第16話 現実的な恋愛
「はぁ……」
バチクソイケメンなくるみんが転校してきて、早一週間が経過した。
転校してきたときは嬉しかったけど、それからというもの地獄のような一週間だった。休み時間になると必ず話しかけに来るくるみんは、隣の席の白雪さんとピリピリした空気になるし、毎度まいどお昼休憩には、なぜか空気が最悪になる。
「たった一週間でこんなに疲れるとは……」
そして今日。
今日はくるみんや白雪さん達を振り切って、図書室に来ていた。
この図書室は普段から人が来ない。来ないと言うかいつも誰もいない。そのおかげで、こうして身を潜めることが出来るのだが。
「お疲れ様です」
グデ〜と机に倒れていると、隣からめっちゃ小さな声が聞こえてきた。
いつも誰もいない図書室だけど、今日は人がいる。
僕の隣で静かに本を読んでいるのは、クラスメイトの
教室では隅っこで一人で本を読んでいて、丸眼鏡に黒い髪が特徴のおとなしい子。
言っちゃ悪いが、あの三大美女とは反対で、あまり目立たない存在だ。
「何か……あったんですか?」
「……わかっちゃう?」
「あっ、そ……その、ため息を……ついていたので……」
あまり目立たないけど、黒世さんは結構可愛い。なんか小動物感があって守護リたくなる。
「まぁ……いろいろと……あの転校生が主な原因だけど」
「たしか……神楽さんのお友達でしたっけ……」
「そうなんだよ……あいつが余計なことばっかやってて」
思い出すだけで数十個と出てくる。あいつの余計な行動が引き起こした問題が。
「……黒世さんはなに読んでるの?」
「えっ、えと……」
体を起して、黒世さんの読んでいる小説の表紙を見る。
小説の表紙は、よくありそうな、なろう系ライトノベルだった。まぁそうだよね。
「へぇ〜こういうの読むんだ」
「神楽さんは……小説読むんですか……?」
「読むよ。こういうの好きだし」
僕がそう言うと、共感してくれる仲間が見つかって嬉しいのか、黒世さんは頬を緩ませた。やっぱり小動物感があるなぁ。リスかハムスター?
「黒世さんいつもこれ読んでるよね。好きなの?」
「え、えと……なんで知ってるんですか……?」
「いやだってクラスメイトだし」
こう見えても僕は人の名前を覚えるのは得意だ。
それによく周りに助けを求めてるから教室内で起こっていることには詳しい。
「こっ、こういうの好きなんですけど……クラスに読んでる人がいなくて……」
わかる〜。僕も昔読んでたもん。そのときはくるみんという共感者がいたけど。
でもくるみんはこういうのあまり読まない部類の人間だったからなぁ。
「いるじゃんクラスに」
「……えっ?」
「僕、こういうの好きだよ」
なんでそんな信じられない物を見たみたいな目をするの。
「意外だった?」
「意外……というか……神楽さんは私とは正反対の人間なので……」
違うよ黒世さん。僕もそっち側の人間なんだよ。
「何言ってるのw黒世さん面白いこと言うね」
「え……えへへへ」
ほんのり顔を赤くして笑みをこぼす黒世さん。照れてる姿がもう可愛い。
言っておくが、僕はラブコメ的存在以外には優しいし、素直に可愛いと言えるのだ。
「そうだ黒世さん、連絡先交換しよ」
「えっ、えぇ!?」
今までで一番大きな声を出したね黒世さん。
「ほら、僕もライトノベル読むし(ラブコメディ以外)、感想とか言い合いたいなぁと」
「なっ……なるほど……じゃっ、じゃあ……どうぞ」
ススス……と画面にQRコードが映し出されているスマホを見せてくる。どうして連絡先交換ぐらいで顔を赤くするのだろうか。
「はい。連絡先交換完了っと」
「えへへへ……初めての友達……」
僕もくるみんと連絡先交換したときは、初めての友達追加で嬉しかったな。もうその感情は消え去ったけども。
「じゃっ僕はそろそろ行くね。黒世さんまたね」
「はい……またです」
そろそろあいつらもどっか行ってるだろうし、このまま黒世さんの読書の時間を邪魔するわけにもいかないしね。
今思ったが、黒世さんはラブコメ的存在じゃないよね。ということは、これはラブコメ展開ではないということ。
そうか。これが僕の願った、現実的な恋愛の第一歩か。
ラブコメと現実は違うのだよ ほのお @kaorukurumi
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