第8詩 【老人の手】


手が ひとつのところに 留まって


人に老いを知らせるように


老けてゆくのか! こんなにも、でも私は


老い従うわけには ゆかぬのにーー



人知れず 誰が 気づいたろうか?


私の手が 誇らしげに 嘘ぶいているのを


いかにも粗朶(そだ)で いかにも歳月を投げ売って


懸命に 時おり悪ぶるように また朗らかに



見知らぬ人の いたわるような眼差しに 溺れゆくのをーー


ついに倒れゆく腐木(くちき)のように そんな双眸(そうぼう)で


私を見つめる ありがたいような あなた方


けれども私は 押し黙って 新しい沃野の蒼茫に 立ち挑もうとする時にーー



清明な風に燃え 藍空の豊かな燻(くゆ)りのうちに


お前が立っていた あの地



  〈もう一度 思い出すがいい〉



その仮初(かりそめ)の姿を噛みしめ 涯(はて)までお前を誘うものは?



やすらかな苑を 欲しないこと


それほど無垢になれるというのか?


滄浪(そうろう)を伝い霜露の上を お前ひとり


裸足で 歩いてゆけ! 嵐の中をーー



渦雷は犇(ひし)めくゲバルトとなり


エエロゾルは猛威を奮う


弾ける幾千のRain drop おうRain drop


さあ 真帆を立てろ! かの蒼穹へ


カンバスいっぱいの 船を描け


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩集 ゆるまる時を映して 夢ノ命 @yumenoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る