融合の異能のせいで大変なことになってるっぽいんだが
音(をと)
第1話
特急討伐任務:龍神
龍神とは空を支配する龍の神である。
そんな神を殺す。それがこの任務の内容である。
不可だ。
上から命令されたとき3級陰陽師である廻部ユウはそう思った。
彼の能力は融合。
触れた相手と融合し、能力を模倣できる異能である。
だが、10秒以上触れないといけないというそのデメリットになかなか成果を出せずにいた。
そして3級から結局昇級しないまま彼は目の前の龍神と相対していた。
今回の作戦に参加した…もとい参加させられたのは3級陰陽師がユウを含め7人、2級陰陽師が6名である。
そう、ユウたちは捨て駒に過ぎないのだ。
龍神を倒すことなど上は想定しておらず、ある程度を殺させ龍神を満足させるようにしているのだ。
屑が。
ユウは心の中で悪態をつく。
天候は雷雨だ。
先程まで快晴だったのにもかかわらずこの天気の変わりようは間違いなく龍神の仕業であった。
先程落とされた水色の雷に彼以外の陰陽師はみんな打たれてしまった。
「やるしか…ないな」
ユウはあきらめていなかった。
龍神は完全に油断している。
ユウの攻撃の一つである陰陽術は真正面からあたったのにもかかわらず弾かれた。
10秒。
ユウは融合を使うチャンスを狙う。
龍神はこちらをじっと見ている。
ほら攻撃してみろよ
そういっているような気がした。
それにこたえるようにユウが飛び出す。
龍神の鱗に触れつつ右手に陰陽術をこめたナイフを持ち数回鱗に攻撃する。
ガィィンガィィン
弾かれる、がこれでいい。
「10秒!ハッ!馬鹿が!」
融合。
それとほぼ同時に龍神がしびれを切らしたようにユウに雷を落とした。
が、
「奪ったぜ!雷撃無効!」
無傷。
彼は再び鱗を触り続ける。
龍神はそれに気づき体を動かし触れられないようにする。
「おせえよ、馬鹿が」
陰陽術:
ユウに通ったところから鎖が生え、龍神を捕縛する。
3級の陰陽術、通用するのは1秒にも満たない。
あざ笑うように龍神がその鎖を吹き飛ばした。
「一瞬でいいんだよ。てめえの背中に乗れるなら」
龍神の目が大きく見開かれる。
そして、再び10秒。
融合
「あ゛あ゛~?どうしたぁ~?楽しくドラゴンライディングと行こうじゃねえか!!」
沸き立つ高揚感を必死に抑え彼は再び鱗に手を触れる。
バトルハイとでもいうのだろうか。
彼は今戦闘に対しものすごく愉悦を感じていた。
龍神は暴れるが自身に引っ付けた鎖で体は固定されており触れるのを続けられる。
融合、融合、融合、融合
そして、ついに彼が振り落とされそうになった。
ブチン
鎖がちぎれたのだ。
龍神は体を大きくくねらせる。
堕ちる、そう理解した。
「クソ!このチャンス、絶対のがすか!」
最後の一回。
彼は発動させた。
「ゆう――ごぉうっ!!!!!!」
龍神の絶叫。
あたりには大量の雷が落ちている。
(あれ、なんだか、ねむ――)
異能の連続使用により、ユウは意識を失った。
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「ハッ!」
目が覚める。
3級といえど戦闘経験を積んでいる人間であるユウは即座に辺りを見回した。
龍神がいない。
「逃げ切った…?」
ユウは融合の能力で龍神の力を模倣していただけだ。
龍神を倒せたなどとそんなたいそうなことはあるわけない。
「とりあえず体は無事――」
体の確認をしていたユウの動きが止まる。
彼の手の甲に龍の鱗が生えているのだ。
「は?なんで?」
融合の異能は模倣できる時間に制限がある。
彼の知る限り最大でも1分も持たなかったはずだ。
気絶時間も加味すると確実に一分は経過していた。
彼は体を再び確認する。
「いやいやいや!」
臀部には鱗をまとったトカゲのような大きなしっぽが、頭を触ってみると小枝のように分かれた2本の角が生えている。
「もしかして俺…完全に龍神と融合しちゃった?」
完全な融合。
おそらく最後の気絶間際の融合でリミッターが外れたんだろう。
完全な融合の事例は過去に5回ある。
そのどれもが妖怪と融合し、妖怪に取り込まれ相手を強化してしまったと聞いた。
そのため俺も父親から完全な融合はしないようにと言われていたのだが…
「こんな事態聞いてないんだけど…」
試しに尻尾を動かしてみる。
問題なく動く。
というかまるで羽じゃないかと思うほど軽い。
続いて陰陽術、そして妖術を使用してみる。
「あ、飛べた」
あれ、これもしかして…
ドガシャァン
俺がイメージした青い雷が目の前の大木に直撃し、倒壊した。
「あ、これヤバい」
どうしようかこれ。
融合の異能のせいで大変なことになってるっぽいんだが 音(をと) @woto
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