帰ってきた魔導王

@takayoshi0425

第1話 

あ〜〜あ。また異世界に来ちゃった。

というのも、俺は先ほどトラックに轢かれて死んでしまった。しかし、ふと目が覚めた。この光景は2度目。流石にもう戸惑わない。


俺の名前は二条真斗。この世界での名前はムニルという。大変言いにくい名前だが覚えてくれたら幸いだ。


さて、ここで一つ俺の話をしよう。

俺は普通、いや少しエリートな企業に勤めていた者。ある日俺は突然魔法陣が展開され、どこかに飛ばされた。そこは剣と魔法のファンタジー世界。そう異世界だ。


俺は異世界のことなど何もわからず淡々と生きることを目標としながらの毎日を送った。そこで俺は数多の仲間と出会い、そして魔導王になんて呼ばれるようになった。正直恥ずかしい。


だが、こっちの世界にはそんなムズムズする名前でも恥ずかしいという感情はないようで俺はしょうがなくその名を名乗った。


魔導王になったある日、俺は何やら元の世界に飛ばされたのだ。正直悲しかった。なんせここ異世界にもかなり情があったからな。仲間たちには急に姿を消して申し訳なかったと思っている。異世界では大変有意義な生活をしていた。


現実世界に戻った俺は普通に仕事をしていた。しかし、戻ってきてから一年でトラックに轢かれて今に至るというわけだ。


別に悲しくない。逆に嬉しいぐらいだ。


今この場所は草原。パッと見どこかわからない。しかし今の俺の力があるならすぐ仲間を見つけることができるだろう。いや力などいらないな。

なぜなら俺は自分の国を持っているからだ。


始めたはたった10人の仲間だけで構成された村だったが、いつの間にか世界有数の大国になっていた。それは決して俺が優秀なのではなく仲間が優秀だったから。


まあそんなこんなで異世界人生を送っていた。面白いだろ?


まずは飛んで近くにある村を見つけよう。そして村人にここがどこか聞こう。


飛ぶために風魔法を展開しようとするがうまくできない。うまくできないっていうレベルじゃない。そもそも風が発生しない。


感覚を忘れたのか?


もう一度試したが俺の体はびくともしない。もしやこれは…


「力がない?」


おいおいマジかよ。あんなに苦労して死に物狂いで手にした最強の力なのに…まあ過ぎたことはしょうがないか。。はあ。。


悔いても仕方ないので足を進める。

すると、幸い草原の近くに村がある。


「すまない、ちょっと時間いいか?」

「は、はいもちろんです。どうしました?」


話しかけたのは獣人の青年。茶髪の髪が腰まで届き綺麗に靡かせている。


「もしかしてここら辺は人間がいないのか?」

「は…はいそうですね。。すみません顔に出ちゃいましたか」

「大丈夫だよ。俺だって初めて獣人族にあった時の反応もそんな感じだったから」


なるほど。つまりここら辺は魔物領付近かあるいは魔物領か。


この世界は大きく分けて二つの勢力に別れている。一つは人間、もう一つは魔物。この二つの種族だ。この二つは互いに仲が悪く、戦い合っていた。

しかし俺が生きていた時代の頃には戦争は少なくなっていた。そういえば俺が現実世界に戻ってからこの世界は何年の月日が経ったのだろう?


