女に対してより親近感を感じた。


「じゃあまずはクエスのとこに行こっか」


これから下水道に行くというのにクエスさんのところに行くのは少々不自然な気がした。

レーレーンのことだ、何か理由があるのは間違いないのだが。


「なんでクエスさんのとこに?」


「シェイルさ、今までの装備で調査に行こうとしてたでしょ?」


「なんだ?ダメなのか?」


それが当たり前じゃないのかと、彼女に疑問を呈した。

僕としては使い慣れた装備の方が違和感なく動けるし魔物への対応もやりやすいと思う、ただでさえまだ使い慣れたとは言い難い漆黒のフォルネウスを使うのだ、装備ぐらいは今までのものを使いたい。


そんなことを考えてる僕に対してレーレーンはどこかの誰かを彷彿とさせる笑みを浮かべた。


「シェイルはもうギルドの一員でしょ?ならギルドを象徴するエンブレムを身につけなくちゃ!」


確かに、今までの装備だと何も知らない人から見れば僕はどこに所属しているのかわからない身元不明の探究者だ。

しかし今の僕には“デモンズユナイテッド”という立派な身元があるのだ、それを示さなくてどうするのだ。


「まだ自覚が足りてなかったかな、ギルドに入ったことへの」


思わずふっと苦笑がこぼれてしまった。

どうやら王国一の派閥、引いては王宮を影から守る“ソロモン”の一員になったという自覚がどうやら足りていなかったようだ。


「うちのエンブレムを見せておけば色々と融通が利くからね、つけておいて損はないよ」


「そりゃあ王国随一の大派閥だもんな、市民からの人気も随一だろうな」


一般的に世間からの探究者への印象はあまりいいものとは言えないだろう。

なにせ野蛮だし素行がいいとはお世辞にも言えないし、ギルドだって一般市民が生活しているところからは少し離れているところに密集しているものだ。

そんな中でこのデモンズユナイテッドのギルドは住宅街からは近いところに位置している。

なんでも何代も前のギルドマスターが「我々には市民を守る義務があるのに、遠い場所に拠点を構えるなど滑稽極まりない」とか言って移動させたらしい。

そんなこともあって、デモンズユナイテッドに対する世間の評価は『1番強くて優しいギルド』、『騎士団より頼りになるギルド』など友好的に見られている。


「お陰様でこの間もおじさんにおまけしてもらっちゃったしね」


「ギリギリダメな使い方じゃないかそれ」


「向こうのご好意でもらってるからセーフだよ」


それなら仕方あるまい。

正直に言ってしまえば僕もその恩恵を授かってその日を生きるのでギリギリだったので安く食事を手に入れられるというメリットが大きすぎると考えたのだ。

まあ、ここに入ったからにはそんな心配は皆無なのだろうが。


「ほら行くよ!早くシェイルの装備見たいし!」


「そんなに急いだって装備は逃げないぞー」


無意味にも急ぐレーレーンの後を追いかけて、階段を駆け上りクエスさんの居る部屋に走って行った。

先を行くレーレーンの横顔はとても嬉しそうだった。

クエスさんから装備を受け取るのは彼女ではなく僕だというのに、僕なんかよりよっぽど嬉しそうな笑顔だった。



__________


読んでいただきありがとうございます!


よろしければブックマークや高評価もお願いします!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪魔義賊〜命の恩人を追いかけて王宮義賊団へ〜 GOA2nd @GOA2nd

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