高嶺の花咲さんが路傍の石並にチョロいことを俺だけが知っている
3pu (旧名 睡眠が足りない人)
プロローグ 高嶺の花?
突然だが、俺のいるクラスには高嶺の花と言われる美少女がいる。
腰まで伸びる緩くウェーブの掛かった黒髪。
精巧に作られた人形のように整った顔立ち。
宝石のような輝きを宿す紫紺の瞳。桜色の艶めかしい唇。白雪のようにシミ一つない肌。モデルのようにスラリと伸びた長い手足。制服の上からでも分かる豊かな胸。まるで、漫画の中から出てきたような完璧な容姿を持ちながらその上に、勉強も運動もそつなくこなす才媛だ。
性格の方はお淑やかでありながら冷淡。
誰に対しても分け隔てなく接するが、常に一定の距離感を保っている。
だが、それでも世の中には馬鹿というものはいるもので、彼女に話しかけられたのを自分に好意があると勘違いを起こす者が何人も発生した。
結果、高咲は脅威の二十人切りを達成した。
告白してくる男どもを「無理です」のたった一言で無惨な屍に変えてしまった。
以降、誰にも靡かない難攻不落さから敬意を表して生徒達の間では『高嶺の花咲さん』と呼ばれている。
ある日、そんな学校一の美少女である高咲が駅のホームを歩いているのを偶然見つけた。
いつもは学校が終わってすぐの時間帯に見かけないのに、その日だけは何故かいたのである。
物珍しさから、高咲の後ろ姿を少し眺めていると彼女の鞄から何かが落ちたのが見えた。
近づいて確認してみると電車の定期だった。
これが無いと駅から降りれなくなって困るだろう。
俺はすぐさまこの定期を高咲に届けることを決め、彼女の後を追いかけた。
「高咲!」
後数歩といったところまで近づき高咲の名前を呼ぶと、彼女が振り向いた。
紫色の澄んだ目と目が合う。
普段全く喋らない俺が話しかけてきたからだろう。
彼女の瞳には疑問と多少困惑の色が見え隠れしていた。
「はい、どうしましたか?
「これ、落としてたぞ」
初対面でいきなり告白してくる阿呆と思われたらたまらないので、俺は右手に持っていた定期を差し出す。
「あっ」
差し出された定期を見て、彼女は短く声を上げた。
自分が落としたとことを認めたくなかったのか、それとも俺が話しかけるきっかけのために偽の定期を差し出してきたと思ったのか。
その後、ゴソゴソと鞄の中を暫く弄り出したかと思うとすぐに手が止まった。
「……ありがとうございます」
ようやく自分が定期を落としのだと認めた高咲は、うつむき消え入りそうな声を上げながら俺から定期を受け取った。
「用事があるので私はここで失礼します。本当にありがとうございました」
ブレザーのポッケに定期を突っ込んむと、高咲は口早にそう言ってホームの端の方に向かって走り去っていく。
「思っていたより可愛いところあるんだな高咲って」
遠ざかっていく背中を眺めながら、俺は感想を溢したタイミングで彼女はドテーンっと派手にすっ転んだ。
「大丈夫か!?」
「うっ」
ここで駆けつけたら高咲が恥を重ねるだけだと分かっているが、それよりも心配の方が勝った俺は彼女の元に慌てて駆け寄る。
その間に彼女が身体を起こしたため、怪我の様子を確認すると右膝の方から血が垂れていた。
「おい、今から消毒するけど文句言うなよ」
俺はたまたま親に持たされていた消毒液を鞄から取り出し、傷口に振りかける。
「うっ、いたい」
「もうちょいの辛抱だから我慢しろ」
痛みに呻く高咲を無視して、俺はハンカチで周りの血をぬぐって最後に絆創膏を貼っつけてやった。
「これでよし。あっ、許可も取らず勝手に治療して悪かったな。一応100%善意でやったことだから、その、セクハラされたとか痴漢されたとか訴えないで欲しいんだが」
「…………」
処置が終わって、冷静さを取り戻した俺は足を触ったこと思い出し必死に訴えないで欲しいと頼み込む。
そんな俺を高咲はしばらく呆然と見つめていかたと思うと、次の瞬間耳を疑うようなことを言い放った。
「慌ててる左藤君可愛すぎてマジ天使!ちゅき!抱いて!愛してる!」
「は?」
あとがき
冷やし中華始めました。
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