愚かな二人は愚かに堕チル。

@Spring-318

第0話上 終わりの始まり

1999年6月、世間は恐怖の大王が7月に降臨するというノストラダムスの大予言に沸いていた、その予言を、ある人は面白がり、ある人は怖がり、テレビや新聞などではこのことを一つのエンタメかのように報道していた、きっと、人々がこのように振る舞えたのは心の奥底で、予言なんか当たるはずなくて、7月になっても何も起こらないと信じ切っていたからだろう、しかし、その期待は裏切られ、


    予言は的中してしまった...


それは、7月1日午前0時つまり7月になったと同時に起きた、突如として空間にひび割れのようなものが現れ、メキメキと音を立てながら割れていった、そして、割れ目の中の全てを飲み込んでしまいそうな暗い闇の中から恐怖の大王はゆっくりと現れた...

その姿はまさに悪魔そのものと言ったような姿だと言われているが、どんな姿だったのかという明確なビジョンはない、なぜなら現れてまもなく恐怖の大王はなんの前触れもなく、自身のそばに、そして世界各地に黒い怪物達を解き放ち、無慈悲な惨殺を始めたのだったからだ。

これにより日本をはじめとする世界の主要都市などが大打撃をうけ、約3000万人が死んだと言われている。だが、詳細は分かっていないが、恐怖の大王の撃退にその後成功した。

そして、世界はこれらの事実を受け止め、復興に向かうはずだった...恐怖の大王がこの世界に現れ、暴れ回った産物として世界のルールは歪み、捻じ曲がってしまったのだった。それにより世界には影のように黒い怪物達が、場所問わず現れるようになった。そしてその怪物たちを人々はと呼ぶようになった...


それから40年後の2039年少年は東京23区の圏外の村に住んでいた...彼の名前は阿霄零,黒髪と白髪が混じっており、現在12歳である。

「お母さん!今日も裏山行ってくるね!」

と、元気よく言う零に反して半ば呆れたように

「ちゃんと暗くなる前には帰るのよ」と、母はいうのであった。

彼が向かった先は家の裏山にある秘密基地である、約束の時間に遅れまいと、タッタッタッと獣道を軽快に走り抜け、まもなくして目的の秘密基地に着いた。

その秘密基地は俗にいうツリーハウスのような見た目で、この村で一番大きな木に作られている、すると、秘密基地の窓から人影が出てきて、

「もう!遅いよ零!待ちくたびれちゃうよ...」と、どこか呆れたような声が聞こえた、彼女の名前は天守刹華、零と同じ12歳の少女である。

ごめんごめんと零が謝ると、刹華は地面に降りてきて零の前までやってくると、

「全く...零はいつもそうよね!今回は許してあげるけど、今度遅れたら奈落の谷に突き落とすからね!」頬をぷーくーと膨らませ、怒った様子で言い放つ刹華とは裏腹に零は、

(奈落の谷って村の北にあるそこが見えない谷のことだよな..?そこから突き落とすって..流石に..嘘..だよね?そうに決まってる!でも刹華なら...)実際、前回怒らせてしまった時は、ヒグマの巣に投げ込んでやる!言われ、冗談だと思って昼寝を始めたところ、起きた時には5頭のヒグマに囲まれていたことは、記憶に新しく、それ以外のあんなことやこんなことを思い出してしまい、絶対につぎからは遅れないと密かに誓う零であった。


「言いたいことも言えたし、もうこの話はおしまい!零?今日何をして遊ぼっか?」と、刹華は無邪気に笑い、

「ん〜じゃあまずは釣り対決をしよう!」と、零も無邪気に笑い返した。

この村は山に囲まれているためか、子供が10人もおらず、特に同い年となると零と刹華の2人しかいない、そのためもあってか、零はほぼ毎日と言っていいほど、刹華と遊んでいた。時には、木登りを、時には虫取りを、時には、追いかけっこをするなど、他にも様々なことをして遊び、ことあるごとに対決をして楽しんでいた。

そんな、なんの変哲もない日が続いたある日のこと... いつものように2人で山の中で遊んでいると、

「そこの子供達!ちょっとばかり聞きたいことがあるのだが、いいか?」どこからか声が聞こえ、声の主の方を見ると、そこには、20代後半ぐらいのガッチリとした男が立っており、その服装は、今の時代には似つかわしくない江戸時代のくたびれた流浪人のような服装をし、腰には一振りの刀を携えていた。

「ん?どうしたの?おじさん」と、刹華がが聞くと、おじさんに何かが刺さったような音が聞こえた気がした、すると、

「おじ..!?俺はまだそんな歳じゃ!...だが28ってもうそうなのか?いや、そんなはずない!だって...」まるで壊れてしまったかのようにおじさんは1人でぶつぶつと呪文のようにも聞こえる独り言を始めた、きっと年齢がコンプレックスだったのだろうか、そんなおじさんの態度にも構わず刹華は、

「そんなブツブツ言ってないで何?もしかして...おじさんは変な人!?」無邪気にも放った言葉は、おじさんにトドメを刺してしまったらしい、言われた直後、

「おじ...!?変...!?」言葉にもならないような声で呟くと、その場で体操座りになってうずくまり、ぶつぶつと呪詛を唱えるように、何かを呟いていた...

