輪入道の轍(わにゅうどうのわだち)
女神なウサギ
第1話
そこはとある異世界に存在する街だった。
かつて平和だったこの街は今、壊滅の危機を迎えていた。
「こちらB班、目標止まりません」
「諦めるな必ずチャンスは来る」
この街では輪入道とメデューサ、防衛支部との戦いが行われていた。きっかけはとある女子高校生が輪入道の封印を解いたことだった。その子はひどいイジメられっ子だったらしく、いつか皆に復讐したいと思いながら生活をしていた。そんなある日、ネットで輪入道に関する記事を見つけた。なんでも、封印を解いた者に強い復讐心があれば復讐に力を貸してくれるらしい。
少女は半身半疑だったが、封印場所を特定して輪入道の封印を解くことに成功した。そうしてメデューサへと姿を変えて輪入道に乗り、復讐のために人々を殺害し始めたのであった。
「隊長、駄目です。精霊石を入れた弾でも効果がありません。」
精霊石とは、この世界で妖怪やモノノケを封印する力を持つ特殊な石。しかし、あまりに強い恨みを持つ少女には効果が無かった。
「通常の弾はどうだ。被害は甚大だ。この際、封印ではなく排除もやむを得ん」
「続けて撃て」
「駄目です。全てすり抜けてしまいます」
「なんということだ」
輪入道の力は恐ろしく、街は悲惨な状態だった。
輪入道がゴロゴロと音を立てて人の傍を通るとそれだけで魂を抜かれてしまい、人々がバタバタと倒れて、根絶やしにされるのは時間の問題だった。さらに恐ろしい事にメデューサの力が拍車をかける。
メデューサが許さない、許さないとうわ言のように声を発しながら人々を見ると、目があった人は石に変えられてしまった。そればかりか輪入道が石に変えられた人の傍を通ると変化した人はガラガラと音を立てて石像のごとく砕け散ってしまった。
「上空部隊に連絡を。専門家に策を仰ごう」
「了解です」
上空では妖怪の専門家を乗せたヘリが飛行しており、精霊石をばら撒いていた。
「博士、精霊石が効果ありません」
「うーむ、非常事態だな。妖怪に対抗するには精霊石しかないと言うのに」
「非常事態と言えば輪入道の能力や輪入道がメデューサと組んでいることが非常事態です。私は特殊対策部隊の人間なので輪入道についての文献を読みましたが、通るだけで魂を抜かれるなんて書かれていませんよ。ましてや西洋で活動するメデューサと組んでいるなんて、どうなっているのでしょう」
「妖怪も時代と共に姿や能力を変える。現代の輪入道はこのようなものなのでしょう」
その時、ヘリのパイロットとメデューサの目が合ってしまった。
「しまった」
「まずい、ヘリが墜落する」
「ここまでか」
街の住人全てを根絶やしにすると、メデューサは元の少女の姿に戻って息絶えた。そして一度解放された輪入道は眠りにつくこと無く、新たな強い復讐心を持つ人間を乗せるためにゴロゴロと音を立てながら無人となった街を巡回しているらしい。
輪入道の轍(わにゅうどうのわだち) 女神なウサギ @Fuwakuma
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