「竜の恋物語」

井田壮馬

第1話 竜の少女と少年の出会い

夜、月を見上げて思い返す。


『昔、曾祖母から人間との恋の話を聞いた。

いつか自分もそんな恋がしたい。』


『そう……、「だからこの歳になって…」』


「彼の元へやっと行けるわ!!」


羽を広げ少し興奮気味の少女。レイラ・ステューシーの高校生活前夜である。



春、高校生活初めての朝。

少し浮かれて早起きして、新しい学園生活楽しみにしていた。


「まだ時間あるな…ちょっと早いけど制服着るか。」


7時30分、着替えを終えて一階へ降りながら母へと声を掛ける。


「母さーん!制服変じゃないよなー」


いつも母が居るリビングの扉へと手をかけ、ガチャりと扉を開ける。


そして。


「はっ、初めまして!こ、こ、この度、東雲氷河様との婚約の為、今日からこの家でお世話になります。レイラ・ステューシーと申します。」


緊張して声を上擦らせながら礼儀正しく一礼。

母に制服を見てもらおうと開けた扉の先には、見たこともない女の子が立っていた。

そんな事を気にする暇もなく、微笑む母に聞く。


「母さん!?誰この子!?何も聞いてないんだけど!?」


「そりゃあ、サプライズよ。サプライズ。ひょうは好きでしょ?」


「好きじゃねぇよ!?昔から嫌いだ!!」


朝から慌ただしい親子の会話に取り残されたレイラは気まずそうに声を掛ける。


「あの…氷河くんにお伝えしていなかったのでしょうか?」


「え?あぁ、レイラちゃんにも言ってなかったかしら?この子に何も伝えてないから。頑張ってね!」


普段、面倒みの良い母を見てきた氷河は初めて見る母に少し引いていた。


(母さんって姉貴みたいな雑な性格だったけ…?)


「えっと…出るまでに時間あるし、説明してもらってもいい?」


母から出された朝食を食べながら、レイラと氷河の関係の説明を受ける。


「許嫁もそうだけど、女の子が今日から住むって荷物とかわ?」


「今日来るわよ?その為に母さんお休み貰ってるんだもの。」


「親父は?」


「お父さんなら、お姉ちゃん迎えに行ってるわよ。多分、移動中に言ってるんじゃない?」


「はぁー、入学式早々に、頭パンクしそう…」


「その…ごめんなさい。知らされていると思って私…」


「レイラさんが悪い訳じないから。気にしないで。」


最初の勢いは何処へやら。

自分の予想と違い、氷河に迷惑をかけてしまった。という申し訳無さからバツの悪そうな顔を見せる。


「まぁ、どのみち。俺達が学校にいる間に姉貴を顎で使うんだろ」


「あら、よくわかってるじゃない」


「そりゃ、迎えに行くとかしなかった親父が迎えに行ってるのが何よりだろ」


あの父親にしてこの息子有りと言わしめるほど、この親子は似ている。


「荷物などは私が今日、学園から戻り次第自分で…」


「いいのよ!気にしないで!レイラちゃんはひょうと二人で話し合ってて?」


「はっ、はい!」


「話すのもいいけど、バスの時間的にもそろそろ出ないと」


「も、もうなんですか?」


そろそろ行かないと初日から遅刻するヤバイ奴と思われてしまう。

レイラはそんなに時間が経ったのかと不思議そうにしていた。


「行ってくるよ」


「あ、私も行ってきます」


「はいはーい!気おつけてね〜」

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「竜の恋物語」 井田壮馬 @idaSoma1

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