第一〇話(最終話)『ドキドキ靴飛ばし』
——戦いの後。
舞央爽馬が駆る白馬の
そして今、なぜか……
舞央仁が、うちの庭にいる。
しかもさっきからずっとわたしの
「東雲さん。君には、二十四時を過ぎると、国防のために
さっきから、同じ質問を飽きずに何度も何度も浴びせてくる。そろそろウザい。
「だから言ってるでしょう? 次の
いっそテメーが継承するか? まぁ貧弱男には無理だろうがよぉ!! あ、つい。
「わかったぞ! なら、あれをしよう! せっかく靴があるんだし!」
「あれ、って何?」
「『明日天気になあれ』だよ。子供の時に、よくやらなかったかい? 靴をコインに見立てて飛ばして、明日の天気を占うんだ。表なら晴れ、裏なら雨ってやつ」
「まぁ、それは知ってるけど、わたしの
「表なら、東雲さん、君の好きにするといいさ。
「何、続きがあるの?」
ちょっと、嫌な予感がする。
「もちろん。そして、僕と一緒になる!」
ちょっ、おまっ……
「はあっ!? どういう意味よ、それ!!」
「問答無用、いくぞっ! あーした天気になーれ!!」
靴が宙を舞う。
投げられたのは、左足の、
表ならそのまま
裏なら、裏なら…………
靴が、地を跳ねる。
結果は……
横倒し。
裏じゃ、なかった。
「横倒し……そうか、そのパターンもあるのを忘れてたよ。どうする? 右の靴で、もう一回やる?」
もう一回。ひょっとすると、裏が出て、一緒になれるかもしれない。でももう一回やって、表が出たら、嫌。それなら……
わたしは、両手をグーにして、舞央仁の目の前に突き出す。
「ねぇ。右と左、どっちがいい?」
そう尋ねるのだが、もちろん、中に何か入っているわけではない。
さぁ、どっち?
「なになに? とにかく選べって感じ? うーん、じゃあ、左かな」
左、か。そんな気がしてた。
「あなたの足のサイズ、二十六センチだったわよね?」
「そうだけど……どういうことかな?」
「これ、あげるわ」
わたしは、左の靴、
「ええっ? ひょっとしてこれを……僕が、履くのかい??」
「そうよ。これから東雲ゆららと舞央仁は、二人三脚で国防を担うのよ……」
やっと素直になれた。
わたしは彼に、そっと身を寄せる。
彼の腕が、わたしを、背中から、そっと包む。
今まで、冷たくしてごめんなさい。
でも、全部、あなたへの気持ちの裏返しだった。
このドキドキは、クォーツ時計のように、一度動き出したら……止まらないのよ。
〈完〉
震天冷嵐の靴〜シンデレラ・シューズ〜 加賀倉 創作【書く精】 @sousakukagakura
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