第8話
ウィルク・バーチェスです。なんでこうなったんでしょうか。
───ちょっと時間が戻って2時間前
パーチェシズ商会の重役+俺は王都支店に勢揃いしていた。もちろん王女様がご来店されるからであり、決して王族商会とやり合う為に集まった訳ではない。
んな訳ねぇだろ!
いかに竜素材を高く売りつけようかと重役と会議に会議を重ね、王族商会や宮廷内部に密偵を送って情報を調べ続けた。かかった費用は正直今世では見たくない0の数だが、上手くいけば費用分を相殺して有り余る利益が出る。失敗したら爺さんの代の頃のような弱小に逆戻りになるが。
ということで王女様ご来店。親父がにこやかに対応しながら他の人がカバーしていく。ここまでは特になし。なにせ今回は王族とことを構える予定はない。
王女様がご購入された品を箱詰めしながら件の男を見る。痩せ気味な身体を覆う服は煌びやかなものではないがどう見ても高級品。質感からいって
ん?なんかこっち歩いてきた。俺の隣にいる支店長に用がある…感じじゃないな。すっげえ嫌な予感してきた。
「えっと、なにかご用でしょうか?」
「ああ、君に用があってね。少しいいかな」
なんだ?マジで何の用だ?
「そう身構えなくていい。なに、良かったら私のところで働かないかと勧誘に来たのだ。君だとここを継ぐこともないだろう?」
…………あぶねえ今ショートしてた。は?王族商会に?俺が?なんで?
「す、すみません。あの、なぜ僕なんでしょうか。他にも優秀な方は大勢いると思うのですが…」
「…なるほど、普段から当たり前に行なっているものだからこそわからないのか。いいか、その人脈形成能力にそれを用いた数々の業績。我々からしたら1つでもあれば即座に幹部へと上がれるものだ。君なら次期会計責任者にもなれるぞ?」
マジか…そんなに人手不足なのか。っていや違う!
取り敢えず、今回の計画がバレている感じじゃない。宝石とかキャラバンの拡充が俺の手で行われたことを知っているのは油断ならないが、これさえバレていないのならひとまず大丈夫だ。息吸ってー、吐いてー。
「えーと、申し訳ないのですが兄の補佐という役は今後もありますし、冒険者として活動することも考えていますので。そのお話は受けられません」
「そうか。いやすまない、私も急いていたな。だが、気が変わったら言ってくれ」
気が変わるまでに王族商会が残ってるかは保証しないぞ。てか王女様もう馬車に乗ってるし。
「ダルヤ、本当に私は帰って大丈夫なの?」
「問題ありませんよ殿下。それよりも、陛下に今日のことをお教えなさってください。大層喜ぶと思いますよ」
「わかったわ。それじゃああとはよろしくね」
王女様を乗せた馬車を見送り、少ししてダルヤと呼ばれた会計責任者が切り出した。
「それでは今回の支払いだが、白金貨30枚で如何かな?」
「それは安すぎます。その倍はかかってもおかしくない
「殿下が気に入られたのだ。その喧伝で十分だと思うが」
ふーむ。最初は父が全部やるかと思ったけど…これは俺が入った方が進みそうだな。近くの支店長と重役の1人に目配せして机と椅子を用意してもらう。竜素材の現物をストレージから引っ張り出して並べる。流石に音を鳴らすこちらが気になったのか会計責任者の顔がこちらを向いた。
「
彼の名前の1つを呼んでみるが眉一つ動かさない。まあ流石にな。
「まずはどうぞ。お手に取って見てみてください。本物か調べたいのならハンマーや剣をお待ちします」
「………いや、必要ない。どう見ても本物の竜の鱗だな。これはどこで?」
会計責任者の口調と雰囲気が大きく変わる。完全にこっちを子供じゃなくて商人として認識したっぽい。まあ今回は好都合だけども。
「アーリーツ山脈の方から。討伐から輸送まで全て僕が行いました」
会計責任者の顔が驚愕に染まる。そりゃ目の前の年端もいかないような子供が、到達するのすら難しい場所に行き、更に竜を狩ってきたとなればこんな間抜けな顔にもなる。
「今回のは白金貨30枚で構いません。
それと、と言葉を続け
「全くの別件として継続的な竜素材の買取をお願いしたいのです。正直、我々ではこの量を売り捌くのは至難の業。上の貴族の方々にはお話しをかけに行くことすら出来そうにないですからね」
会計責任者の顔が目に見えて明るくなる。ほんとにこんなのが国の金銭握ってて大丈夫なのか?
引継転生したんで無双します 千川 悠汰 @cat1ncarnation
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