第17話

観察を続けていたら辺りはすっかり暗くなっていました。


ここからは、この生き物を『火起こしさん』と呼びます。


火起こしさんは、火に当たりながら熱した水を飲んでいます。


頭にしか毛が生えていないので寒がりなのかも知れません。


その熱した水からは嗅いだ事のない匂いがしました。


焦げたような匂いだけど、何だか落ち着く不思議な匂い。


何かを入れているんでしょうか?


(気になるです)


この匂いを嗅いだからか、火起こしさんも今は落ち着いています。


ちょっと前までは、両手を空に掲げたり、急に何かを叫んだり、色々な物を持っては、それをジッと見つめたりしていました。


何かの儀式だったのでしょうか?


何をしていたのかは、結局よく分からないままです。


火起こしさんも、この森に来て混乱していたのかも知れません。


何だか寂しそうにも見えます。


熱した水を飲み終えると、火起こしさんは小さな袋を取り出しました。


中身の見える不思議な袋です。


その袋から木の皮の様な物を出すと火に当てて炙り始めました。


(木の皮を食べるです? でも……)


すごく良い匂いが漂ってきました。


匂いだけで木の皮ではないのが分かります。


獣の匂いと煙の匂いが混ざったような、これまた不思議な匂い。


その匂いが鼻腔をくすぐる度に、ボクのお腹の虫さんがぐぅ〜と鳴きます。


(お腹空いたです……)


この森に来てから赤い実しか食べてません。


お腹が空くのも当然です。


観察を続けたいですが空腹には勝てません。


ボクはその場を後にし、食べ物を探しに行ったのです。

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異世界サバイバー 山下清太郎 @Seitarou-Yamashita

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