第2話

「前にも言っただろ、現実でどらちゃんスタイルをして押し入れに入ると大抵ろくなことにならない 」


「むぅ......確かに今回は翔が正しいよ 」


「いやいつだって俺が正しいけどな? 」



 目の前に有紗を座らせ、説教をする。

 ちなみに押し入れの中身は再度詰め込みました。



「でもね、一ついいかな 」


「なんだ? 」


「なんで私は今お布団で簀巻きにされてるの!? 」



 そう、今の有紗は布団でぐるぐる巻きの状態、通称簀巻きにされている。

 されてるとはいっても、やったのは俺だけど。



「だってお前を放っておくと絶対何かやらかすだろ 」


「私そんなマグロみたいな生態してないよ 」


「食べれるだけマグロのほうが有用だな 」


「危うく食べられるところだった!? 」



 失礼な、いくら何でも人間は食べないぞ?



「それにさすがに私だってうら若き乙女でしてね、この状況はいささか女子力に欠けるといいますか...... 」


「これは驚いた、生活力皆無の有紗に女子力があったとは 」


「女子力、それは女子のみに宿る力......男をしとめるアルティメットパワー! 」


「なるほど、じゃあお前は一生独身だな 」


「な”ん”で”そ”ん”な”こ”と”い”う”の”」



 貴様に女子力がないからである。

 むしろお前にあるのは女子力じゃなくて女死力だろう。



「とにかくお前は放っておいたら何をしでかすかわからないからな。ここで簀巻きにされておとなしくしてろ 」


「ご、ごめん翔くん 」


「......今度は何だ? 」



 有紗は頬を赤らめながらぽつりとつぶやいた。



「ちょっと、お花を摘みたいなぁって 」











「......却下 」


「ねえちょっと却下ってなに!?私の乙女としての尊厳が警戒アラート発令中なんですけど?ねえちょっと、あ、ほら今聞こえたでしょ?某ミサイルが飛んできたときのアラートなんて比じゃないよ?うぃーんうぃーんうぃーん!ほら、もう刻限はそこまで迫ってきてるんだよ?ほら、早く私を自由にしよう?釈放しよう?一時的でもいいから。そうすれば世界の半分とはいかないけど客間の半分を翔にあげるよ?だから翔、ほら、はやくこの縄を解いて?じゃないとほら、なんかいかがわしい小説みたいになっちゃうじゃん?だからほら、あっまってもうそこまできてる!だからはやく!はやくはやくハリーハリー!じゃないと私ア○カバン送りになっちゃう____ 」


「もうわかったから早くいってこい! 」



 なお、お花は無事摘めたようです。











「間に合いました 」


「言わんでいい 」



 トイレから帰ってくるなり第一声がこれである。

 恥じらいはないのだろうか。

 多分トイレに流してきたのだろう。



「無事です 」


「何がだよ 」



 我が家のトイレはダイヤモンドより頑丈とご近所で評判である。

 理由は知らん。



「もしかして私やばい? 」


「大丈夫だ、安心しろ 」


「翔くん......! 」


「ここにくる以前からずっとやばいぞ 」



 むしろ今までの行動を振り返ってなんで大丈夫と思ったのか。

 その方が疑問である。



「そもそも翔くんが私を簀巻きにしたのがいけないのではないですか? 」


「簀巻きにされるようなことした有紗の方が悪いのでは? 」


「やっぱこの話やめにしようか 」


「知らんがな 」



 そもそもお前が始めた物語だろうが。



「それで、結局泊めてくれるってことでいいのよね? 」


「許可を出したことを死ぬほど後悔してる 」


「そんなに!? 」


「だってお前、うちに来てから問題行動しかしてないじゃん 」


「いやぁ~てれるなぁ 」



 こっちは貶してるんだけどな。

 と、有紗が何やら持ってきた手荷物をガサゴソとあさりだした。



「なにしてるんだ? 」


「え?料理をしようと思って 」











「ごめん、聞き間違いだよな。もう一回言ってくれ 」


「いやだから、料理をしようと思って 」



 リョウリヲシヨウトオモッテ???

 リョウリッテナニゴダッケ???

 ココハドコワタシハダレ???

 アーレー???






 はっ!?



「いけない、あまりに思いがけないワードに思わず思考が宇宙猫に...... 」


「ちょっとさっきから失礼過ぎない!? 」



 今までにいくつもの産業廃棄物を生み出してきたマッドサイエンティストが何を言うか。



「まぁとにかく、やってみるから黙って見ててよ 」


「うぅん......カップラーメンが原形を保つっようになってきたし、そろそろ大丈夫か......? 」



 ひとまず、様子を見ることにする。



「えーでは、本日の献立はオムライスです 」


「いきなりどぎついのいったな 」



 オムライスって初心者には作るの難しくなかったか?



「えー、はい。ここに材料がそろっています 」


「まぁ、必要な材料はそろってるな 」


「で、まずはここにある玉ねぎを一生剝きます 」



 むきむき



「で、ピーマンでキャッチボールをします 」



 ぐちゃ



「人参をすりおろします 」



 しゃりしゃり



「あといろどりできゅうりを食べます 」



 しゃくしゃく



「最後にこいつらをまとめて炒めます 」



 じゅわ~



「まだです、まだ炒めます 」



 じゅ、じゅわ~?



「こんなものではありません、まだまだ炒めます 」



 じゅわ......



「もうそろそろかな......? 」



 コゲッ!



「はい、できました!オムライスです! 」


「......いろいろ聞きたいところはあるけどさぁ











 米と卵、どこにやった......!? 」




「君のような勘のいいガキは嫌いだよ......! 」


「こんなのがオムライスなわけあるかぁっ!! 」

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