2花目 ストーカー兼《親友》様
「アンジュ!おはよう~!」
学園の正門あたりでライラックはいつも声をかけてくる。
「…おはようライラック。
寮生じゃないのに今日もはやいわね。」
「まだまだ学園のことも知りたいし、
それに途中から入った分頑張らないとね!」
「そう、努力しようとするのは良いことだと思うわ。
でも登校する時間まで私に合わせなくても
いいのよ。今日も寮の前から付いてきてたでしょう?」
あの悪魔のような笑みを浮かべた彼女と契約を
交わしてから1週間、
私たちは基本学内では一緒に行動するようになっていた。
数日は分かっていなかったが朝、私が寮から出てくるのを隠れて待って、そしてちょうど学園についた頃にいつも声をかけてきているらしい。
ライラックは編入した次の日から学園の人々に可愛らしい笑顔を見事に振りまいている。
同学年の間では「かわいい」と噂になっていて、他のクラスから彼女を見に来る生徒も少なくなかった。
一生徒として学園にも無事に馴染んできているようで、私は委員長としての仕事はかなり全うできたのではないかと強く感じる。
これでこのまま新しい友人とともに
私のもとから離れてハッピーエンド♪
とはならないのが虚しいところだ。
「‥だ、だって‥心の準備をしておかないと
喋ること考えちゃって、緊張しちゃうし…」
頬を赤らめて、彼女はそんな事を言う。
この子は変なところで恥ずかしがることが多いということにもこの1週間で気づいた。
あんなに意気揚々と私を脅してきていたのにたまにその見た目にぴったりな可愛らしさを出してくるから私も彼女の思考が読みきれなくて非常に困る。
「なんて
いまの私の表情、ひょっとして可愛かった??」
しおらしいと思ったらまたこの子は相変わらず
二人きりの時にしか見せない優位に立っていることが嬉しくて仕方がないとでも言うようなニヤッとした笑顔を浮かべる。
可愛いなんて一瞬でも思った時間を返してほしい。
「…そう思った時間を返してほしいわ。」
「素直じゃないよね!アンジュは~」
こっちのセリフだ。
担任の善意で恐ろしいことに席は隣同士、
契約を守るためお昼や移動教室も一緒
なんとあっという間に1週間で
仲良しの女の子たちが誕生していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
突然だが、作戦会議をしたいと思う。
…いや、私以外に会議に参加する人は居ないけども。
いまの状況をどうやって解決するべきかということについて真剣に考えてみる。
ライラックは偶然にもあの裏通りで私と出逢いその私を好きになってしまったから私を親友という立場に置いた。
過去に起きたことはどうしようもないが、全ては私への謎の執着が原因であることは間違いない。
だったら、
私以外の誰かに彼女の好意を向けてしまえば、
私のもとから離れるんじゃないか?
彼女は馴染んできたとはいえ、やっぱり未だにしっかり目立っている。それに彼女の女の子らしい可愛い見た目は同年代の男子生徒にとってはさらに魅力的に映るだろう。
親友ならば、彼女の恋愛を応援するのは当然の行動だ。
ライラックとの契約の範囲内と言える。
それに私はただ見た目が整っているだけで、
私の中身はつまらないし、
特に才能があるわけでもない。
ライラックが私と親しくするメリットは学園生活が過ごしやすくなるということ以外皆無である。
それに、こんなつまらない女に
ライラックが飽きてしまうのも正直時間の問題だ。
だからこの行動はお互いにメリットがあることだ。
「それにしてもなんであの子は私が好きなんだろう、
見た目が好みなのかな‥、見る目ないわね。」
張り付いた笑顔と偽物の感情表現しか持っていない
私は、鏡で見てみるととても貧相で
みじめなものである。
だから、私はライラックの恋愛を全力で助けようと
《親友》として決意した。
親友になるだけじゃ気が済まないみたいです〜乙女ゲーの転生ヒロインは前世から大好きだった案内役兼親友の最大の弱みを掴みました〜 @shionn-0125
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