30分程してようやく立ち直ると、

「まだ名前を伝えてなかったな、俺の名は鬼頭万人、俺はは28...こほん..18歳なので決して、おじさんとはよばないように!」と、高らかに言い放つと、

「そうだったの!?てっきりおじさんかと...ごめんなさい!」と、おじさん改め鬼頭さんに謝ったのだった。

「それで、おじ...鬼頭さんは僕たちに何を聞きたかったんですか?」零が不思議そうに聞くと、

「ん?あぁ!そうだったそうだった、この村のの中に阿霄という苗字の家があるはずなんだが...どこあるか知らないか?ちょいとその家に用があってなぁ」それを聞いた零は、驚きつつも迷いなく

「それ、僕の家です!」と元気に答えた、

予想外の答えに驚いたのか、鬼頭はポカンと少し固まると、自分にしか聞こえない声で

「こいつが...あの人の!?」とつぶやいた、その後、少し考えるようなそぶりを見せた後、

「すまねぇが、えーっと」名前を聞いてないことを今思い出し、なんと呼べばいいか迷っていると、

「零です」と、零は淡白に名前だけを伝えた、すると、

「そうか、お前零っていうのか!じゃあ零、すまなねぇが俺をお前の家まで案内してくれないか?」普通に考えれば見ず知らずの人、ましてやこのような怪しげな風貌をした人間に家まで案内をするというのは、とても危険なことなのだが、そんなことは考えなしに、零は快く受諾し、家まで案内することにしたのだった。

家までの道はそう遠くはないので、刹華にも一緒についてきてもらい、その後、また一緒に遊ぶことにした。

「そういえば、鬼頭さんはなんで僕の家なんかに用事があるんですか?」と、当然の疑問を口にした零だったが、鬼頭は少し悩んで、

「お前の...お前の爺さんに用があるんだ、少し俺の仕事の関係でな」と、どこか後ろめたげに答えた、

「へぇ〜そうなんだ!じゃあ鬼頭さんの仕事って何?その腰につけてる刀となにかかんけいあるの?」刹華が無邪気にも鋭い質問に対し、鬼頭はまたもや悩むそぶりを見せると、答えづらそうに答えた、

「俺の仕事ねぇ、俺の仕事は..まぁなんだ、化物退治..みたいなもんだ、おまえらも一回ぐらい聞いたことあるだろ?って、俺はそいつらを退治してるんだ。」

アスモデは、あの災厄の大予言から40年たった今、世間では少し珍しい害獣のような扱いを受けている、アスモデとひとくくりに言っても強さから外見まで千差万別で、弱い個体などは、武器を持った一般人でも倒せるぐらいのものだったため、2人が知らないわけなかった、そして、そんな職をもってる鬼頭に、感心したのか、少し興奮気味な刹華が、

「思ってたより鬼頭さんすごい人だったんだね!」と、失礼ながらも純粋な目で、褒めたのだった。

そうこうしているうち、目的の零の家まで着いた、家は古きよき日本の平家だったが、鬼頭の想像よりも大きかったのか、唖然としながら、

「これがお前の家なのか..?でかいな..ん?あの家の横にある建物はなんだ?別荘か?」と、家の隣にあるしっかりとした普通の一軒家ぐらいの大きさの建物を指差した、

「あれは、道場だよ僕の家は昔、といっても数年前まで剣道とかを教えてたんですよ!まぁでも村に剣道をやる子供が全然いなくなっちゃったのと、お爺ちゃんが、もう腰が痛くて教えれないからやめちゃったから今はもうやってないんですよ..後は父...なっ..なんでもないです!忘れてください...」と、一瞬悲しみの表情を見せた零だったが、すぐにいつもの表情に戻り、

「爺ちゃん用があるんでしたよね!今から呼んできます!」と元気よく言い、家の中に入って行った。

しばらくして戻ってくると、

「すいません、姉ちゃんと母さんならいるんですけど、爺ちゃん、今少し出掛けているみたいでいないらしいです..」それを聞いた鬼頭は、少し残念そうに、

「そっか、今いないか...でもいないならしょうがねぇな、零!道案内ありがとな!」と言い残すと、どこかへ去っていった。

「ああっ!そういえば私お母さんに早く帰って来いって言われ出るんだった!ごめん零!今から帰るね!」といって刹華も、去っていくのだった。

やることをなくし、遊び相手もいなくなった零は、とりあえず秘密基地に戻ることにした、戻った零だったが、釣りをしたり、虫取りをしたりと色々やってみたが、何をしようにもやる気がおきず、諦めて寝ることにしたのだった。

その時、零は不思議な夢を見た、それは、家族の夢だった、大きな一つのテーブルに姉や母、爺ちゃん、そしてもういないはずの父が食卓をたまに囲んでいた、そこで零は、父がいることをなんとも思わずに、自分の席につこうと、一歩踏み出した瞬間、零はどこからともなく現れた闇に落ちた、食卓を囲む楽しそうな家族の風景がどんどん離れていく、

頑張って足掻くが何も変わらないそして、夢から覚める直前、その一家団欒の風景に、

   自分がいることに気づいた。

夢から覚めるとそこはもう夜だった、早く帰らないと叱られる!と思う零だったが、何かおかしいことに気づいた、そう、

零は、全力で家に帰った、父がいなくなったあの日と同じ、日常が、幸せが、全て壊れてしまうような感覚に陥りながらも、必死に家までかけて行った、そして、ようやく着いたものの、そこにあったのは、家の残骸だった、それだけではなく、他の家が、畑が、全て跡形もなく、壊され、燃えていた、そして零は、この事実を、絶望を受け入れないのか、呆然とただ、静かに泣いていた。

  

  ...



































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