It's nothing ~ 実は、ここにあるのですが…… ~
ぼんびゅくすもりー
現実と……俺の中のプラネタリウム
「…――資本主義も社会主義も共産主義も……理論ばかりが先走った卓上の空論。体現できなければ、体裁ばかりとりつくろった奴隷制になるよな……」
都心では、なかなか
むなしくなった俺は、自論を力説する。
中学の時つき合って、違う高校に入ったところで自然消滅……最近、よりを戻した彼女の前である。
意識しながら、さりげなくもニヒルに。
「不特定多数を通貨という名の数字でからめとって縛り。がんじがらめにして、思うように
誰にも話したことのない内容だったが、自分の
「
「貨幣経済と主義主張をいっしょくたに考えちゃだめでしょ。
「俺は、株式なんて嫌いだ」
なぜ、そこで笑う!?
永らく覚えることもなかった感覚だが、弱点をつかれる予感がした。
「投資は悪じゃないよ。たいていの人間は貯蓄感覚、
重ねて〝ぎょっ〟とした俺が、となりを凝視した。
そこで視線が出会い、彼女の
俺が投資に手を出したことはもとより。失敗したことは、誰にも話してなかったはずだが……。
「……なんでそれ、知ってるんだ?」
「どこの銘柄がいいか探り入れたでしょ?
「おまえはあそこの証券、持ってないのか?」
「あの事業には興味ないもの。手を出してないよ。それで、いくら投資したの?」
「二万……」
「せこいねぇ」
「うるせぇやい」
「でもまぁ、
「もう足洗った」
「あほだね」
「ほっとけ」
「
思いもしなかったタイミングの告白に、どきりとする。
「あたしは身内に破産者が出たから、なりたいものになれなかったけど。だからこそ、その
それは重畳……じゃない!
いかん。さっきのは恋愛的な〝好き〟ではないかもしれない。
いいように振りまわされているぞ、しっかり舵をとれ、俺!
「〝夢は大きく〟といわれて育ったから、それ追いかけている時は必死になれても、ままならない社会情勢まのあたりにすると絶望しちゃいそうになったりする。けどさ…。ね、おぼえてる? ――〝サバイバルな古代が良かったとはかぎらない。失うものもあれば、そこに生みだされた幸運もある。資本の流れが生みだした技術、流れがあって、それも人が望んだ夢の実現化で。うまくコントロールできなくて、ぐっちゃぐちゃになってしまっているけど、むかしは救われなかったものが救われたり、娯楽芸術が栄えたり、観光
そういえば、そんなことも
それにしても、こんな場面で自身の精神的な老いを思い知らされるとは……。
それも、そこそこ平穏だったからこそで……恵まれていたんだな…。
「…だけど、やっぱり。約束のものは欲しいかな?」
俺、なにかこいつと約束したっけ?
「約束したよね、プラネタリウム……。〝俺の中のプラネタリウム。めくるめくような
うう、それは嬉しいんだが恥ずかしいし怖い。
だからまだ、It's nothing……
It's nothing ~ 実は、ここにあるのですが…… ~ ぼんびゅくすもりー @Bom_mori
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