最終話 新聞のコラム

   新聞のコラム欄


 病院内から鮫島(看護婦)の弾くショパンの「ポロネーズ(英雄)」が聞こえて来る。


玄関に軍用トラックが滑りこむ。

太ったMPが助手席から振り向き、後部荷台の九人を見て、


 「Hey Jap ! Get off .」


運転席の村瀬巡査がMPの態度に激怒する。


 「No ! Yankee , Shut up ! They're a Japanese hero .」


村瀬巡査の激怒にMPは驚く。

MPは村瀬巡査を見て、


 「・・・Oh , Sorry .」


村瀬巡査は運転席を降りて、急いで後部荷台の幌を開け、


 「大(ダイ)先生ッ! お疲れ様でした。皆さん御苦労様でした。家に着きました」


内村(院長)と朝倉(看護婦)が周明氏以下八人を出迎える。

西丸(医師)と畑(婦長)が最初に後部荷台から降りて、急いで内村と朝倉の横に並ぶ。

内村、西丸、畑、朝倉の四人が玄関に並ぶ。 

鮫島も急いで玄関に出て来て、朝倉の隣に並ぶ。


『七匹の蟻』がトラックの荷台から降りて来る。


内村が七匹を見てゆっくり拍手(ハクシュ)する。

それを見て西丸、畑、朝倉、鮫島が一斉に拍手し始める。

堀田氏を先頭に、七匹が堂々と「松澤精神病院」の中に入って行く。首藤操六氏(元陸軍副参謀長)だけが敬礼をしながら院内に入る。


 松澤病院院長室で内村がソファーに座り、コーヒーを飲みながら朝刊を捲る。

『新聞のコラム欄』に小さく、


 マッカーサーを動かした日本の『七匹の蟻』達。病を越えた元兵士達の直訴』


と小さく記してある。


           おわり

テロップには、


 大川周明

入院中、コーランを全訳。裁判終了後退院、山形県の実家で農業。農業思想家として普及に努める。

一九五七年一二月二四日(七一歳没)。


 肥田春充

「日本の使命」「一分間強健法」を著作。人類の将来を憂い、四九日間の断食挑戦を比叡山の坊さんと競い合い、十日で亡くなる。一九五六年八月二四日(没)。


 堀田善衛

作家。多くの著書を残し、一九七四年に結成された日本アジア・アフリカ作家会議で、初代の事務局長をつとめる。また、「べ平連」発足の呼びかけた人でもあり政治的には戦後日本を代表する進歩派知識人である。一九九八年九月五日(没)。


 杉浦誠一

生まれ故郷である種子島に戻り、高等学校(美術)の教員として生徒達に慕われつつ一九六五年一二月八日『一本の指』のデッサン中に(没)。


 首藤操六

不明 (ミャンマーのミンジャン村の村長に成ったと云う噂もある) 生死不明。


 岡田 滋

米国テキサス州ダラス近郊の牧場にてローハイドを経て、「OKADA RNCHER」を経営。

二〇一三年四月一日、落馬して(没)。


 山田欣五郎

「川崎のママ」として同性愛者の駆け込み寺を創設。現在 「ひとみ」 と改名。カミングアウトし武蔵小杉駅近くに会員制クラブを経営。現在九二歳で孫(養子)十五人。健在らしい。


  この作品は完全なフイクションであります。


 作品は、著作権を放棄したものではありません。


 参 考

登場人物(イメージキャスト)


 赤月毘法(益岡 徹)

東京大学病院精神科医・元満州七三一石井部隊・ハルピン・鹿児島出身


 内村祐之(中井貴一)

松澤病院院長・周明氏の主治医・東京大学名誉教授・キリスト教思想家内村鑑三の息子・プロ野球コミッショナー・穏健派


 西丸文武(生瀬勝久)

周明氏の担当医・元軍医・赤月毘法と帝大学医学部の同期・友人・インド哲学も学ぶ・直情派


 畑 千尋(沢松奈生子)

看護婦長・元従軍看護婦・新潟県出身


 鮫島昭子(柴田理絵)

看護婦・東棟担当・元従軍看護婦沖縄戦線・夫は東京帝大の志願兵・硫黄島にて栗林大将の副参謀で戦死・鹿児島県出身


 朝倉みち子(小林聡子)

看護婦・給食関係担当・元従軍看護婦・岩手県出身


 肥田春充(大地康雄の様な方)

一〇一号室・放浪者・周明氏の親友・元陸海軍体育指導研修官・肥田式強健術・現無職山梨県出身


 大川周明(役所広司)

一〇二号室・梅毒性精神疾患・A級戦犯・思想家・山形県酒田出身


 堀田善衛(痩せた北村一輝)

一〇三号室・妄想疾患・作家。多くの著書を残し、一九七四年に結成された日本アジア・アフリカ作家会議で、初代の事務局長をつとめる。また、「べ平連」発足の呼びかけた人でもあり政治的には戦後日本を代表する進歩派知識人でる・面白い興味の持てる人である・慶応卒・富山県出身。


 杉浦誠一(イッセー尾形)

一〇四号室・分裂疾患・元従軍画家・・家族や家をすべて失う・鹿児島県出身。


 首藤操六(遠藤憲一)

一〇五号室・統合失調疾患・元参謀副長(中佐)・元ビルマ方面総司令部参謀部次長・長野県出身


 岡田 滋(中村獅童)

一〇六号室・戦争疾患・学徒兵(九州帝大)で招集・元准尉・鹿児島県出身


 山田欽五郎(柄元 明)

一〇七号室・性同一性疾患(オカマ)・元海軍一等兵曹・川崎山田組の息子・東京都川崎出身


 村瀬源太郎(石倉三郎)

GHQ配属の日本警察巡査・元陸軍上等兵ビルマ戦線・生粋の江戸っ子気質・東京都台東区出身


 川口竜司(稲川淳二)

日劇衣裳部主任・元浅草国際劇場ふ衣裳部・元陸軍上等兵・村瀬源太郎の戦友・五人の子持ち(シングルファザー)・墨田区両国出身


 小木曽勇作(香川照之)

丸の内警察署警視正・元陸軍大尉・新潟県出身


ヘレン・アンドリュー(ブライス・ダナー)

ナンシー・アサダ  (エミー・アダムス)

スミス       (アンセル・エルゴート)

マッカーサー    (リチャード・ギア)


   ご覧いただきありがとうございました。


       原案作者 サルバドール・土屋(土屋寛文)

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戦後80周年記念『ドラマ・松澤病院のA級戦犯』縦書き 土屋寛文(サルバドール・土屋) @honkakubow

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