第3話
「さて、本日ご用意いたしましたのはオムライスを作ろうとして危うく家を全焼させかけた佐藤有紗さんのソテーになります 」
「いやぁーっ、食べないでごめんって、私が悪かったから!だからその熱々に沸騰してるドラム缶風呂の中に私を入れようとしないで!それはもう熱湯だから!私茹で鶏になっちゃう! 」
「いつから自分が茹で鶏になると錯覚していた? 」
「え? 」
「貴様は最初から茹で豚だ馬鹿め! 」
「いやぁ、私はまだそんなに太ってない! 」
「安心しろ、豚さんの体脂肪率は3パーセントだ 」
「つまり......? 」
「お前のほうがふとっ____ 」
「いやぁぁぁぁぁぁ 」
はい、冗談はさておき。
「被告人、何か弁明はありますか? 」
「間違っているのはこの世界の方だと思います! 」
「判決、有罪三回ひねりの終身刑。高得点です 」
「な”ん”で” 」
間違ってるのが世界じゃなくてお前だからだ。
「なんでカップラーメンからオムライスに一気に飛躍したんだ......? 」
「大体焼けばなんでも食えるってこの前のサバイバル系のテレビ番組でやってた! 」
「なんで俺の家でサバイバルしなくちゃならんのだ 」
「え......なんで? 」
「俺が聞きたいよ 」
もはやお前と絡むと毎日がサバイバルである。
「はぁ......じゃあオムライス作るか 」
「え、もえもえきゅんしてくれるの? 」
「どうしてそうなった? 」
俺に社会的に死ねと?
そうなる前にお前の頭をもえもえきゅん(物理)してやるよ。
「そんなことはさておき、さっそく作っていくぞ? 」
「もえもえきゅんは? 」
「作 っ て い く ぞ ? 」
圧力をかけていきます。
「まずは玉ねぎの皮を剥いてみじん切りにします 」
「えー一生玉ねぎ剥いていようよ 」
「日が暮れるわ 」
もう暮れてるけど。
ぺりぺりと玉ねぎの茶色い部分を剥いて、みじん切りにする。
有紗の目から涙が垂れているが、多分あれは水だな、うん。
「 ピーマンとかにんじんとかベーコンも同じ要領でみじん切りにしていきます 」
「きゅうりは?彩で加えようよ 」
「そうだね、君の口をきゅうりで彩ってあげよう 」
「やっぱり限度って大事だよね 」
そうだな。
わかったからとりあえずきゅうりボリボリ食べるのやめてね?
サラダで使うから。
「切ったもの全部炒めて炊いておいた米と一緒に炒めてケチャップをぶち込みます 」
「なんか雑じゃない? 」
「いやぁ、そんな。有紗ほどではないよ 」
「今私のことを貶したね、今のはさすがにわかったよ 」
「安心しろ、もうずっと貶してる 」
むしろやっと気が付いたのか、とすら思ってる。
「そんでもって牛乳と卵で作った卵液で卵の部分を作って皿に盛ったチキンライスにてぇい!と乗せます 」
てぇい!
どん、といい感じでチキンライスの上に卵がホールインワンしました。
「はい、無事に乗りました。オムライスです 」
「やっぱ雑だよね 」
「否定はしない 」
男料理なんだよ俺の料理は。
料理なんて雑でなんぼである。
「...... 」
「...... 」
「それで? 」
「え? 」
「続きは? 」
「え?ないけど 」
「ないの!? 」
「ないだろ、ほとんどできてるし 」
「もえもえきゅんは!?もえもえきゅん! 」
「お前まだあきらめてなかったのかよ!? 」
「えーやだーもえもえきゅんみたいー 」
そんな棒読みで駄々こねられても......
「はぁー、一回だけだぞ? 」
「え、いいの? 」
「はぁ......おいしくなぁれ、もえもえ
ぎ”ゅ”ん”っ”! 」
べちゃ
「...... 」
「...... 」
「二個ほど聞きたいんだけど、いいかな? 」
「どうぞ 」
「なんで最後ちょっと濁ったの!? 」
「いいか、有紗。かの悪魔の呪文はな、可憐な女性が詠唱することでしか効果を発揮しないんだ。それを俺のような男が読み上げてみろ、いったいどこの大悪魔に連れ去られるかわかったもんじゃない。そこで俺は考えた。
そうだ、まともに読み上げなければいいと 」
「まともな思考でまともじゃないこと言い始めた!? 」
「それが一個目の回答だ。それで?二個目は? 」
「そう、そっちもだけど二個目もよ。
なんでチャハーンって書いたの? 」
「はるか古の時代、最強と呼ばれた海軍国家が存在した。かの帝国は常に周りを敵国に囲まれた厳しい地形だったが 」
「え? 」
「俺はその英雄、チンギス・チャハーンの名を入れただけに過ぎない 」
「チンギス・ハンだよね?しかもその国モンゴルだよね? 」
ちなみにモンゴルに海軍はないし、海賊もいない。
ひとつなぎのひほうもなければ、海賊王になると宣う少年もいない。
そもそも海がないからだ。
「普通に悪魔の呪文を唱えるのは死んでも嫌だったからな。精一杯ボケてみた 」
「ボケっちゃったかぁ......でもなんでもえもえきゅんのことを悪魔の呪文って呼ぶの? 」
「
「なんでそんなひどいこと言うの!? 」
「そうだな、じゃあ
「やめて、それは世界が滅んじゃう 」
失礼な、この家は天空の城でもないし空から女の子は降ってこないし目が痛いと叫ぶ大佐もいない。
かろうじてトーストに目玉焼きをのっけた朝ごはんが出てくるくらいである。
さとうとしおの日常 ひるね @hirune_alice
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。さとうとしおの日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
脳内とーく/ひるね
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます