日常生活
僕らの初めのダンジョンはあまり浪漫のない、微妙な結果で終わった。帰還者は三名。
周りの生徒は僕らを見て不思議そうな視線を向けた。
勝ち誇ったように歩いているアルヴァとクレイア。そして落ち込んだように歩く僕。さらに言えば、居なくなった四人目。
「ドレイト先生。無事【地界の
「そうか、クレイア・プラウディール、アルヴァ・スカーレット。私は君たち二人が凄く誇らしいよ。疑うわけじゃないが、証拠の品を見せてもらっても」
「ゼル、あれを出してくれ」
「うん……」
僕はバックパックを地面に置き、その中からアライオンの頭蓋を取り出す。しかし、頭蓋に引っかかった血塗れの女子制服が一緒に出てきて、地面に落ちる。
それを見た他の生徒たちはハッとした顔をしたり、気持ち悪がったり、泣き出したりする人もいた。
「……残念ながら俺たちはラナンを助けれれなかった」
「いやいや、君たちが生き残ってくれているだけで、私たち教員は嬉しいかぎりだよ」
「ゼノ、みんなが悲しむ早くそれをしまってくれ」
「うん……」
僕はもうこの二人が怖くて仕方がない。
それに、この先生たちも一体どうなってるんだよ。全員イカれてる。
そして、ダンジョン実習はついに終わりを迎えた。
♛︎
実習が終わってからある噂が広がるようになった。
『ラナン・カルトラーゼはゼノ・グレイスのせいで死んだ』
どこから広まったかも分からない噂。
それと同時に僕は学園で孤立した。
「あの……クレイア」
「なによ? 用がないならあっちへ行って」
実習が終わって教室でクレイアに話しかけたら何故かそんな事を言われてしまった。 すごくショックだった。かなしかった。
あれからアルヴァは見かけていない。
そして僕はまた昔と同じ日常を取り戻してしまった。
「あんたのせいでぇ! あんたのせぃでラナンがラナンがぁ! 返してよォ! 返してぇ!」
「ファラ。落ち着いて。あんたのせいでこうなったのよぉ! 謝りなさいよ!」
「ごめんなさい」
僕は廊下で土下座をさせられた。
そして、大量女子生徒に頭を蹴られた。たくさん、血が出た。
また、別の日僕は廊下を歩いていたら。
「おい、お前に犯された女子が大量にいんだけど? どぉしてくれんの?」
「僕、知りません」
「デタラメ言ってんじゃねぇよカスが!」
「てめぇ、クレイアさん達に守ってもらってていい気になってたんだろぉがよぉ!」
僕は知らないと何度言っても聞く耳も持たれなかった。
僕は腹を殴られて顔を殴られて、顔の原型が無くなった。そして、またいっぱい血が出た。僕はこの時、本当に死ぬかと思った。
それにしても懐かしい日常生活だ。そして憎たらしい日常生活だ。
それから何日経ってもアルヴァを見なかった。クレイアは見かけても必ず僕の事を無視する。そして、他の生徒には罵倒されて何かとつけて暴行された。
それから十日後だった。
アルヴァ・スカーレット、クレイア・プラウディールの特待生入りを聞いたのは。
僕は意味が分からなかった。
その日の夜。僕の寮の部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
僕は急いで相手が誰かも確認せずに扉を開けた。
そこに居たのはアルヴァだった。
「アルヴァ…… 」
どうやらアルヴァは最後に僕に別れを告げに来たらしい。申し訳なさそうな顔でも、いつもの優しそうな顔でもない。酷く冷たい顔だった。
「アルヴァ。今までどこにいたんだよォ! アルヴァ、なんで、アルヴァ!」
「喚くな、落ちこぼれ……お前は俺たちの良い玩具だっただけだよ似合わない大剣信じて使って、俺たちに陰で馬鹿にされているとも知らずに楽しそうについてくるお前が滑稽だったよ」
「なんで、なんでなんだよ」
「俺たちはもうお前には遊び飽きた。せいぜいこれから汚名を背負って頑張っていくんだな」
「なんで……そんな……」
「じゃあな、落ちこぼれ」
アルヴァは最後まで冷たい目で僕を見て、部屋から出て行った。
僕は力無くそこで崩れ落ちた。
それから僕は無性にむしゃくしゃして部屋にあった大剣を持って外へと走り出した。
ダンジョンに潜っていたらなぜか魔王になっていました 藤ノ山井 @Aulti_mate2346
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