狂想的仕事人

ジャンルは縛らず、私が書きたいように

第1話 平和的

僕は小さな村で生まれました。

父や母、2個上の姉はきっと僕を歓迎してくれたのでしょう。僕はたくさんの愛情を受けて育ちました。

父は僕に薪割りを教えてくれました。生まれて初めて斧を持った時、僕は言葉に表せられない程の感動が込み上げてきました。

明るい時間、村は活気に満ちていました。僕より小さな子ども達が追いかけっこ、僕より大きな大人たちが笑い合い、誰もが楽しそうに明日を見ています。

ある日のこと。

母は僕を呼び、こんな話をしました。

曰く、この村は昔、大々的な飢饉に見舞われ、多くの村人達が命を落としました。それは山の祟りであり、収めるためには村から「いけにえ」を送り出すことでした。

どうやら僕にはその役目があり、儀式に参加しなければならないようでした。

僕はいつものように薪割りに行きます。毎日毎日楽しめた薪割りも、今日は特に沈んでしまいました。僕の頭には何かがずっと渦巻いていて、僕をさらに深く沈めようとしています。

おいしそうなご飯も味がしませんでした。

友達とのかくれんぼ中でも、僕は考えています。

姉が泣いています。

なぜなら、僕が遠くに行ってしまうからと。

友達が泣いています。

なぜなら、もう一緒に遊べなくなってしまうからと。

僕は泣きませんでした。

なぜなら、泣かなかったからです。


日が昇り初め、小鳥たちの鳴き声は鮮明に聞こえる。日は徐々に沈み、反対側から月が昇る。虫たちの歓声が静かな夜に響く。

そして儀式の日。

僕の頭の中の渦巻きは無くなりました。それはおそらく祟りだったのでしょう。

僕は大好きな斧を持って外に出る。

そして今日も薪割りをします。


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