旅の途中

第1話

　僕は電車を待っている。何処か遠くへ行くために。

　相棒はカメラひとつ。

　何もない部屋を抜け出し、

　全てを放り出した。

　窓の外を景色が流れていく。暇つぶしにカメラを向ける。シャッタースピードは遅い。

　ブレた方がいい。

　海に向かっている。

　少し遠くの海だ。季節外れで誰もいないような浜辺をイメージする。

　浜辺。麦わら帽子のワンピースの女の子。イノセント。

　くだらない妄想。

　向こう側の席を見れば、薄汚れたオッサン、汚らしいオバハン、うるさい子供、バカそうな若い女。

　現実に引き戻される。

　僕は目を瞑る。

　自分だって似たようなものだ。

　特別じゃない。

　残念ながら。

　色々、思いを巡らせてるうちに

　眠り込んでしまった。

　眼を開けると、窓の外の景色は田園風景が多くなり、遠くへ向かっている実感が湧いてきた。