第3話-初めてのダンジョン

 スライムのドロップ素材を提出するため、疲れた足をふらつかせて協会へと向かう。

「はい、スライムの核10体分ちょうど確認しました〜。これにて任務は完了となります!初めての戦闘任務、お疲れ様でした〜。お疲れのようですし、今日は早めに帰って体を休めてあげてくださいね〜。」

「はい、ありがとうございます。」

疲れた声で返事をし、ゆっくりと宿へ向かう。

 気のせいだろうが、宿の戸は重く、ベッドまでの道も長く感じる。

もういっそのことここで寝転んで寝てしまおうかと考えてしまうほどに。

そうしてフラフラとしていると、背後から男性の声がした。

「大丈夫かい?肩貸そうか?」

「あ、あぁ、いえ、大丈夫です。」

「そう?」

今にも眠りに落ちてしまいそうな意識でなるべく丁寧に断り、そのまま階段を上がろうとするが、足が鉛のように重く、苦戦していると、背後から先ほどの声が聞こえてきた。

「やっぱり肩貸したほうが良さそうだね。」

と言い、むりやり背負われ、されるがままに自室へと運ばれていった。

少し恥ずかしい気持ちはあったものの、思ったより人の背中は気持ちが良く、階段を上り切った頃にはもう寝てしまっていた。

 目が覚めた頃にはもう昼を過ぎていて、街はいつも通り賑わっていた。

「もうこんな時間か、、、」

と呟きながら昨日の終わり頃のことを思い出す。

部屋まで運んでくれた男性にお礼をしたかったが、顔も名前も知らない状態で探せるわけもなく、ひとまず初とはいえ戦闘任務の結果があれではこの先が思いやられる。

何事にも慣れだと思い、協会へと向かう。

 「あ〜、昨日はお疲れ様でした。ぐっすり眠れましたか?なかなか疲れているご様子でしたが。」

と協会の女性に聞かれ、答えようとしたが、間髪入れずに隣から声がした。

「あぁ、この子なら快眠だったよ。」

いきなり声をかけられ、驚いたが、この声にはどうも聞き覚えがある。

昨日の男性かと思い、声のする方向へと顔を向ける。

そこにはすらっとした余裕そうな男性が立っていた。

「あ、もしかして部屋まで運んでくださった方ですか?あの時はありがとうございました!」

「その様子じゃ元気が戻ったみたいだね。良かったよ。」

「あら?ジェイさんじゃないですか〜、最近はなかなか顔を出さないから心配してましたよ〜。元気にしていましたか?」

すると余裕そうな声で答えた。

「あぁ、少しダンジョンの攻略に手間取ってね、どれくらい掛かっていたんだい?」

「そうですねぇ、ざっと1週間ほどですかね〜。」

「もうそんなに経っていたのか、、、結構かかったな。」

「ダンジョンに行っていたんですね〜、、、」

「あ、、、」

と男は気まずそうに後退りした。

「また協会を通さずにダンジョンに行ったのですか?ジェイさん〜?」

「あ、あぁ、、そ、、、そうだ、この子、まだ初めて任務をしたばかりなんだって?僕が見てあげよう。これなら軽いダンジョンくらいならいけるだろう?」

「はぁ、反省しているのかしてないのか、、、まあ、そうですね、ちゃんと見るって約束するなら大丈夫ですよ。」

「わかってるよ、乱暴な真似はしないさ。」

「じゃあわかりました、あなたもそれでいいですか?一応念は押してますが、これでも彼、一応Sランク冒険者なので、チャンスではあります。ただ、少し適当なところがあるので、しっかり警戒などはしてくださいね。」

「わ、わかりました。」

Sランクであることに驚いたが、成り行きではあるものの、小規模なダンジョンへの挑戦を許可された。

「じゃあ行こうか、何か持って行くものはないかい?ないならこのまま直接行こうと思うけど。」

「あ、食料などは、、、」

「大丈夫だよ、1日で終わるから。」

「え、、?ダンジョンって基本は長く潜って少しずつ進めて行くのが普通ですよね?」

「まあ、それが普通ではあるけど、、、そこまで大きなダンジョンじゃないし僕がいるから大丈夫だよ。1日で終わる。」

「は、はぁ、、、」

これがSランク冒険者か、と思いつつ結局直接行くことにした。

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とある冒険者のお話 緑茶 @Ryokucha_1103

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