でけぇタワマンが建った

白川津 中々

◾️

タワーマンションが建った。


これも時代の流れ。増えた海外の富裕層や何かしらのビジネスで成り上がった人間を受け入れるための施設が必要だった。

しかし下々に生きる人間にとってそのあまりに巨大な建造物は侵略と破壊の象徴として映った。昔ながらの雰囲気漂う下町に現れた現代建築デザインの暴力性は住う人々の恐怖と憤怒を掻き立て地域全体不穏な様相。敷地内にあるモールの存在も地元商店の客足に少なくない影響を与えている。令和の資本主義的奔流に抗えない住民は、日当たりの悪くなった居間で冷たい飯を運ぶ。



「焼き討ちするか」



深夜の居酒屋でそんな笑話が聞こえるも、皆目は座っていた。「なにかあれば……」と、冗談とも本気とも取れない一言を落とし、甲類焼酎を煽る夜。なにかとは何か、それがいつ来るとも知れないが、いつか必ず来るような予見があった。



タワーマンションにはポツポツと明かりが灯っていく。人々の営みが変わっていく。これまでとこれから。時の流れの中人々は常に、不安定であった。

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でけぇタワマンが建った 白川津 中々 @taka1212384

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