カンニングを始めた理由。

簡単だ。「簡単に点数が取れるから」だ。

これ以外に理由はない。


カンニングをした当時、友人から

「俺もカンニングのスリルを味わってみてぇな」なんて言われたことがあった。


単刀直入にいうと、スリルなんてものは一切無かった。


いや、無くなったというのが正しいだろう。

最初は確かにバレた時に受ける処罰に怯えながら、恐る恐るカンニングしていた。


だがカンニングを続けていくうち、私の考えは麻痺していったのだ。

「バレないなら怯える必要なんてないのでは?」と考えるようになったのである。


バレる直前の私にとっては、カンニングはもう「薬物」のようなものに近かったのかもしれない。


「している時は何とも思わないが、していないと不安になる。」


私にとってカンニングとはそういう物になってしまっていたのだ。



もちろん、私も最初からずっとカンニングに頼るような人間ではなかった。


自分で言うのも何なのだが、小中学生の私は「良い」人間だったと思う。


小学生の頃、私が受けたテストは全て70点以上であり、委員会(中高でいう生徒会)に所属して学校の行事の準備には積極的に参加していた。


中学生に上がると地域の生徒が一つの学校に集まるため人間関係もさらに広がり、それに伴いコミュニケーション能力も上昇していった。


高校入試の内申点を上げるべく生徒会にも所属し、定期テストも最終的に全ての教科の点数を80点以上にすることができた。


今でも、中学三年生が人生で1番輝いていたと思う。


優秀ではなかったが、「良い」人間だった。


そうでないといけなかった。








そうでなければ、父と母が離れていってしまうと思っていたから。

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俺の人生は「カンニング」から始まった。 アルメリア @Almeria0710

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