第14話:抗い、憎しみ、殺し合う
赤黒い機体、いつかの戦場で見た機体と同じだ。
『ジュン!すまねぇが援護に行けねぇ!そっちはそっちで対処してくれ!』
敵の翔機は右手に銃、左手に剣を装備している。遠距離と近距離、両方いける口か。もしかしたら、あの日逃してしまった奴かもしれない。
「まさか、ね」
すると、相手は素早い動きで銃を向けて撃ってきた。それに瞬時に反応し後退しながら上に飛んで逃げた。艦体に傷が付くのを避ける為だ。シールド外まで逃げたところで、向こうは一直線にこっちへ向かってきた。
「やっぱりね…」
「逃げる気か!」
薄々自分が狙いなのではないかと勘付いていたが、もしかすると本当にあいつかもしれない。
上に読んだ瞬間に確認できた胸元の文字、間違いない!
「アイアン02!」
「接近戦だ!!」
相手が銃を捨て両手に短刀を装備し、シールド外で近接戦闘になった。こちらの武器はロングソード、対して小回りのきく短刀二刀、不利ではあるがさっきほどではない。
何度も振り翳してくるロングソードを弾き飛ばす。向こうも手馴れのように隙がない。2本使っているというのに全く差がない。だが…
「練度では私が優っているッ!!!」
短刀で左手を切断された。片手だけでは出力が足りない、つまりは剣を振るえない!
「チィィ!」
ロングソードを相手に投げるも見事に交わされた。突進してくる敵、太ももにあるナイフを取ろうにも時間がかかる!なら…!
「G01ガントレット・ダガーッ!」
呼び声と共に腕から2本のツノが生え、それを使い敵の短刀を弾き飛ばした。
「それは…!隊長の証!グォーリー少尉の!貴様ァァァァァ!死者をも侮辱するかァァァァァ!」
途端に相手の攻撃が強まった。短刀のスピードが上がり、集中的にコックピットを狙っているように思えた。
死人を侮辱する行為!こいつにはッ!騎士道というものがないのかッ!!!
「なんなんだ!貴様はァァァァ!!」
お互い、刃を激しく振り回し、そして知らず知らずにエンタープライズから離れていった。そしてギュウジィがスラスターを全開にし、ジュンと彼の機体がぶつかり、激しく飛ばされていく。
ジュンは突然掛かったGに身体を奪われ、前方のスクリーンにぶつかり、その衝撃で全身稼働リンクが解除された。その拍子でコックピット内が危険を示す赤いアラートに染まった。
「おいおいチクショウ!どうするんだ、こういう時!」
「落ちてしまえぇぇぇ!!!」
ジュンが現状を把握したのはアラート表記が変わった時だ。
「こいつ!自分ごと地球にッ!」
ギュウジィは自分の機体ごとジュンを地球に叩き込もうという魂胆だ。もちろん、地上に着く前にパイロットは大気圏内で燃え尽きる。
機体が大気圏に突入した。機体が赤く燃え始めた。
機体の中、コックピットではパイロットを守るためのシステムが作動した、冷却システムだ。これは大気圏で焼かれるパイロットを一時的に守るためのシステム。だがそれも数分程度しか機能しない。
「こんなところでッ!終われるかァ!!」
「落ちろぉぉぉぉぉぉ!アイアン02ッ!」
そして
彼らの機体は
淡い水色の光に包まれ———
数日後——…
宇宙航空母艦エンタープライズは最後の任務を終えるために地球へ帰還する段階に入った。
「全ドック閉鎖完了。大気圏突入します」
艦艇が赤く燃え始め、順調に降下していってる。
「冷凍システム、正常に作動中」
冷凍システムは艦艇内の人間を熱から守るためのシステム。数分して、艦橋のスクリーンに映し出されたのは青い海。
彼らが向かうのはU.E.S.F.の地上基地、メイソン・スペース・ポート。
艦艇は海に対して45度の角度で降下し、カウントとともに着水した。
「本艦に被害なし、オールグリーンです」
「無事、着水したね。このまままっすぐポートに向かおう」
島を魔改造した人工島、無数の艦艇が停まっている。空にはエスコート用の戦闘機が2機飛び交う、そしてエンタープライズを導いた。
問題なく停泊したのを確認してから、艦載機搬入口を開け、火星の避難民を下ろした。
そして数々見慣れた翔機と戦闘機が運搬された後、複数の兵士と翔機が取り囲むように一つの翔機が運び出された。それは白と青の鎧を纏った翔機、今までに見たことの無い翔機。
そしてそれの横を随伴する男に軍服を着た数名が駆け寄り、リーダーらしき人が口を開いた。
「ジュン・スラットリー、君を拘束する」
宇宙戦争録〜STARDUST LEGION〜 不細工マスク @Akai_Riko
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