「ところで、2つほど聞きたいんだがいいか?」

「はい、もちろんです」

「じゃあまず1つ目だ。今は魔導歴何年だ?」

「15年です」


魔導歴…それは魔導王が魔法の王となった刻から始まった暦。。自分で言ったら恥ずかしいな。


「そして2つ目だ。ここはどこの国だ?」

「ここはフィーネ王国の辺境です」


フィーネ王国!?おいおいマジかよ。俺の国から結構離れているじゃないか。


これはまずいぞ、魔導王の力を使えなくなった今の俺は移動も手間がかかる。そしてお金もない。どうしようか…


「失礼を承知で述べるが、もし暇があれば俺を王都まで送ってくれないか?もし送ってくれたら君にとっていい情報を提供することを誓おう」

「…いい情報ですか?」

「ああ。俺はこう見えてもかなりの博識なんだ」


完全胡散臭いが今の俺にはこれしか手段がない。


「なら…”魔導王”がどこに行ったのか教えてくれませんか?」


…おいおいマジかよ。別に魔導王は俺だと教えてやってもいいが後々大変になるかもしれない。ここは申し訳ないが適当に嘘を吐こう。


「今魔導王は正体を隠しながら生活してるんだ」

「正体を隠して?…なぜ」

「魔導王は元々はあんなに目立つ性格じゃないんだ」

「そうなんですか…」

「なんだ、魔導王が好きなのか?」

「はい、、魔導王が好きな人はものすごく多いですが、僕はその中でもかなり好きな方だと思います。。だからちょっと気になって。

あ、てかなんでそんな情報を知っているんですか!?」


青年は俺に勢いよく迫ってくる。


「博識だからさ」


すると、青年はとても悲しそうな顔をする。嘘と思っているのだろう。


「ああごめんごめん。嘘じゃないよ。実は俺、魔導王様の側近だったんだ」


決して魔導王本人とは言わないことにした。もう目立つのはごめんだ。


「本当ですか!?」

「ああ。

王都に着くまで黙々と話してやるよ。だから…な」

「はいわかりました。では今すぐにでも村の馬車を用意しますので少しお待ちください」


青年は興奮しながら走った。

そうか村に馬車があるのか。ありがたい。馬車ならここから王都まで1日もあればいけるかもしれない。


すると、青年はすぐに馬車と業者を連れてきた。業者もどうやら獣人族のようで、かなり歳を取っている男性だ。


「では頼む」


俺は屋根がついている荷台に乗り業者に声をかける。


「王都で間違いないですか?」

「そうだ」

「わかりました。では」


馬が早々と走り出す。その際、向かい側に座っている青年が俺と話したそうにしていた。


「まずは名前を教えてくれるか?長い付き合いになるからな」

「もちろんです。僕の名前はロンド。剣士を目指しています」

「剣士?魔導王が好きなのに剣士なのか?」

「…ていうのも僕、魔法の才能がないんですよ。小さい頃から修行して、得た魔法は”ヒール”だけです…」


そうなのか。すまないが俺にはその気持ちはわからない。俺は魔導王だ。魔法の王みたいなものだ。俺には転生当時から魔法の才能があったからな。


だが、俺の仲間にはもっと魔法の才能がない奴がいた。だが今そいつは俺よりも強いかもしれない。俺はそいつにある言葉を投げた。そいつが言うにはその言葉のおかげで強くなれたらしい。ただ思いつきで言った言葉なのにな。


「魔導王様は”魔法使いより剣士になりたかった”そうだけどな」

「え?」


こんななんの変哲もない一般人間が言ってしまってはなんの励みにもならない言葉だ。だが、魔導王と付ければ無意味な言葉は可能性になる。


「魔導王様は小さい頃から剣士に憧れてたそうなんだ。しかし、魔導王様は剣の才能じゃなく、魔法の才能があった。そして夢を諦め、魔法使いになった。変な話だろ?魔法の王が剣士に憧れてたなんて」


嘘じゃない。本当だ。誰しも主人を守る騎士に憧れを抱くだろう。


「そ、そうなんですか…なんか、、すごい自信が湧いてきました。剣士に誇りを持っていいんだって」

「そうだ。誰しも才能があるわけじゃない。夢なんて捨てる者が大半だ。しかし、夢を諦めて絶望するより、新たな道を切り拓く方が面白くないか?」


剣士という夢を諦め魔法に走る。あの時は悔しかったな。でも、そのもう一つの道を切り拓いたからこそ今の俺がいる。


「実は僕、村一番の剣士なんです」

「ほう、その年齢でか?すごいな」

「でも、今までの僕はそんな自分が嫌いでした。

魔法使いじゃなきゃ意味ないって。そう思ってたんです」

「そうか。。でも今はどうなんだ?」


ロンドは笑う。


「新たな道を見つけました」


そう。それでいい。たとえ夢を諦めたとしても自分の人生は終わっていない。まだ何が起きるかわからない道に生きるのが良い。それが正解とは言わないが。


「よし、じゃあ早速魔導王様について話そうか」

「はい!」




語り果てた。俺とロンドは魔導王について語り果てた。

懐かしい気持ちを思い出した。まだなんの変哲もない旅人だった俺はこんな馬車を走らせて仲間と共に語り合ったことを。


ああ!やっぱり異世界って面白い!


話し合っていく中でわかったんだが、どうやら俺は若返っているらしい。ロンド側から見るとロンドと俺は同世代に見えたようだ。つまり俺の容姿はまだ成人にもなっていないと。。なんか上から目線で悪かったな。


褒美としてなんだが、俺とロンドは互いにタメ口で話すようになった。




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