宵闇の寺、大海の果てより海鳴りに紛れ

海鳴りが遠く響く、その寺については誰も
知らない。名前すらも遠い忘却の彼方より
曖昧に響く。
       白亜の洋館。

 海鳴りに紛れて、それは。

元は神社だったという。いつの間にか社は
潰され鳥居は倒され、襤褸瓦礫となった。
神主の一家はいつの間にか姿を消した。

 海鳴りが、遠く響く。

神社の跡地には、寺が建立された。
その寺の名前は曖昧で、何処かとても遠い
大海の果てから茫洋と響く様な。


  あの日以来、友達は消えてしまった。
    多分、もう二度と会う事はない。

今日も又、海鳴りが響く。