「とある国の」あとがき
初作「とある国の」をお聞きいただき、ありがとうございます。京田餅と申します。
今作はタイトルの意味で遊ぶという目的のために執筆するとともに、小説の構成や感情表現などを学びながら試行錯誤することを目的に執筆した作品となります。お気づきかと思いますが、本作の登場人物や地名はアナグラムとなっています。
アナグラムとは、言葉の音を切り離し、前後の関係をなくした状態でそれぞれを入れ替えることで、元とは違う意味を持つ言葉へ変形させる言葉遊びです。
例:とある国の→アルトの国
書斎→サイショ
テクノロジー→クロノテージ
工場→ウコジヨウ
彫刻→コクチョウ
上記の言葉たちは物語の基盤となる土地や人物たちです。アナグラムについて理解いただけたでしょうか。タイトルで遊びたかったと申し上げましたが、「とある国の」というタイトルはアルトの国へ変化するというアナグラムであるという遊びをやりたかったのです。さらに、タイトルにある「の」の不自然さからもう一つの遊びも取り入れようと考え、内容が決まっていきました。最終章の話は「文化の根とある国の伝説」です。「と」や「の」は、物語のタイトルとしては固有名詞に含まれていましたが、物語の全体を見ると接続詞としての意味に切り離されます。
アナグラムと物語のタイトルは読み進めていくことで理解し、変化していくという楽しみを提供できればいいなと思いながら文章を書いていました。その際に、極力無駄な情報を省くことを意識しています。現実感と物語感のバランスは重要でありますから、彼らの旅路にかかる日数の表現は含めましたが、町や村の人々の描写はあまりないかと思います。
さて、大団円といえる終わり方をしましたが、謎がいくつかあると思います。
人物や土地がアナグラムを用いていると言いましたが、「ペイン」はその限りではありません。色彩のペイントに由来していますが、彼女の名前はアナグラムではないのです。また、「ソプラ」も同様です。音楽におけるソプラノに由来しますが、アナグラムではないのです。両者は、混ざり合うことを美としている芸術です。絵画は色彩の混ざり合いで諸事を表現し、音楽は音の混ざり合いで諸事を表現しています。切り離すことができないのです。彼女たちはその後の時代でも混ざり合うことができない人物として登場するかもしれません。名前や見た目は違うこともあるでしょう。
さて、たびたび発行されていたルトアルド新聞ですが、どこの誰が何のために発行していたのでしょう。ある企業が何かのためにやっているということは確かですよね。
何度か質問のあった、「治める者の短編」についても触れておきましょう。本作において治める者とは、サイショ王とクロノテージ王です。二人はコクチョウ出身で、タッグを組んで作品を作るほどの美術家でした。しかし、あることを機に作品を作ることがなくなり、やがて王国を気づき治める者となりましたね。短編➀では小心者の心、短編②では恐ろしい口調で国民を匿う心が描かれています。➀はクロノテージ王、②はサイショ王です。悪役の王として登場したクロノテージ王は実は小心者、良い王として登場したサイショ王は実は腹黒さのある王であったということです。サイショ王の腹黒さとは何だったのでしょうか。その後の時代で描かれるかもしれませんね。
最後の謎です。この物語の序盤では、「この国の女男」という言葉が使われています。男女ではなく女男という表現をしています。その後の時代で描かれるかもしれませんね。
さてさて、根本的なことを一つ。この物語は伝説です。伝説や伝承は語られていくことで形を変え、事実が変化することがあります。安心してください、皆さんが読んできたこの作品は、最初にこの伝説が伝えられた際の誰かのセリフですから。5つの島のある国について伝えられた後の時代では、話が変化しているかもしれません。
長くなりましたが改めまして、「とある国の」という作品をお聞きいただきありがとうございました。また他の作品でお会いしましょう。
とある国の 強田餅【きょうでんもち】 @kyodenmoti
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