第45話 丸の内警察署 小木曽勇作警視正

   丸の内警察署


 丸の内警察署(取調室)。

ドアーの横に警察官とMPが一人ずつ立つ。

中央の机には取り調べ官『小木曽勇作警視正』が座って居る。

七人は壁の前に直立不動で整列する。

並んだ七人の両脇には警官とMPが立つ。

小木曽は椅子を立ち周明氏の側(ソバ)に来て、キツく睨む。

そして厳しい口調で、


 「バカ者ッ! ・・・そこに座れ」


周明氏を取り調べ机の椅子に座らせる。

小木曽も席に着き、周明氏と対座する。


 「・・・マッカーサーに会いに行った目的はッ!」


周明氏は堂々と胸を張り、


 「ないッ!」

 「ない?・・・」


小木曽はジッと周明氏を見詰める。

調書に走り書きする小木曽。


小木曽の書いた文字がアップされる。


 *『ヨク ヤッタ』


周明氏はその走り書きを一瞥し、小木曽を見る。

小木曽は厳しい口調で、


 「・・・貴様等は『蟻』か?」


黙って小木曽を見詰める周明氏。

小木曽が、


 「何処へ行きたいのかッ!」


覚悟を決めている周明氏は小木曽をジッと見詰めて。


 「何処へでも」


小木曽は暫く考えるふりをして、


 「・・・よしッ! これ以上聞く事はない。貴様等七人は脳病院からの脱走患者だ。呆れてモノが言えないぞ。松澤病院に戻れッ!」


周明氏は痩せた身体で椅子を立ち、小木曽を見る。

小木曽も起立し、周明氏を見詰める。

小木曽警視正の顔が誇らしげな笑顔に変わる。


 「・・・行け。・・・待合室で医者と看護婦が待ってる」


ドアーを開ける警察官。

七人は踵(キビス)を返し、列を崩さず取調室を出て行く。

七人の前後に警察官とMPが付いて行く。


丸の内警察署内の待合室のドアーを、警察官がノックする。

西丸医師と畑婦長が緊張した表情で、長椅子に座ってドアーを見詰めている。

警察官が待合室のドアーを開ける。

周明氏以下、六人が待合室に入って来る。

最後に警察官とMPが二人、待合室に入る。

二人は全員を確認して待合室を出て行く。


静かにドアーが閉まる。


変装した周明氏、肥田氏、堀田氏、首藤氏、岡田氏、杉原氏、山田氏の七人は正面を向いて西丸と畑 を見る。

西丸と畑 は七人を眼で一周する。


暫くの沈黙が部屋を包む。


突然、西丸が衣服の変わった七人を見て笑い始める。

畑 も笑い出す。

西丸と畑 の笑い声が徐々に大きくなる。


通路を歩いて来る小木曽。


待合室から起こる大きな笑い声に、一瞬立ち止まる。

暫く笑い声が通路に響く。


小木曽が突然、笑い出す。

                          つづく

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