ぼっちの僕に甘えん坊が接近中

 「えっ……ちょ、ちょっと待って……甘えるって誰に?!」 


 「今、私の前には東くんしかいらっしゃいませんよ?」


 その返し的に、甘える相手は僕って思ってもいいのかな?友達になったばかりの相手を特別扱いしようとする如月さんには驚いてしまう。


 困惑した表情で少し後ろにのけぞりながら僕は問いかける。


 「如月さんが言った『甘える』という言葉の具体的な意味を聞けたりできる?」


 如月さんは軽く首をかしげ、少しだけ目を細めて微笑んだ。


 「そのままの意味ですよ?私が困ったときに助けてもらったり、一緒にいてほしいときに頼りたいのです」


 「そうは言われましても……」


 「直感で決めたのではありませんよ。先ほども申した通り私は、東くんの優しいところも頼れるところも見たことがあるからこそ、こうしてお願いしているのです」


 僕は視線をあちこちに向けながら、どう返すべきか悩む。


 正直、初の友達から頼られていることはとても嬉しく思う。だからこそ、力になれるならなってあげたい。


 「少し考える時間をもらってもいいかな。如月さんには友達として失礼が内容に接したいんだ。でも僕は、誰かを甘やかすって経験がないから色々わからない事が多すぎて……」


 「そのような答えを返すということは、私のお願いは聞いてもらえると捉えても宜しいのでしょうか?」


 雫はふわりとした雰囲気で、東の顔をじっと見つめながら、少し照れくさそうに笑顔を浮かべる。


 「そ、そうなるのかな……。あんまり期待はしないでいて欲しいけど僕なりに頑張ってみるよ!!」


 東は苦笑いを浮かべながら、頭をかく。


 如月さんは満足そうに微笑む。その姿を眺めていたら廊下の方から女子の声がした。気づけば、いつも皆が登校してくる時間たいになっている。


 「東くん。今日は一緒に帰りましょうか」


 誰かに誘われて帰るなんて初めての経験だ。放課後に一緒に帰るなんてまるで……友達みたいじゃないか!!今日の放課後が楽しみすぎる。  


 僕は如月さんに「はい」と一言。


 その後は、続々と教室に生徒が入ってくる。如月さんはいつものように女子に囲まれ話しをしている。


 如月さんをちらっと見たときに目が合ったような気がした。僕は何故か目をそらしてしまう。そのとき、自分の心臓が高鳴っているのに気づいた。


 果たしてこの高鳴りは、友達ができたからなのか、それともそれ以外の気持ちなのか。このとき、東はまだ高鳴りの理由の正体を知らない。

_____________________


 今日は、時間の流れが早く感じる。気づいた時にはもう放課後になっていた。先ほど用事があった僕に如月さんは「東くんのこと、昇降口でお待ちしておりますね」と告げ、教室を出て行く。現在は用事を済ませ僕もゆっくり廊下を歩いて向かっているところだ。


 昇降口に着くと、一人の美少女の存在に僕を含め自然と生徒たちの視線が集まった。


 美しさや品格に惹かれる者。

 彼女を尊敬する者。

 そして単純に彼女の姿を見たいと思う者。


 さまざまな感情が入り混じっているのだろう。


 生徒の視線を惹きつける美少女の正体は、如月さんである。


 如月さんは話しかけられると、彼女はおっとりとした微笑みで丁寧に返事をし、周囲の生徒たちはさらにその仕草や言葉に魅了されていた。


 集まる生徒たちは、彼女の一挙一動を見逃すまいと静かに見守り、その空間は一時的に少し特別な雰囲気に包まれる。


 如月さんは周囲を焦ることなく、穏やかな表情で生徒たちの間を静かに見渡している。その行動が、彼女の柔らかくお淑やかな一面をさらに強調していた。


 周りの生徒たちは、如月さんの様子を見守っている。そして、彼女が僕を見つけた瞬間、その顔に少しほっとしたような、柔らかい笑みが浮かんだ気がした。


「東くん……」と、控えめながらも安心感のこもった声で彼を呼ぶ如月さん。その声は柔らかく、静かな空間の中に響いた。 

 

 他の生徒たちは驚きや興味の目で東を見て「まさか彼こそが、如月さんの探していた人なのか?!」と、周囲がざわめく。


 如月さんの仕草や表情から、膝から崩れ落ちて泣く男子もいれば、肩を優しく叩いて「東といったか、優勝おめでとう。」と何故か祝われてしまった。何かの、勝負でもしてたのかな?と疑問を浮かべる東。


 実は女子人気も高く


 「東君って、あんまり目立たないけど、優しいよね。」


 「授業中も真剣だし、ちゃんと他人に気を使える人だと思う。」 


 「あとなんか……可愛らしいよね!!」


 「「「わっかる〜〜!!!!」」」


 こんな声が女子の間で囁かれ、彼の穏やかでしっかりとした性格に惹かれる人も多い。しかし、東自身は自分が注目されていることに全く気づいておらず、むしろ「どうして自分がそんなふうに思われるのか」と不思議に感じていた。


 最初は如月さんにを見ていた視線が、一気にこっちに向き周囲にいた生徒が寄ってきたことから身動きできなくなってしまった。


 雫は我慢ができなくなり静かに、しかし確固とした足取りで東に近づく。他の生徒たちに邪魔されないように、控えめながらも存在感を出している。東の近くまで来ると、彼女の瞳にはほんの少しの不満が見え、口調はいつもよりも甘さが控えめになっていた。


 「東くん、もうそろそろ……帰りますよ?」


 その声は決して強引ではないが、いつもの優雅さの中に焦りと少しの寂しさが混じっているような気もする。


 「ごめんなさい、友達と帰る約束をしていて……」


 そして僕は、周囲に「さようなら」と頭を下げて如月さんと昇降口を出た。 


 残った生徒たちはというと……。


 「如月さん……なんか恋する乙女って感じだったな」


 「あの二人が話すところ初めて見たけどあれは東君が鈍感すぎるかもな〜〜。雫ちゃん頑張れ!!」


 「雫さん、もっと自分に自信を持って!!それに、東君は優しいから絶対に受け入れてくれるよ」


 「東って一組の一人でいるやつだよな?俺さ、最初見た時に可愛い子いるじゃんって思ったら男子更衣室入っていったの見て一人で絶望してたわ」


 「待って、それ俺も思ってた!!」


 「男子が気持ち悪いのは一旦置いといて、みんなで東くんと雫ちゃんを応援するぞ〜〜!!」


 「「「「「おーー!!!!」」」」」


 こうして、二人のいないところで勝手に『成瀬東と如月雫を応援する会』が結成されるのであった。



 


 


 




   


 







 




 


 

 


 

 


 


 



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友達を作りたい僕に、甘えん坊美少女が友達以上を隠して寄ってくる。 蓬 白亜 @wil

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