第2話

 しばらくすると、チラホラと海の断片が見えてきた。それだけで心が少し弾んだ。

 目的地の浜辺に近い駅で降りる。

 無人駅だ。本当に誰もいない。


 お金の無い僕は、初乗り運賃でキセルしてしまう。

 遠くに海が見える。駅前にはひなびたお土産屋さんが、チラホラ何軒かあるだけだ。著名な観光地とかでは無いのだ。


 錆だらけの自動販売機でジュースを買い、国道沿いを海に向かって歩いた。


 潮の匂いがする。

 カモメが飛んでいる。

 歩いているすぐ横を、トラックやらが通り抜ける。

 古いお地蔵さんが置いてある。


 女の人とすれ違う。

 何かストーリーが始まることを妄想してしまう。


 けれども僕は下を向いて、

 ただ海へ向かう。


 ふと見上げると、

 太陽はまだ高いところにあった。





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旅の途中 @kawakawatoshitoshi

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