奇術ってのは器用なヤツでないと出来ない芸なんだ。


 いつも駄弁ってるあいつに、後輩がつきまとってきた。

「奇術師」を自称するヤツなんか、あいつが一番ウザがるタイプだ。

 雨の日々、平穏は変わらないと願ってきたのだが……



 文章に瑞々しさを感じた。

 どこの誰かすら分からずに、静かに話は進んでいく。

 だが、語り部が抱く心情が、語り口や動作からはっきりと伝わってくる。

 もちろん、語り部の彼とは会ったこともないが、性格が何となく分かる。きっと奇術には向いていないだろう。
 
 彼と一緒に、奇術の終わりを呆然と眺めていた。